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現在世界各国で使用されている複式簿記は、500年以上前ルカ・パチョーリによって記されたものがずっと使用されています。
ルカ・パチョーリとは?「近代会計学の父」と呼ばれるようになった所以は?
今回はルカ・パチョーリの生涯と近代会計学の礎についてご紹介します。
イタリア中部の小さな町に生まれる
ルカ・パチョーリは、15~16世紀のルネサンス期を生き抜いた数学者であり、修道士です。
代表的な著書に「スムマ(「算術・幾何・比及び比例全集」)」「神聖比例」「ユークリッド」などがあり、スムマの中に複式簿記についての記述がなされています。
パチョーリは1445年頃、イタリア中部のボルゴ・サン・セポルクロという小さな町で生まれました。
彼の生まれたパチョーリ家は、決して裕福な家庭ではなかったと伝えられています。
サンセポルクロは、著述家であり画家でもあったピエロ・デラ・フランチェスカの生誕地ということもあり、サンセポルクロ大聖堂などを巡る旅などルネッサンス美術愛好家に人気の場所でもあります。
パチョーリの少年期、ピエロはすでに画家としても数学者としても名を馳せており、パチョーリはピエロから絵画や数学を学びました。
中でもピエロは遠近画法に関する執筆を多数行っており、パチョーリはその原稿の読書をきっかけとして学習を始めたとされています。
ピエロは当時親睦の深かったウルビーノの宮廷へしばしばパチョーリを連れていき、そこでパチョーリは多数の貴重な文献を精読することができました。
これが後のパチョーリの思考の基礎となりました。
家庭教師のかたわら、商人の商業活動を観察
パチョーリは20歳の頃サンセポルクロを出てヴェネチアへと向かいます。ヴェネチアでは大商人アントニオ・ロンピアジの3人の息子の家庭教師を務めました。このロンピアジ家には6年にわたって滞在しますが、その間数学者のドメニコ・ブラガディノの下で数学の研究に従事し、商業活動を観察・勉強することができました。そしてヴェネチアを去るとき、彼にとって初めての数学に関する稿本を3人の息子たちに贈っています。
1470年、パチョーリが25歳の頃彼はローマへ行き、フランチェスコ修道院へ入団しました。
その後1475年にはペルージア大学で教鞭をとり、初めは3年の契約であったのが、彼の人間性や教師としての能力の高さから2年の延長を求められています。計5年にわたりペルージア大学で教育に従事した彼は、この期間に第2の稿本を完成し青年たちに贈っています。
その後、彼はフィレンツェ、ローマ、ナポリの大学でも教鞭をとっています。
ヴェネチアでスムマを出版
1493年末期、ヴェネチアで彼の代表作である「スムマ」の出版準備を進めていたパチョーリは、翌1494年、パガニーノ・デ・パガニーニよりスムマを出版します。
このスムマは、当時イタリアで広く普及していたユークリッドを始めとする数学・幾何学的知識をまとめた、最初のいわゆる「数学全集」ですが、パチョーリ自身が身をもって学習した商業における簿記の「複式簿記」を体系的に紹介したものでもあります。
パチョーリはスムマの中で、全ての企業取引は、借方と貸方に基づく組織的方法で記録されるべきと勧めています。(※「ルカ・パチョーリの生涯」エメット・テイラー著・大東文化大学片岡康彦訳 より引用)
たとえば、商人は3つの帳簿を使用するべきで、まず仕訳帳には借方と貸方を記入し、その仕訳帳の記録は元帳に転記され、これら全ての取引を日記帳に記入するというものです。この元帳を詳しく見てみると、現金勘定の左下側に借方、資本金勘定の右下側に貸方が記入され、借方の合計と貸方の合計が一致する仕組みとなっています。まさに、現代において使用される複式簿記の記入方法がスムマに記載されているのです。
この完璧とも言える複式簿記の説明書は、500年以上を経ても変わらず、脈々と私たちに受け継がれているのです。この普遍的な複式簿記形態の説明書を含むスムマを著したことから、パチョーリは「近代会計学の父」と称されるようになりました。
レオナルド・ダ・ヴィンチとの交友
スムマに影響を受けた人々の中に、レオナルド・ダ・ヴィンチがいます。
レオナルドはパチョーリから数学を学び、後にパチョーリが出版することになる数学書「神聖比例」の多面体の挿図の作成を手伝いました。
その後1500年代の始め、パチョーリはピサ大学、ボローニャ大学、フィレンツェ大学などで教鞭をとり、1514年にはローマ大学の教授職に就きました。
これが数学者としての最後の記録であり、1517年、72歳で生涯の幕を下ろしたとされています。
簿記の勉強をする方であれば、その名を知らない方はいないと言っても過言ではないでしょう。
パチョーリは近代会計学の父であり、ルネサンスの中で数学界にも会計学界にも多大な影響を及ぼしました。それが彼の数学への好奇心、知らないことを知りたいと願う探求心からくるものに違いありません。
パチョーリを知ることで、複式簿記に対するイメージが、ほんの少し変わるような気がしませんか?
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