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年次有給休暇の取得義務化に伴い、多くの企業で「有給奨励日」の導入が進んでいます。
しかし、制度の法的位置づけや強制にならないための注意点、年休がない従業員への対応など、担当者が迷いやすいポイントも多くあります。
本記事では、有給奨励日の基本から合法・違法の境界線、導入時の注意点、派遣社員や新入社員への取り扱いまでを整理し、人事が押さえるべき実務対応を解説します。
有給奨励日とは、企業が従業員に対して年次有給休暇の取得を積極的に促すために設定する日のことです。
法的な義務や強制力があるものではなく、あくまでも「この日は休暇を取りやすいように配慮しています」という企業側からのメッセージとして機能します。
2019年の働き方改革関連法により、企業には年5日の年休取得を確実に実現させる義務が課されました。
こうした背景から、従業員が有給を計画的に取りやすいよう、社内の運用ルールとして有給奨励日を設ける企業が増えています。
有給奨励日は、企業が休暇取得日を指定する「計画年休」や「時季指定」とは異なり、取得の可否を判断するのは従業員本人です。
そのため、特定日に人が偏りすぎないように調整したい企業や、「まずは休みやすい空気をつくりたい」と考える企業にとって、有効な仕組みとなります。
設定される日は、たとえば以下のように業務への影響が最小限に抑えられる時期が選ばれる傾向にあります。
・祝日と祝日の間にある平日(いわゆる“ブリッジデー”)
・年末年始や大型連休に近い営業日
・業務量にゆとりが出やすいタイミング
こうした日に取得を促すことで、従業員は長めの休暇を取りやすくなり、企業側も業務調整を事前に行いやすいというメリットがあります。
また、形だけの制度にしないためには、管理職が率先して休暇を取得することや、チーム内で業務をカバーし合う運用を整えることが重要です。
結果として、休暇取得率の向上、職場の満足度向上、繁忙期の負荷分散など、組織全体にプラスの効果が期待できます。
有給奨励日は、企業が従業員に対して「この日は休みが取りやすいようにしています」と働きかけるための仕組みであり、制度として導入すること自体は合法です。
労働基準法が求めているのは「労働者が自分の意思で年休を取得できること」であり、企業が取得を促す行為はこの趣旨に反しません。
ポイントは、従業員が年休を取るかどうかの判断が完全に本人の自由である点です。企業側の役割は「取得しやすい雰囲気をつくること」であり、「取得させること」ではありません。この任意性が保たれている限り、有給奨励日は法的に問題なく運用できます。
有給奨励日は「休暇の取得を促す日」であり、制度自体は適法です。しかし、運用次第では労働基準法に抵触するおそれがあります。代表的な注意点は次のとおりです。
年休の取得日は労働者が決めるものであり、企業が一方的に「この日は必ず有給を取るように」と指示することは法律に反します。
ただし、労使協定にもとづく「計画年休制度」を適切に使う場合は例外です。
「会社を閉めるので全員有給扱いにする」など、企業都合で休業日を設定し年休を充てさせる運用は違法となる可能性があります。
休業が必要な場合は、有給ではなく特別休暇や休業手当で対応するのが適切です。
有給奨励日で休ませたにもかかわらず、後日休日出勤を求めるなど、結果的に負担増となる運用は「自由取得」を阻害し、違法性が高まります。
「有給奨励日に休んだので、別の日の有給は認めない」といった運用は、労働基準法第39条に反しており違法です。
有給奨励日はあくまで“推奨”であり、取得日の選択権は従業員にあります。
有給奨励日を導入する際には、入社直後の従業員やパート・アルバイトなど、年休がまだ付与されていない従業員への対応が欠かせません。
休める人と休めない人が分かれると不公平感が生まれるため、企業側は適切な補完策を検討する必要があります。
主な対応方法は次の3つです。
年休のない従業員にも休んでもらいたい場合、企業独自の「特別休暇(有給)」を与える方法があります。法定義務ではありませんが、導入すれば全員が同条件で休暇を取得でき、公平性の確保や従業員満足度の向上に役立ちます。
一方、付与日数に応じたコストが発生するため、制度化する際は財務面の検討も必要です。
有給奨励日を実質的な休業日として扱う場合は、年休がない従業員に休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う対応も可能です。会社都合で休ませる場合の法的要件を満たす方法で、休暇取得を促しやすくなります。
ただし、こちらも企業側の負担が一定程度発生する点に留意が必要です。
有給奨励日は休暇取得を促すための有効な仕組みですが、運用を誤ると法令違反につながる可能性があります。
企業が制度を適切に運用するために押さえるべき主なポイントは次の3つです。
有給奨励日を確実に運用したい場合は、「計画年休」として取り扱う方法があります。 計画年休を導入するには、事前の労使協定締結が必須です。
協定があれば、企業は年5日を超える部分について年休取得日を指定できますが、一方的な決定は認められません。
制度の透明性を確保するためにも、対象者や運用ルールを協定で明確にすることが重要です。
有給奨励日を設ける際に、既存の休日を減らして代替とする運用は、労働条件の不利益変更とみなされる恐れがあります。
企業は現状の休日体系を維持しつつ、有給奨励日を追加で設定することが原則です。就業規則・労使協定にもとづき、従業員に不利益が生じない形で制度を設計する必要があります。
有給奨励日はあくまで“推奨”であり、取得を義務付けることはできません。
従業員の状況に応じて取得しない選択も可能であることを、社内ルールに明示しておくと誤解を防げます。
また、制度が形骸化しないよう、管理職や経営層が積極的に活用し、職場全体で休みやすい雰囲気を作ることも大切です。
以下に有給奨励日に関するよくある質問を紹介します。
有給奨励日が土曜日に設定された場合、その日が「所定労働日」に該当するかどうかで取得可否が決まります。 判断のポイントは以下のとおりです。
・土曜日が所定労働日の企業:有給休暇の取得が可能
・完全週休二日制などで土曜日が休日扱いの場合:有給の対象外
企業は、就業規則や勤務形態に基づき、どの日を有給奨励日の対象とするか事前に明確化しておくと、従業員が迷わず利用できます。
新入社員が有給奨励日を利用できるかは、有給休暇の付与ルールによって異なります。
・企業が「入社時から有給を付与する制度(初年度付与)」を採用している場合
・有給奨励日を「特別休暇(有給)」として扱う場合
労働基準法では、有給休暇は 6ヶ月継続勤務・8割以上出勤 で発生しますが、企業の裁量で前倒し付与も可能です。
企業側は、新入社員を含めた年休や特別休暇の扱いを就業規則に明示し、誰が取得できるのかを分かりやすく示すことが求められます。
派遣社員の年休管理は派遣元(派遣会社)が行うため、派遣先企業が有給奨励日を強制することはできません。
基本的なルール
・有給休暇の付与・管理は派遣元企業が担当
・有給奨励日を取得するかは、派遣元の判断と本人の意思による
・派遣先企業が有給奨励日取得を義務付けることは不可
派遣社員が安心して休暇を取得できるよう、派遣元・派遣先が連携し、あらかじめ運用方針を共有しておくことが重要です。
有給奨励日は、年次有給休暇の取得を後押しし、働きやすい職場づくりにもつながる有効な施策です。
一方で、強制取得や休日の代替化など、不適切な運用は労働基準法に抵触する可能性があります。
制度の任意性を明確にし、派遣社員や新入社員、年休未付与者への配慮も欠かせません。
また、計画年休との違いを理解し、労使協定や就業規則への反映を適切に行うことで、公平かつ運用しやすい仕組みになります。
自社の働き方や業務特性に合わせて制度・ルールを整え、従業員が安心して休暇を取得できる環境づくりを進めましょう。
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