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固定資産に関連する費用の見通しをどう財務諸表へ反映させるかは、経理実務において重要な論点です。
とくに資産除去債務は、会計処理・税務処理・見積変更の判断が複雑で誤解も生じやすい領域です。
本記事では、実務で押さえるべき基準の要点から、仕訳例、税務上の取扱い、見積変更の判断・処理までをわかりやすく整理して解説します。
資産除去債務とは、企業が固定資産を取得した際に、その資産を将来撤去・解体するために必要となる費用を見積もって計上する負債のことです。
これには、資産の使用を終了した時点で発生すると見込まれる原状回復費用なども含まれます。
固定資産管理では、各資産の耐用年数の終了時に発生する撤去費用をあらかじめ見込んでおく考え方が一般的であり、資産除去債務もこの考え方に基づいています。
資産除去債務の定義は企業会計基準によって明確に規定されています。
「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。 出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準」
資産除去債務は、将来の撤去費用を現在価値に割り引いて認識し、固定資産と負債の双方に反映させる会計処理です。
具体的な計上方法は、企業会計基準および適用指針で定められています。
つまり、将来その固定資産を撤去する義務がある場合には、必要となる除去費用を事前に見積もって資産除去債務として認識し、負債と資産の両方に反映させながら各期に費用を配分することが求められます。
これらの会計処理の考え方は、「資産除去債務に関する会計基準」およびその適用指針によって定められています。
資産除去債務の対象となるのは、次の条件を満たす場合です。
1. 有形固定資産の取得・建設・開発、または通常の使用によって発生すること
2. その固定資産の除去に関連して費用が発生すること
3. 法令や契約により求められる法律上の義務、またはそれに準じる拘束力のある義務であること
ここで重要なのは、「通常の使用に伴って生じる義務」である点です。そのため、異常な事象によって発生した除去費用は対象外となります。
また、資産の転用・用途変更・遊休化によって発生する除去費用や、法令や契約に基づかない単なる任意の除去は原則として該当しません。
ただし、企業の公表方針等により実質的な義務が発生している場合は対象となることがあります。
資産除去債務を財務諸表に計上する必要性はどこにあるのでしょうか。
2008年に企業会計基準委員会が「企業会計基準第18号(資産除去債務に関する会計基準)」および「適用指針第21号」を公表し、2010年から適用が開始されました。その導入背景としては、主に次の2点が挙げられます。
固定資産の除去に伴う負担を事前に見積もって計上することで、投資者にとって有用な財務情報となり、企業の実態をより正確に示せるようになります。
企業活動のグローバル化が進む中、日本基準を国際的な基準に近づける「コンバージェンス」の取り組みの一環として導入されました。
これにより、海外基準との比較可能性が向上し、国際的な財務報告の信頼性を高める狙いがあります。
参考:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」の公表
ここでは、代表的な4つのケースについて、資産除去債務の会計処理を具体的な仕訳例とともに解説します。
資産除去債務を認識する際には、まず将来発生する撤去費用を見積り、その現在価値を算定します。
<例>
企業が期首に以下の固定資産を取得したものとします。
この場合の取得時仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 有形固定資産 | 12,502,490 | 現金 | 12,000,000 |
| 資産除去債務 | 502,490 | ||
期末には、負債に計上した資産除去債務に対して利息費用(調整額)を認識します。
<例>
資産除去債務の残高 502,490円
割引率 3%
利息費用の計算:502,490 × 3% = 15,075円
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 利息費用 | 15,075 | 資産除去債務 | 15,075 |
さらに、関連する固定資産について減価償却も行います。
取得価額 12,502,490円、耐用年数6年の減価償却費
12,502,490 ÷ 6 = 2,083,748円
資産除去を実施すると、実際の費用とこれまで見積もってきた資産除去債務に差が生じることがあります。
<例>
6年間使用後に除去作業を行い、実際の除去費用が750,000円かかったとします。
計上していた資産除去債務は600,000円(利息累計後の最終残高)とします。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資産除去債務 | 600,000 | 現金 | 750,000 |
| 資産除去債務履行損 (履行差額) |
150,000 | ||
※見積額と実際の支出額との差額(履行差額)は、原則としてその固定資産の減価償却費と同じ区分(売上原価や販売費及び一般管理費などの営業費用)に含めて計上します。ただし、除去が臨時的な事象である場合や金額が非常に多額である場合には、例外的に特別損失として処理することもあります。
資産除去債務に関連して、会計上は次の費用が計上されます。
・ 資産除去債務を取得価額に加算したことにより増加する減価償却費
・ 時間の経過に伴い計上する調整額(利息相当額)
これらのうち、資産除去債務加算分に対応する部分は、税務上は損金算入されません。
税務上は「資産除去債務」という概念が採用されておらず、将来発生する除去費用をあらかじめ負債として認識する処理は行いません。
そのため、
・ 会計上の減価償却費のうち、資産除去債務加算分
・ 資産除去債務の利息相当額
については、税務上は損金不算入となります。
この結果、会計と税務の間に一時差異が生じ、税効果会計の対象となる点が実務上の重要ポイントです。
資産除去債務そのものは、課税取引には該当しません。
負債として計上する時点では、課税対象となる資産の譲渡や役務提供が発生していないため、消費税も生じません。
ただし、将来実際に固定資産を撤去する際に業者へ依頼した場合には、その除去作業が役務提供にあたるため消費税が発生し、仮払消費税を計上することになります。
したがって実務では、会計システムへの入力において
・ 固定資産本体の取得価額:課税仕入
・ 資産除去債務:不課税
と区分し、処理を明確に分ける必要があります。
資産除去債務は、将来発生する除去費用を見積もって計上しますが、その見積額は時間の経過や外部環境の変化により変動する可能性があります。
そのため、必要に応じて見積額を見直し、変更後の将来キャッシュフローに整合させるための会計処理を行うことを「見積変更」といいます。
将来キャッシュフローとは、固定資産を撤去する際に発生すると見込まれる費用のことです。
除去技術やコスト動向が変われば、この見積額にも影響が生じるため、定期的な見直しが不可欠です。
見積変更は、将来発生する除去費用をより正確に把握できる状況になったときに必要となります。
具体例としては次のようなケースが挙げられます。
・ 技術革新により、当初想定していたよりも容易かつ低コストで除去できるようになった場合
・ 人件費や資材価格の上昇などにより、除去作業の委託費用が高騰している場合
・ 規制変更などにより、従来より厳しい原状回復義務が課され、除去費用が増加した場合
企業は決算の際に、これらの状況を踏まえて見積額に変更がないかを継続的に確認する必要があります。
見積額に変更が生じた場合は、既に計上している資産除去債務および関連する有形固定資産の帳簿価額を見直します。
資産除去債務に関する会計基準では、見積変更に対してプロスペクティブ・アプローチを採用します。
これは、変更後の将来キャッシュフローに基づき資産除去債務の金額を調整し、その差額を関連する固定資産の帳簿価額にも反映させ、修正後の帳簿価額を残存耐用年数にわたって減価償却するという会計処理方法です。
このアプローチにより、見積額の変動を合理的に財務諸表へ反映させることが可能になります。
資産除去債務は、固定資産の撤去や原状回復にかかる将来費用を見積り、当初から財務諸表に反映させるための重要な会計処理です。
発生時点で現在価値を負債として計上し、資産にも加算するため、会計上は利益や資産の水準に直接影響します。
一方、税務では資産除去債務の概念が採用されておらず、減価償却費や調整額が損金不算入となるなど、会計とのズレに注意が必要です。
また、除去技術やコスト変動により見積りが変わる場合には、プロスペクティブ・アプローチに基づく見積変更の処理が求められます。
実務では、会計基準と税務の違いを正しく理解し、決算時に適切な処理を行うことが重要です。
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