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期首商品棚卸高は、売上原価や決算書の数値に直結する重要な項目です。しかし、期首と期末の関係、振替仕訳の流れ、実地棚卸との差異処理など、実務では正確な処理に迷うケースも少なくありません。
この記事では、経理担当者が確実に理解すべき、期首商品棚卸高の定義、売上原価の計算における役割、三分法に基づく仕訳例、さらには税法上の注意点までを網羅的に解説します。
期首商品棚卸高とは、会計期間の始まり(期首)に保有している商品の在庫金額を指します。一般的には、前期末に計上した商品在庫(期末商品棚卸高)がそのまま翌期に繰り越され、当期の期首商品棚卸高となります。
会計では、前期期末棚卸高と当期期首棚卸高は必ず同じ金額でなければなりません。 これは企業会計原則における「継続性の原則」に基づき、毎期同じ会計処理を適用することで、期間比較可能な財務情報を提供するための基本ルールです。
たとえば、前期の決算書に「期末商品棚卸高:300万円」とあれば、当期の期首商品棚卸高も自動的に300万円となります。
もし金額が一致しない場合、棚卸ミスや振替仕訳の漏れだけでなく、在庫の操作による利益の増減を疑われる可能性もあります。棚卸高は利益計算に直結するため、税務調査や監査でも重点的に確認される項目です。
期首商品棚卸高と期末商品棚卸高は、どちらも「在庫の金額」を示す数値ですが、売上原価の算定や決算書の表示方法において、それぞれ異なる役割を持っています。 この2つの関係を正しく理解することで、月次・年度決算の精度が大きく向上します。
期首商品棚卸高は、売上原価を算定するうえでの当期の「払い出し可能額の基礎スタート)」となる金額です。一方、期末商品棚卸高は、当期仕入れ分を含めた総在庫から「未販売の残存在庫」として、売上原価から差し引かれる役割を担っています。
【売上原価の基本式】
期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高 = 売上原価
この式を見てもわかる通り、
期首商品棚卸高が大きい → 売上原価が増加 → 利益が減少
期末商品棚卸高が大きい → 売上原価が減少 → 利益が増加
という関係になります。
そのため、棚卸の計上誤りがあると、売上原価・当期純利益が過大または過小に算定されるリスクがあり、税務調査でも指摘されやすいポイントです。
期首商品棚卸高・期末商品棚卸高は、決算書(財務諸表)にも明確に反映されます。
・表示されるのは 期末商品棚卸高のみ
・棚卸資産として「流動資産」に計上される
・期首棚卸高は表示されない(前期の期末棚卸高として反映済み)
つまり、B/Sにはその時点で企業が抱える在庫の価値(期末)が掲載され、期首はあくまで内部計算で利用される数値です。
売上原価の内訳として、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高の両方が利用されます。
売上原価内訳(例)
・期首商品棚卸高
・当期商品仕入高
・期末商品棚卸高(控除)
そのため、P/Lを見ると、棚卸高がどのように利益に影響を与えているかが明確にわかります。
決算時に行う実地棚卸では、帳簿上の在庫数量と、実際に数えた在庫数量が一致しないケースが少なくありません。
差異が生じた場合は、その原因を明確にし、適切に在庫数と棚卸高を修正することが重要です。差異を放置すると、売上原価や利益の計算に誤りが生じ、税務調査の指摘対象にもなり得ます。
実務では、以下のような理由で期末棚卸高が帳簿と一致しないことがあります。
入力ミス(数量・単価・計上漏れ)
仕入・出庫の記録が誤っている、入力の遅延など。
棚卸方法の相違
倉庫と店舗で計数タイミングが異なる、担当者間で計数基準が統一されていないなど。
破損・廃棄・ロスの未計上
商品の破損やロスが帳簿に反映されていない。
棚卸資産の所在不明・紛失
長期在庫が行方不明、移動履歴が記録されていない。
入荷・出荷の期ズレ
実際には入庫済なのに記帳が翌期になるなど、計上タイミングのズレ。
差異の原因は、単発ではなく複合して発生するケースも多い点に注意が必要です。
決算時の実地棚卸で帳簿在庫と実地棚卸数量(実際有高)にズレが見つかった場合、差異の内容に応じて「棚卸減耗費」または「商品評価損」を使って修正します。
以下では、それぞれの概要と仕訳の考え方をわかりやすく整理します。
継続記録法(パーペチュアル法)などで在庫数量を管理している場合でも、帳簿の数量と実棚の数量が一致しないというのは珍しくありません。
この数量差を帳簿に反映させる際に使用するのが「棚卸減耗費」です。
【棚卸減耗費の算定式】
棚卸減耗費 =(帳簿上の在庫数量 − 実地棚卸の数量)× 単価
例:
帳簿数量:50個
実棚数量:40個
単価:100円
→(50 − 40)×100円=1,000円
修正仕訳(数量が不足していた場合)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 棚卸減耗費 | 1,000円 | 商品 | 1,000円 |
在庫の減少分を費用計上し、帳簿残高を実際数量に合わせます。
※税務上の注意点
通常は売上原価として損金算入が認められますが、異常な原因による多額の発生や、差異の理由が説明できないといった場合には、税務調査において損金算入が否認されるリスクがあります。
棚卸資産は原則として取得価額(仕入れたときの値段)で計上します。
しかし、期末時点で 販売価額(正味売却価額)が帳簿価額を下回る場合には、価値の下落を反映するため「商品評価損」を用いて評価替えを行います。
▼評価損が発生する典型的なケース
・シーズン商品の売れ残り(例:季節衣料のオフシーズン化)
・流行遅れ・商品力低下
・長期保管による品質の劣化や破損
・市場価格の下落や過剰在庫 など
修正仕訳(評価額が2,000円下がった場合)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品評価損 | 2,000円 | 商品 | 2,000円 |
帳簿価額を実際の価値まで切り下げる会計処理です。
期首商品棚卸高は、前期の期末棚卸高を翌期へ引き継ぐ際に計上されます。
三分法では「繰越商品」勘定を用いて、期首と期末でセットの振替仕訳を行うことにより、売上原価を正しく算定します。
前期の決算で計上した繰越商品(=前期期末棚卸高)を取り崩し、当期の売上原価に反映させます。
期首の振替仕訳(例:三分法)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 仕入 | XXX円 | 繰越商品 | XXX円 |
ポイント
✔ 期首仕訳は、前期末で計上した繰越商品勘定を洗い替える「決算振替仕訳(逆仕訳)」として行う
✔ この振替を怠ると、売上原価が過大計上され、利益計算に重大な影響を及ぼす
✔ 金額は「前期期末棚卸高=当期期首棚卸高」となる点に注意する
実地棚卸で確定した在庫額を繰越商品として計上し、棚卸資産と売上原価へ反映します。
期末の振替仕訳(例:三分法)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 繰越商品 | XXX円 | 仕入 | XXX円 |
ポイント
✔ 実地棚卸数量 × 評価単価で金額を算定する
✔ 棚卸差異がある場合は、棚卸減耗損・商品評価損で別途処理する
✔ 翌期には、この繰越商品がそのまま「期首棚卸高」として振り替えられる
期首商品棚卸高は、前期の期末に計上した棚卸資産をそのまま繰り越したものであり、期首に新たな取引が発生したわけではありません。
したがって、通常は消費税の対象外(不課税取引) として扱われ、課税仕入や非課税仕入のいずれにも区分する必要はありません。
消費税が課税・非課税に判定されるのは「商品を仕入れた時点」であるため、期首・期末の棚卸高の計上や振替仕訳は、消費税の計算には影響しません。
棚卸高はあくまで在庫評価の会計処理であり、取引とは性質が異なります。
課税事業者となる初年度に期首で保有している棚卸資産については、特例的に 取得価額 × 110分の7.8(軽減税率対象は108分の6.24)により算定した消費税相当額を、仕入税額控除として計上できます。※簡易課税方式を選択した場合は適用されません。
参照:国税庁 No.6491
実務上、棚卸高を誤って「課税仕入」分類し、不当に仕入税額控除を過大計上してしまうミスが多く見られます。
また、棚卸資産を課税売上用から非課税売上用へ用途変更した際は、課税仕入等の税額の調整が必要となる場合があるため注意が必要です。
このように、期首・期末の棚卸高は「取引なし」として扱い、消費税の区分を付けないことが正しい処理となります。
期首商品棚卸高は、売上原価の計算や決算書の数値に直結する重要な項目です。前期期末棚卸高との整合性、期首・期末の振替仕訳、実地棚卸との差異処理、さらに消費税区分の考え方まで正しく理解しておくことで、決算の精度は大きく高まります。
棚卸高は「在庫の評価額」であり、取引とは異なるため通常は消費税区分を付けませんが、免税事業者から課税事業者へ切り替わる際には例外もあります。
棚卸差異の原因分析や仕訳処理を適切に行い、在庫管理と会計処理を一致させることが、正確な売上原価の算定と税務リスクの防止につながります。
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