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「赤字」と聞くと、「儲けが出ていない」や「経営状況が悪化しているのではないか」など、マイナスイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。実際、赤字経営が続くと倒産にもつながるため、企業にとってあるべき姿とはいえないでしょう。
しかし、実は赤字決算をすることには利点もあり、特に中小企業では、赤字決算にしたがる企業も少なくありません。
今回は赤字決算の概要とその種類、メリット・デメリットについてご紹介します。
赤字決算とは、特定の期において支出が収入を上回っている状態のことです。一般的にいえば、収入から支出を差し引いた額がマイナスである状況が続けば、やがて債務超過となり倒産に至ります。
ただ、赤字決算はあくまで、ある期間において赤字であることを示しており、その期において収支がマイナスだったからといって、すぐに資金が枯渇するわけではなく、ましてや倒産に至るというわけではありません。
実際、国税庁が行ったサンプル調査によれば、2016年度に決算期を迎えた企業のうち、赤字決算だった割合は63.5%に上っています。収入が支出を上回る黒字決算よりも、赤字決算である企業の方が多いのです。
ただ、この赤字であった約6割強の企業のほとんどが倒産の危機に瀕しているのかというと、決してそんなことはありません。
一口に赤字決算といっても、赤字になっている状況ごとに大きく分けて、3種類に分類できます。
まず1つ目として挙げられるのが、企業を起こしたばかりの時点で発生する「創業赤字」です。起業したばかりのときは、まだ事業活動が軌道に乗っていないために売上が伸びないことが多く、その一方で人件費を始めとする諸費用はかかるため、赤字決算となりやすい傾向があります。後に大きく成長した企業でも「創業時は苦しかった」ということは多いので、甘受すべき赤字であるともいえるでしょう。
2つ目は特定の期だけに臨時的に発生する赤字です。災害などによって製造ラインが停止する、あるいは多額の設備投資を行ったなどの理由で、突発的に赤字が発生することがあります。ただ、状況を改善すればすぐに黒字に復帰できるケースも多く、臨時的に発生する赤字から経営状態全体が悪化しているとは判断できません。
そして3つ目が、経営環境の悪化により長期化している赤字です。製造・販売を行っている市場全体が縮小しつつある、あるいはライバル企業が数多く登場して競争が激化しているなどの理由で、経営状況の改善が見込めない場合に起こります。何らかの経営改革を行わないと将来的にも収支状況の改善が難しく、対策を取れないまま結果として倒産してしまうという企業も多いです。このタイプの赤字は、企業としては何とかして回避する必要があります。
赤字決算における最大のメリットは、法人税が発生しないという点です。日本では制度上、法人税は損益計算書の税引き前利益の収支がプラスの企業にのみ行われます。そのため、赤字決算、すなわち収支がマイナスのときは、法人税の課税対象とならないのです。ただ、法人住民税の納付は必要なので、東京都の例だと最低でも7万円はかかります。
ただ、法人としてかかる課税額がこれで済むというのは、大きな利点といえます。そのため、特に中小企業の中には、節税のためにあえて赤字決算にしようとする企業は少なくありません。赤字決算にするには、製品などの製造量やサービス提供量などを減らす、あるいは売上高を減らすといったことは必要なく、費用・軽費をできるだけ計上することで行えます。
客観的にみれば、収支がマイナスになっている赤字状態は好ましい状況とはいえません。しかし、決算期に上手く調整していくことで、大きな節税効果が期待できるのです。ただ、節税のために恣意的、露骨に赤字決算を行うと税務署の調査を受けることになるので、調整できる範囲には限度があります。
赤字決算には当然、不利な面もあります。その1つが金融機関からの信用度が下がり、融資を受けにくくなるという点です。金融機関が融資を行う際、最も参考にする指標が各企業の決算書なので、赤字決算だとそれだけ融資先を決める格付け上の評価が低くなり、融資の中止が採決されることがあります。そのため、銀行から多額の融資を受けている企業の場合、節税のためとはいえ、安易に赤字決算にしようとするのは危険でもあるわけです。
赤字のあり方・種類は経営状況によって変わってきますが、法人税が課税されないという大きなメリットがあるため、赤字決算にしようとする企業は多いです。特に資金力に乏しい中小企業の場合、得られる利点は大きいといえます。
しかし、決算書は金融機関や取引先から「信頼できる相手かどうか」を判断する基準でもあるため、創業赤字などやむを得ない状況ならばともかく、そうではない場合は赤字決算だと評価を大きく下げる恐れがあります。場合によっては必要な融資を受けられなくなるため、経営者の方は注意が必要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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