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この記事の筆者
牛島総合法律事務所
弁護士
猿倉 健司
牛島総合法律事務所パートナー弁護士。CSR推進協会環境部所属。 環境・エネルギー・製造・不動産分野では、国内外の行政・自治体対応、不祥事・危機管理対応、企業間紛争、新規ビジネスの立上げ、M&A、IPO上場支援等を中心に扱う。 「不動産取引・M&Aをめぐる環境汚染・廃棄物リスクと法務」「ケーススタディで学ぶ環境規制と法的リスクへの対応」のほか、数多くの著書・執筆、講演・ 研修講師を行う。
牛島総合法律事務所
弁護士
福田 竜之介
牛島総合法律事務所弁護士。2022年司法試験合格。2023年弁護士登録。環境法分野では、廃棄物に関する紛 争対応等を中心に扱う。 国際的な労働関連業務のほか、各種紛争対応や契約交渉等も取り扱う。
プラスチック資源循環促進法(以下、「プラ資源循環促進法」といいます。)は、サーキュラーエコノミー(循環経済)に向けたものであり、プラスチックに係る資源循環(Reduce、Reuse、Recycleの3Rに加えてRenewable)の促進等を図るため、プラスチック使用製品廃棄物の排出抑制等の措置や、再商品化および事業者による自主回収・再資源化の認定制度(リサイクルの特例等)等を規定する法律です。
①プラスチック使用製品設計指針(設計製造段階)、②特定プラスチック使用製品(ワンウェイプラスチック)の使用の合理化対策(販売提供段階)、③排出事業者の排出抑制・再資源化の促進の措置(排出以降段階)が主な内容で、販売提供段階と排出以降段階のそれぞれにおいて、企業が取り組むべき削減やリサイクル対策に関する判断基準を定めています(詳細は後述)。
プラ資源循環促進法において対象となるプラスチックは以下のとおりです(同法2条1項~4項)。
種類 | 内容 |
---|---|
プラスチック使用製品 | プラスチックが使用されている製品 |
使用済プラスチック使用製品 | 一度使用され、または使用されずに収集され、もしくは廃棄されたプラスチック使用製品であって、放射性物質によって汚染されていないもの |
プラスチック使用製品廃棄物 | 使用済プラスチック使用製品が廃掃法の規制対象となる廃棄物となったもの |
プラスチック副産物 | 製品の製造、加工、修理または販売その他の事業活動に伴い副次的に得られるプラスチックであって、放射性物質によって汚染されていないもの |
商品の販売または役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品のうち、フォークやスプーン、ストロー等は、これらを提供する特定の事業者に対して使用の合理化等が求められる対象として「特定プラスチック使用製品」として指定されています(同法施工令5条)。この特定の事業者(特定プラスチック使用製品提供事業者)には、小売業、サービス業、宿泊業、飲食店(テイクアウトのみ、配送サービスも含む)、クリーニング業などを行う事業者が当たり、フランチャイズ展開をするフランチャイズ本部も対象とされます。
また、プラ資源循環促進法では、以下のとおり、リサイクルについて「再資源化」「再資源化等」「再商品化」を定義しています(同法2条5項、6項、8項)。
リサイクルの種類 | 内容 |
---|---|
再資源化(製品リサイクル) | 使用済プラスチック使用製品・プラスチック副産物(使用済プラスチック使用製品等)を、部品・原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすること |
再資源化等(サーマルリサイクル含む リサイクル) | 再資源化、および、使用済プラスチック使用製品等を、熱を得ることに利用することができる状態にすること |
再商品化 | 分別収集物について、製品等の部品・原材料として、または製品としてそのまま利用する者に有償または無償で譲渡し得る状態にすること |
プラ資源循環促進法によって事業者に課せられる主な措置は、以下のとおりです。
プラ資源循環促進法では、主務大臣※1は、プラスチック使用製品製造事業者等が講ずべき事項及び配慮すべき事項に関する指針(プラスチック使用製品設計指針)を策定し、指針に適合した設計を主務大臣が認定する仕組みを設けています(同法7条1項、8条1項)。
プラスチック使用製品製造事業者等(設計したプラスチック使用製品の製造を業として行う者及び専らプラスチック使用製品の設計を業として行う者)は、プラスチック使用製品設計指針に即してプラスチック使用製品を設計するよう努めなければなりません(同法7条5項)。
プラスチック使用製品製造事業者等は、プラスチック使用製品の設計について主務大臣の認定を受けることができます(同法8条1項)。具体的には、製品全体に占めるプラスチックの割合が重量比又は体積比で過半を占めるもの(50%以上)について、基準をクリアし特に優れた設計について主務大臣が認定を行うこととされています。認定を受けると、認定された製品の調達についてグリーン購入法上の配慮を受けたり(同法10条1項)、認定プラスチック使用製品製造事業者等が行う認定プラスチック使用製品の製造の用に供する施設の整備等について、産業廃棄物処理事業振興財団の優遇措置(資金借入に係る債務保証や助成金の交付など)の対象となります(同法54条)。
※1 特定の法律や規則を所管・執行する責任を持つ大臣。ここでは環境省の大臣を指します。
(1) 特定プラスチック使用製品の使用の合理化
プラ資源循環促進法は、特定プラスチック使用製品の提供事業者(特定プラスチック使用製品提供事業者)が取り組むべき判断基準を定めています(同法28条)。
こちらの概要とポイントに関する解説ついては、次章及び第5章をご確認下さい。
(2) 製造・販売事業者等による自主回収の認定制度
自主回収・再資源化事業者(自らが製造・販売・提供したプラスチック使用製品の使用済みとなったものの再資源化のためにそれらを収集、運搬及び処分しようとする事業者)は、自主回収・再資源化事業の実施に関する計画(自主回収・再資源化事業計画)を作成し、主務大臣の認定を申請することができます。認定を受けた自主回収・再資源化事業者等は、廃掃法の許可を受けないで、認定計画に従って使用済プラスチック使用製品の再資源化を業として実施することができるようになります(同法39条、41条)。
同制度は、販売業者等における店頭回収などの自主的取組みを促進することにより、再資源化の多様化をはかるものとなっています。特に、製造事業者等は、使用済プラスチック使用製品について、積極的に自主回収・再資源化の実施に取り組むことが求められていますので、今後は製造事業者等による自主回収への取り組みが加速することが予想されます。
このような認定を取得するに際しては、各事業者と協力の上で法律上求められる要件を満たすようにスキームを検討する必要があり、また行政との調整も必要となるため、弁護士その他の専門家の助言を踏まえて検討を進めるのが一般的です(※)。
猿倉健司「ケーススタディで学ぶ 環境規制と法的リスクへの対応」(第一法規、2024年11月)235~236頁
(1) 排出事業者の排出抑制・再資源化
プラ資源循環促進法は、排出事業者がプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制・再資源化等を促進するために取り組むべき判断基準を定めています(同法44条1項、3項)。
こちらの概要とポイントに関する解説ついては、次章及び第5章をご確認下さい。
(2) プラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化
これまでプラスチック容器包装廃棄物については、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)に基づいて、分別収集、再商品化が進められてきましたが、プラスチック容器包装廃棄物以外のプラスチック使用製品廃棄物は、燃えるごみ等として処理されていました。そこで、プラ資源循環促進法は、プラスチック製容器包装廃棄物以外のプラスチック使用製品廃棄物についても再商品化できる仕組みを設け、市区町村の判断により、容器包装リサイクル法ルート(容器包装の分別回収ルート)を活用したプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化を可能としました(同法31~32条)。
また、市区町村と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画が、主務大臣によって認定された場合、市区町村による選別、梱包等を省略して再商品化事業者が再商品化を実施することも可能になりました(同法33~35条)。
前記のとおり、プラ資源循環促進法は、使い捨てプラスチックの削減等に関して、特定プラスチック使用製品提供事業者が取り組むべき判断基準と排出事業者がプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制・再資源化等を促進するために取り組むべき判断基準を定めています。
特定プラスチック使用製品の提供事業者(特定プラスチック使用製品提供事業者)が取り組むべき判断基準の概要は、以下のとおりになります(「特定プラスチック使用製品提供事業者の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関する判断の基準となるべき事項等を定める省令」(令和4年1月19日))。
1 提供する特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する目標の設定
2 特定プラスチック使用製品の使用の合理化
3 プラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を促進するための情報の提供(店頭、ウェブサイト、商品への掲示を含む)
4 特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための体制の整備等(責任者の設置、研修の実施を含む)
5 安全性等の配慮
6 特定プラスチック使用製品の使用の合理化のために実施した取り組みおよびその効果の情報公開等
7 関係者との連携(国、地方公共団体、消費者、関係団体および関係事業者との連携)
排出事業者がプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制・再資源化等を促進するために取り組むべき判断基準の概要は以下のとおりになります(「排出事業者のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断の基準となるべき事項等を定める命令」(令和4年1月19日))。
1 プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制および再資源化等の実施の原則
2 プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制
3 プラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化等
4 多量排出事業者(プラスチック使用製品産業廃棄物等を前年度250t以上排出した事業者)の目標の設定および情報の公表等
5 排出事業者の情報の提供
6 本部・加盟者におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制および再資源化等の促進
7 教育訓練
8 排出の抑制および再資源化等の実施状況の把握および管理体制の整備
9 関係者との連携
上記のそれぞれの判断基準の留意点については、後述の第5章を参照してください。
以下のとおり、一定の場合には、行政処分等の対象となり、多量の特定プラスチック使用製品を提供したり、多量のプラスチック使用製品産業廃棄物等を排出している場合には、刑事罰のリスクもあります。
(1) 特定プラスチック使用製品提供事業者
プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するため必要があると主務大臣が認めた場合には、前記の判断基準を勘案して、指導・助言がなされるほか(同法29条)、前年度における特定プラスチック使用製品の提供量が5t以上となる事業者(特定プラスチック使用製品多量提供事業者)に対しては、プラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関し必要な措置を取るべき旨の勧告、勧告に従わなかった場合の公表、措置命令がなされることがあります(同法30条1項、3項、4項)。
特定プラスチック使用製品多量提供事業者がこの措置命令に違反した場合には、50万円以下の罰金(両罰規定あり)が科される可能性があります(同法62条、同法66条)。
(2) プラスチック使用製品排出事業者
プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を促進するため必要があると主務大臣が認めるときは、排出事業者に対し、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等について必要な指導・助言(同法45条)がなされるほか、多量排出事業者に対しては、排出の抑制・再資源化等に関し必要な措置をとるべき旨の勧告、勧告に従わなかった場合の公表、措置命令がなされることがあります(同法46条1項、4項、5項)。
多量排出事業者がこの措置命令に違反した場合には、50万円以下の罰金(両罰規定あり)が科される可能性があります(同法62条、66条)。
以上のような事態を避けるためにも、法務・コンプライアンス部門は、当該企業が特定プラスチック使用製品の提供事業者又はプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出事業者に該当するのかを確認し、該当する場合には、法令上求められる各措置や公表等の取組をいずれも適切に行っているのかを確認することが必要となります。
また、第2章で解説したプラスチック製品の自主回収等に関する特例認定を取得するに際しては、法律上求められる要件を満たすようにスキームを検討する必要があります。
そのため、法務・コンプライアンス部門においては、自らが主体的に、弁護士その他の専門家の助言を踏まえて検討を進めたうえで行政との調整等を行うことが必要となります。
プラスチック使用削減計画の実施にあたっては、前記の各判断基準を意識する必要がありますが、特に、次のような点が重要となります(※)。
猿倉健司「ケーススタディで学ぶ 環境規制と法的リスクへの対応」(第一法規、2024年11月)231~234、236~238頁
(1) 目標の設定
特定プラスチック使用製品の使用の合理化の目標は、基準年度および目標年度を設定した上で、①「特定プラスチック使用製品の提供量」、②「売上高、店舗面積その他の特定プラスチック使用製品の提供量と密接な関係をもつ値」、③「特定プラスチック使用製品の提供に係る原単位」の変化率(①÷②)を設定する方法で行われます(環境省ウェブサイト「よくあるご質問」)。
(2) 使用の合理化
特定プラスチック使用製品提供事業者に求められる「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」については、提供方法の工夫や提供するプラスチック使用製品の工夫が想定されています。
(3) 提供量・使用合理化の取組結果等の公表
特定プラスチック使用製品提供事業者には、設定した使用合理化の目標、特定プラスチック使用製品の提供量、使用の合理化のために実施した取組およびその効果について、自社のウェブサイトや、環境報告書、統合報告書などで公表するよう努めることが要請されています(環境省ウェブサイト「よくあるご質問」)。
(1) 排出の抑制
排出事業者に求められる排出抑制のための措置としては、プラスチック使用製品の製造・加工・修理過程におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等や流通・販売過程において使用するプラスチック製の包装材に関するプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制の促進、プラスチック使用製品の使用の合理化を行うことによるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制の促進が想定されています。
(2) 多量排出事業者の目標の設定・情報の公表等
多量排出事業者は、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制および再資源化等に関する目標を定め、これを達成するための取組を計画的に行うことが求められます。多量排出事業者は、毎年度、当該年度の前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量、排出抑制目標の達成状況に関する情報をウェブサイト等により公表するよう努めることが要請されています。
(3) 排出事業者の情報の提供
また、多量排出事業者以外の排出事業者についても、毎年度、当該年度の前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量、排出の抑制および再資源化等の状況に関する情報をウェブサイト等により公表するよう努めることが要請されています。
上記のとおり、プラ資源循環促進法は、事業者に関する様々な制度や求める措置等を規定しています。法務・コンプライアンス部門においては、どのような規制・制度の対象になるのかを適切に把握・理解したうえで必要な措置を漏れなく講じることが必要不可欠になります。
また、プラスチック製品の自主回収等に関する特例認定を取得する場面においても、法務・コンプライアンス部門において、弁護士・行政と相談の上で主体的に検討を行うことが必要となります。
同法において事業者・企業に求められる責任・義務全般については、上記で引用した文献の他、牛島総合法律事務所ニューズレター・猿倉健司「2022年プラスチック資源循環促進法の制定と事業者・企業に求められる責任・義務」もご参照ください。
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