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小口現金は、企業が日常業務で発生する少額の支払いを円滑かつ効率的に処理するために設ける現金管理方法です。
本記事では、小口現金の基本的な仕組みから、現金・仮払金との会計上の違い、正確な出納帳の書き方、実務で頻出する代表的な仕訳例までを体系的に解説します。
「小口現金」とは、日常業務で発生する少額の支払いに対応するため、会社が事前に手元へ用意しておく現金のことを指します。
たとえば、郵送費や切手代、文房具などの少額な支払いを迅速に行うために使用されます。
現金と小口現金の違いは、管理目的や扱う金額、会計上の位置づけにあります。
現金が会社全体の資産を管理することを目的としているのに対し、小口現金は日常業務における少額支払いの効率化を目的としています。
扱う金額も小口現金の方が小規模で、通常は1万円から10万円程度に設定されるのが一般的です。
なお、会計上はいずれも同じ「流動資産」に分類され、貸借対照表では『現金及び預金』という科目名で計上されます。
小口現金は会社があらかじめ準備しておく現金であり、経費支出時に直接使用します。
一方、仮払金は従業員に立替を認めるための前渡金です。
たとえば、営業社員が出張前に交通費を受け取るのは仮払金で事務所で切手を購入する際に使うのは小口現金です。
小口現金と仮払金は類似した目的で利用されますが、会計処理は根本的に異なるため、出納帳上でも明確に区別する必要があります。
小口現金は、日常業務で発生する少額の支払いをスムーズに処理するために設けられた仕組みです。
振込や経費精算を経ずにその場で現金払いができるため、事務の効率化や現場対応の迅速化に役立ちます。
経理処理や振込申請を経ず、現場で即支払いを行えるのが小口現金の大きな利点です。
少額の支出をその都度経費精算システムで処理すると手間がかかるため、スピード重視の職場では今でも重宝されています。
キャッシュレス化が進む近年でも、現金精算が必要なケース(切手・神社祈願料・役所手数料など)は依然として残っています。
多くの企業では5万円〜10万円程度が上限の目安ですが、業務内容によっては30万円まで設定している企業もあります。
上限は業務内容により異なり、外出や事務用品購入が多い部門ほど金額をやや多めに設定する傾向があります。
社会福祉法人や自治体でも同様に上限を設けており、たとえば『拠点区分ごとに10万円以内』や『サービス区分ごとに3万円〜10万円』といった運用ルールを定めている例があります。
代表的な費用として、下記のようなものがあります。
小口現金の管理方法では、現金の出入りを正確に記録し、残高を常に一致させることが重要です。
取扱者の明確化や承認フローの設定、出納帳や領収書の適切な管理を徹底することで、不正や金額差異を防止できます。
運用にあたっては、以下のルール設定が重要です。
定額資金前渡法(インプレストシステム)では、毎度一定額(たとえば5万円)を維持する方式を採用します。
具体的には、残高が3万円になった場合、使った2万円を補充して再び5万円に戻すという流れです。
金額が合わない
出金伝票の未記録や領収書の紛失が主な原因です。対策として、支払いの都度、遅滞なく記帳することを徹底します。
釣銭問題
釣銭の計算ミスなどで差額が発生した場合は、その場ですぐに担当者に報告し、速やかに処理を行います。
月末・決算時の対応
月末や決算時には、帳簿残高と実際の現金残高(実査)を照合し、不明金があれば速やかに原因を調査します。
小口現金出納帳は、小口現金の出入りをすべて記録するための帳簿で、出金日、支払先、金額、残高などを一覧で管理します。
簿記3級でも基本帳簿の一つとして扱われており、日付・科目・摘要・出金・入金・残高といった項目を設けて記入するのが一般的です。
これにより、小口現金の動きを明確にし、支出の適正管理や残高確認をスムーズに行うことができます。
一方、現金出納帳は会社全体の現金を記録・管理する帳簿であり、小口現金出納帳はその一部にあたります。
現金出納帳が企業のすべての現金取引を対象とするのに対し、小口現金出納帳は少額支払い専用の範囲に限定されている点が大きな違いです。
そのため、会社によっては経理部門が現金出納帳を、現場担当者が小口現金出納帳をそれぞれ管理する分担体制をとる場合もあります。
なお、金種表は実際に手元にある現金の内訳を確認する補助資料であり、出納帳とは目的が異なります。
帳簿管理と金種確認の両方を合わせて運用することで、小口現金の適正な管理が可能になります。
小口現金の仕訳は、普通預金からの振替や経費支払い、補充、過不足処理などケースごとに異なります。
用途別の仕訳を理解することで、正確な経理処理が行えます。
普通預金から小口現金へ補充した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 小口現金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
文房具を現金購入した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 1,000円 | 小口現金 | 1,000円 |
交通費・郵送費・雑費なども同様に処理します。
経費精算システムで個人立替を処理するケースとは異なり、現金支出が直接帳簿に反映されます。
補充前の残高3万円に対し、2万円を補充して5万円に戻す場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費ほか合計 | 20,000円 | 普通預金 | 20,000円 |
定額資金前渡法では、使った分だけを補充し、帳簿上の小口現金残高は常に一定に保ちます。
残高が500円不足して原因不明の場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金過不足 | 500円 | 小口現金 | 500円 |
後日原因が判明(消耗品費だった場合)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 500円 | 現金過不足 | 500円 |
仮払金では、
仮払金を普通預金から支出した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仮払金 | ― | 普通預金 | ― |
として従業員に渡し、清算時に費目へ振り替えます。
小口現金は、支払時に直ちに費用計上する点が異なります。
現金として企業が保有するため、貸借対照表では流動資産の区分に入ります。
一般的に5万〜10万円が目安ですが、企業規模や業務内容により変わります。
交通費、郵便費、消耗品費、雑費、来客用の茶菓代などです。
不足時は「現金過不足」で一時処理し、原因判明後に費用へ振り替えます。
小口現金は、日常業務で発生する少額支払いをスムーズに処理するための便利な仕組みです。
帳簿管理(出納帳)と補充ルールを徹底すれば、不明金や記帳漏れを防ぐことができます。
キャッシュレス化が進んでも、現金精算が残る場面を考慮し、適切な金額設定と管理体制を整えておきましょう。
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