経理の転職は「業界選び」が重要⁉ 業界で異なる年収水準や働き方の違いを解説！

経理は汎用性のあるスキルが身につくことから人気のある職種の一つです。
とはいえ、経理に求められるスキルがすべての業界で同じというわけではありません。

この記事では、業界ごとの経理業務や求められるスキルの傾向を解説します。
また、業界ごとの年収水準や働き方の違いも合わせてご紹介するので、仕事選びの参考にしていただければ幸いです。

経理の転職で「業界選び」が重要な理由

まず、経理の転職において「業界選び」が重要になる点を解説します。

業界選びが企業選びの軸になる

経理は管理部門の中でも求人数が比較的多い反面、自分に合った求人を見つけづらい傾向があります。
応募する企業や求人を効率的に選定するためには、転職の目的に合わせて業界を絞ることが重要です。

例えば、将来的にキャリアアップを目指している場合、成長産業やベンチャー企業の多い業界が候補となります。
一方、安定した環境を重視するのであれば、伝統的な業界や大手企業が集まる分野に注目すると良いでしょう。
こうした業界選びは、自身に合った企業選びの軸となり、転職後のミスマッチを防ぐ上でも有効です。

業界によって経理の働き方が異なる

経理の働き方が業界によって異なる点も、「業界選び」を重視する理由の一つです。
リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方ができる業界もあれば、経理業務の性質上、オフィス勤務が基本となる業界も少なくありません。
また、繁忙期のタイミングや業務のスピード感、残業の頻度なども業界ごとに違いがあります。

自身に合った働き方を見つけやすくするためにも、業界の特性や働き方の傾向を事前に把握しておくことが大切です。

経理に求められるスキルも業界ごとに異なる

経理では、基本的な簿記スキルや会計ソフトの使用方法など、汎用的なスキルが必要とされます。
しかし、実際にはそれぞれの分野や事業内容に合わせて、業界ごとに異なるスキルを求められることが一般的です。
例えば、原価計算の専門知識を要する業界がある一方で、財務分析やリスク管理のスキルを重視する業界もあります。

次章では、業界ごとに異なる経理の特徴やスキルについて、具体的に解説します。

業界ごとの経理の特徴

ここでは、8つの業界における経理の特徴や求められるスキルを紹介します。

製造業界

製造業界では、原価計算を行う経理が重要な役割を担います。
材料費や労務費、経費を含めた製品のコスト管理が求められ、工業簿記の知識が必要です。
また、直接費と間接費の区分や、製品ごとの原価を正確に算出するスキルも重視されます。
製造プロセスのコスト分析が利益確保に影響するため、製造業にとって経理は欠かせない部門です。

IT業界

技術の進化が絶え間ないIT業界では、経理業務にも柔軟な対応が求められます。
特にクラウドサービスやサブスクリプション契約の普及により、複雑化する会計処理への適応能力が問われます。

さらに、コスト削減や業務効率化のために、ITシステムを活用した自動化が進んでおり、その導入と管理に精通していることも重要です。

金融業界

金融業界の経理では、資金の流れやリスク管理など、金融業界特有の専門知識と高度な事務能力が必要です。
特に株式や債券といった金融商品に関する理解が不可欠で、複雑な取引を正確に処理する能力が重視されます。

また、規制報告に伴う税務署や国税庁への対応も、経理に求められるスキルの一環です。
資金や金融商品を滞りなく取り扱うためには、関係部署との円滑なコミュニケーション能力も重要です。

商社（卸売）業界

商社の経理は、連結決算や国際会計基準の理解が求められます。
業界特有の業務として、輸入消費税や為替変動リスクに対応できる知識も不可欠で、国際取引の処理に精通していることが重要です。
営業データの分析や市場調査に基づく資料作成も業務に含まれる場合があり、経営戦略を支える役割を果たすこともあります。

不動産業界

取引額が大きくなりやすい不動産業界では、経理業務の正確性が重要です。
売買、賃貸、仲介など、業界特有の業務に応じた異なる経理処理が求められます。
売買では、土地の非課税や建物の課税に関する知識が必要です。
賃貸業務においては、家賃収入や権利金、更新料などの管理に携わり、これらに伴う経費を正確に計上するスキルが重視されます。

ホテル業界

ホテル業界の経理では、主に宿泊・レストラン・宴会を中心とした収益源の管理が求められます。
クレジットカード払いの内容確認や、売掛金と買掛金の処理など、日常的に細かな事務処理が必須です。
水道光熱費、修繕費、クリーニング費などの経費管理を行う一方で、運営会社の財務諸表作成や資産管理に対応するケースもあります。
業界的に多言語対応が必要な場面も多く、語学力が高く評価されることも少なくありません。

アパレル業界

小売業の一環であるアパレル業界では、多種多様な商品を効率的に管理するため、「売価還元法」という独自の会計処理が行われます。
日々の売上管理や仕入れ処理が頻繁に発生するため、迅速かつ正確なデータ処理が不可欠です。

アパレル業界の経理の特徴として、在庫管理やポイントシステムの対応など、小売業特有の業務が多く、商品管理能力に高いニーズがあります。

医療業界

医療業界の経理は、業界特有の勘定科目や独自の会計ルールを理解する必要があります。
病院や診療所では、診療報酬、医療機器の購入費用、薬品の管理費などが経理の重要な業務となります。

また、医療制度や保険制度にもとづく請求処理もあり、医療関連の専門知識が肝要です。
一般企業と同様にバックオフィスでの業務が基本ですが、医療事務とは区別されるポジションに当たります。

経理の求人はどの業界が多い？

経理は、どの業界・業種でも必要とされており、最近では製造業やIT・通信業界での需要が伸びています。

2023年に「MS Agent」で掲載された経理・財務の求人データによると、最も求人が多い業界は「製造全般」となっており、全体の21.4％を占めています。
次に求人の割合が多かった業界が、18.1%を占めた「IT・通信全般」です。

また、総務省の「産業大分類別民営事業所数及び従業者数」によると、「製造業」の従業者数は約886万人で、全産業の15.4％を占めており、トップの「卸売業、小売業」の次に多い割合です。
「製造業」は、業界規模の大きさが経理の求人の多さに影響していると言えるでしょう。

一方、「IT・通信業界」は企業数や従業員数が「製造業」に比べて多くないものの、成長産業として経理業務のニーズが高まっていることがうかがえます。
例えば、技術革新に伴う新規プロジェクトの増加や財務基盤の強化が、経理求人の背景にあると考えられます。
企業経営に欠かせない「経理」の重要性は、新たなビジネスの分野においても例外ではないのです。

参考：株式会社MS-Japan「経理・財務の転職市場レポート2024」

業界ごとの経理の年収水準

経理の年収は、勤務する業界の年収水準に大きく影響を受ける傾向があります。

管理部門・士業特化型転職エージェント「MS Agent」を運営するMS-Japanの独自調査では、経理の平均年収は533万円でした。
この平均年収を基準に、業界ごとの年収水準を考慮して経理の年収を予想することが可能です。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、平均年収が最も高い業界は、電気・ガス・熱供給・水道業といったインフラ関連でした。
また、金融業や保険業も比較的年収水準が高い業界であり、これらの業界では経理の年収が550～600万円程度になることが見込まれます。

一方、平均年収が低い宿泊業や飲食サービス業、アパレル業界やホテル業界などのサービス業は、全体として年収水準が高くないため、経理でも高い年収は期待しにくい傾向です。
サービス業界の年収水準が低い背景には、労働集約型のビジネスモデルや、競争が激しく価格設定に制約があることが影響しているかもしれません。

このように、経理は業界ごとの年収水準に依存しやすいため、希望する年収を考慮した上で業界を選ぶことが賢明です。

「業界」以外に重要な経理求人の選び方

経理の求人選びでは「業界選び」だけが重要なわけではありません。
ここでは、経理の転職で業界以外に注目してほしいポイントを2点紹介します。

「1人経理」に注意！

経理は、ワークライフバランスが保ちやすい職種と言われる一方で、その逆のケースがあることも事実です。
経理は「収益を直接生み出さない部署」として捉えられることが多く、企業によっては経理部門の人件費や教育コストを抑える傾向が見られます。
そのため、経理業務を1人で担当する「1人経理」状態となり、過度な業務量により残業時間が増えることでワークライフバランスが崩れやすくなるのです。
ワークライフバランスを確保したい場合、企業が経理部門にどれだけのリソースを割り当てているかが重要なポイントとなります。

経理求人の選び方としては、まず経理部門の具体的な業務内容や業務範囲を把握することが重要です。
面接時に、1人当たりの業務量が適正かどうか、教育・サポート体制がどの程度整っているかを確認しましょう。
「1人経理」のような状況であれば、業務の負担が大きくなる可能性が高いため、選択肢から外す目処がつきます。
加えて、繁忙期と閑散期ごとの残業状況についても質問し、残業時間が適正な範囲内に収まっているかを確かめましょう。

「離職率」等のデータも要確認！

従業員の離職率や平均勤続年数といったデータもチェックポイントです。
これらの情報から、過度な業務負担や人員不足が原因で社員が長続きしない企業を見分けられます。
転職エージェントを通じれば、より詳細な内部情報や企業風土についても聞くことができるため、積極的な活用がおすすめです。

ワークライフバランスを重視した企業の特徴は、福利厚生や働き方の柔軟性にも表れています。
休暇制度の種類やリモートワークの導入など、働きやすい環境が整っているかどうかも、求人選びの検討材料になります。

経理の業界選びに迷ったら転職エージェントに相談しよう

経理への転職を検討する際、業界選びに迷うことがあるかもしれません。
異業種への挑戦や、現職の業界内でのキャリアアップなど、選択肢が多岐にわたる場合はなおさらです。
そのようなときには、転職エージェントのサポートを受けることで、自身に合った選択が見通しやすくなります。

転職エージェントは、業界ごとの業務内容や企業の雰囲気、経理部門の特性など、応募者には見えにくい情報を事前に把握しています。
経理としてのキャリア形成に関するアドバイスや、応募書類の添削、面接対策まで幅広いサポートも提供されます。

中でも、管理部門に特化した転職エージェント「MS Agent」は、経理の業界選びに迷った場合の心強い味方となります。
異なる業界の経理求人を紹介してもらいつつ、手厚いサポートも受けながら、効率的に転職活動を進められるでしょう。
利用登録は無料となっているため、経理の転職成功に向けて、一度相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

経理への転職を考える際には、「業界選び」が重要なステップになります。
業界ごとの特徴や求められるスキルを理解することは、経理としてのキャリア形成に不可欠です。
業界によって年収水準や働き方が異なることも、自身に合った選択のためには必要な情報です。

業界選びに迷ったときや、経理未経験で転職活動に不安がある場合は、転職エージェントの活用をおすすめします。
経理の転職サポートに強い「MS Agent」を通じて、より具体的な情報を得ながら、自身に適した業界でキャリアを目指しましょう。