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去る10月22日、企業会計基準委員会は、第162回実務対応専門委員会を開催した。
前回(2024年10月1日号(№1722)情報ダイジェスト参照)に引き続き、バーチャルPPAの会計上の取扱いについて審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
日本公認会計士協会から、①デリバティブの該非、②会計処理を行う単位、について検討することが提案されていた。その理由として、「バーチャルPPAにおいては、非化石証書を発電事業者から需要家に移転し、『発電量×(PPA契約上の固定価格―卸電力市場で決定される電力価格)』により計算される金額を発電事業者と需要家との間で決済する(差金決済)ことが一般的である。この差金決済という特徴に着目し、バーチャルPPAをデリバティブとして取り扱うか否かが論点である」ことが示されている。
これを受けて、事務局は次のように分析した。
・本プロジェクトが対象とする契約は、需要家が自己使用目的で非化石証書を取得する契約であり、差金決済は複数ある対価の決定方法の1つであると考えられる。
・前記を踏まえると、契約に含まれる差金決済という特徴のみに着目してデリバティブの該非の検討を行うのではなく、需要家にとって契約の主たる目的である非化石証書の取得という観点から、どのような会計処理が経済実態を表すのかの検討を行うことが考えられる。また、そのうえで、対価の決定方法の違いによる追加的な論点があるかを検討することが考えられる。
・企業会計基準諮問会議から提案されている、実務を踏まえたうえでの短期的な当面の取扱いの決定についての検討を行う
非化石証書に関する会計処理を検討するにあたり、事務局は次のとおりに論点を整理した。
(ⅰ) 対価の支払義務に関する負債の認識時点
発電時から電力量の認定時点までのどの時点で負債を認識するか。
(ⅱ) 負債の認識時点の会計処理
負債の認識時点において、会計上の資産を認識するか、または費用処理を行うか。(ⅰ)の検討を踏まえて検討を行う。
(ⅲ) 追加的な論点
差金決済により支払がマイナスとなる場合の会計処理および、バーチャルPPAの取引のリスクに関する開示が論点になる。
前記の論点のうち、(ⅰ)について、需要家は契約で指定された発電設備の発電量に相当する量の非化石価値を取得することをあらかじめ約束しているため、非化石価値システムを通じて非化石価値が発電事業者から需要家に移転する前から実質的に発電量に相当する量の非化石価値を受け取る権利および対価の支払義務が生じている。この場合、①発電時、②一般送配電事業者における発電量の通知時点、③発電量の認定時点のいずれかの時点で負債を認識する、との分析を事務局は示した。
これを踏まえ事務局は、需要家は対価に関する実質的な支払義務を発電時から負っているが、本プロジェクトが対象とする取引の目的が非化石証書の取得であることを踏まえると、非化石価値が認定され、需要家の支払義務が確定した発電量の認定時点で負債を認識するとの提案を行った。
専門委員からは、「取引の実態分析をもう少し行ってほしい」との意見が聞かれた。
去る10月24日、企業会計基準委員会は、第227回金融商品専門委員会を開催した。
金融資産の減損について、審議が行われた。主な審議事項は次のとおり。
これまで提案された、企業の判断により選択適用できる個別のオプションの開示に関して、次のような事務局案が示された。
① 企業が企業会計原則注解および企業会計基準24号に照らして重要な会計方針に該当すると判断したオプションについて、重要な会計方針として注記する。
② 貸付金が事業目的に照らして重要である企業が次のオプションを採用した場合には、「会計方針に関する事項」として注記する。
・貸付金に関する手数料の取扱い(ステップ2)
・実効金利に代えて約定金利を用いるオプション
・貸付金に関する手数料の取扱い(ステップ5)
③ 貸倒引当金の算定プロセスに関する事項として、IFRS7号「金融商品:開示」の開示に関する定めを取り入れ、企業は開示目的に照らして開示の要否を判断する。
専門委員からは、「①の方針に賛成。②、③は重要性が乏しいのでは」との意見が聞かれた。
金融商品の減損・信用リスクの開示に関するIFRS会計基準を取り込むにあたっての審議の進め方について、次の事務局案が示された。
⑴ 減損に関する会計基準
次の順序で審議を進める。
① IFRS9号「金融商品」の減損に関する個々の定めについて検討を行い、ステップ2として金融商品会計基準に取り込む内容、新たに開発する適用指針(新適用指針)に取り込む内容、およびいずれにも取り込まない内容を峻別する。
② IFRS9号付録B「適用指針」の関連する個々の定めについて検討を行い、新適用指針に取り込む内容と取り込まない内容を峻別する。
③ ステップ2のオプションについて、新適用指針におけるどの定めと関連づけて記載するか検討する。
④ ステップ4のオプションについて、区分を設けてまとめて記載するように検討する。
⑤ IFRS9号の設例1から設例12について、わが国の状況に合わせるように一部修正するか検討する。
⑥ 実務上の参考になる項目に関する補足文書の内容を検討する。
⑵ 開示に関する基準
次の順序で審議を進める。
① IFRS7号の信用リスクに関する個々の定めについて検討を行い、新適用指針に取り込む内容および取り込まない内容を峻別する。その際、現行の時価等開示適用指針に含まれる既存の定めの削除および見直しの要否をあわせて検討する。
② 実務対応報告18号に基づき在外子会社の財務諸表が米国会計基準に準拠して作成されている場合の開示に関して、CECLモデルに基づく情報の開示方法については具体的に定めず、複数の開示方法があることを示すように補足文書の内容を検討する。
③ 「信用リスクの開示目的」、「信用リスク・エクスポージャー開示」、「財務諸表以外の開示への参照」について追加的な検討を行う。
専門委員から特段異論は聞かれなかった。
去る10月16日、SSBJは第41回サステナビリティ基準委員会を開催した。
3月29日に公表されたサステナビリティ開示ユニバーサル基準案(以下、「適用基準案」という)およびサステナビリティ開示テーマ別基準案に寄せられたコメントへの対応案について、審議が行われた。
主な審議事項は次のとおり。
会計上、会社法監査報告書日後、金商法監査報告書日までに発生した事象について、IFRS会計基準においては修正後発事象として修正を要する一方、わが国会計基準では、開示の単一性を重視し、開示後発事象に準じた取扱いをすることとされている。
この点、適用基準案74項では修正後発事象、75項では開示後発事象に準じた定めとなっているが、会社法監査報告書日後、金商法監査報告書日までに、報告期間の末日現在で存在していた状況についての情報を入手したとき、IFRS会計基準適用企業では74項に基づき開示を更新する必要がある一方、わが国会計基準適用企業では75項に基づき当該情報を開示することになるのか、明確化を求めるコメントが寄せられていた。
事務局は、報告期間の末日後に入手する、報告期間の末日現在で存在していた状況についての情報を、「①財務諸表に関連する後発事象に関する情報」と「②財務諸表に関連しない後発事象に関する情報」に分け、次のように整理した。
・報告期間の末日後、会社法監査報告書日までの期間
①②→74項に基づき開示を更新する。
・会社法監査報告書日後、サステナビリティ関連財務開示の公表承認日までの期間
①→75項に基づき当該情報を開示する。
②→74項に基づき開示を更新する。
なお、前記の取扱いについてはわが国特有の論点であるため、追加的なガイダンスがなければ理解が難しいことが想定されるとの懸念が示された。
そこで事務局は、追加的なガイダンスを公表するにあたって、次の文書のいずれかとすることが考えられるとした。
⑴ サステナビリティ開示基準(①ユニバーサル基準、②テーマ別基準、③産業別基準、④実務対応基準)
⑵ 補足文書
⑶ 事務局による解説記事
このなかで強制力があり、かつISSB基準との整合性にも鑑み、⑴④のサステナビリティ開示実務対応基準として開発し、新たに公開草案として公表することを提案した。
委員からは、ISSB基準との乖離や、公開草案とすることで来年3月公表に間に合わないのではないかと懸念の声も聞かれた。
事務局は、日本特有の問題であるため対応が必要とし、公開草案を経ても3来年月公表に変わりはないと回答した。
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