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2023年4月に解禁された「賃金のデジタル払い」は、電子マネープラットフォームを活用した新たな給与支払いの仕組みです。これは、キャッシュレス化推進の一環として、2025年までにキャッシュレス比率40%に引き上げることが目標とされています。
一方で、企業側にはシステム対応の負担や導入効果が不透明といった課題があり、普及は思うように進んでいません。本記事では、最新の調査結果をもとに賃金のデジタル払いが企業や従業員に与える影響と、今後の普及に向けた課題を考察します。
▼この記事を書いた人
松葉 治朗
jinjer株式会社
CPO / ジンジャー人事DX総研 所長
2014年に新卒入社したベンチャー企業で、新規事業の企画、営業、管理など幅広い業務に従事。
2015年9月に大手人材企業に転職し、クラウド型人事労務システム「ジンジャー」の立ち上げに参画。
現在は最高プロダクト責任者として、統合型データベースを軸としたHRコンパウンドサービスのプロダクト戦略の立案と実行を行いながら、ジンジャー人事DX総研(旧:jinjer HR Tech総研)の所長として、人事DXに関する様々な発信をおこなっている。
2023年4月に解禁された「賃金のデジタル払い(※1)」は、電子マネープラットフォームを活用して従業員に給与を支払う新たな仕組みです。労働基準法の改正によって実現したこの制度は、キャッシュレス化が進む現代社会において、新たな給与支払い手段として注目されています。
デジタル払いの背景には、キャッシュレス決済比率の向上を目指す国の施策(※2)があり、2025年までに国内のキャッシュレス比率を40%に引き上げる目標が掲げられています。さらに、将来的には世界最高水準の80%達成を目指し、賃金のデジタル払いを含めキャッシュレス化推進の取り組みが、日本でさらに加速していくことが予想されます。
一方で、企業側には新たなシステム対応の負担や、賃金デジタル払いの導入の意義が不明確であることが課題となっており、調査によって普及が思うように進んでいないことが明らかになりました。
当社が実施した「賃金デジタル払いの認知度およびその実施状況に関する調査(※3)」では、企業が「賃金のデジタル払い」に対して、どのような姿勢で取り組んでいるのかを把握することを目的に、調査を行いました。
調査結果によると、賃金デジタル払いの認知度は約76%と比較的高い水準にある一方で、実際に導入を検討している企業は約37%にとどまっています。制度の認知度は高いものの、導入に踏み切れない企業が多いことが調査から明らかになりました。その理由として、主に以下の3つの課題が挙げられます。
まず1つ目の課題として、「従業員からの合意獲得や制度変更が大変そう」が最多意見として挙げられたことです。DXが進む世の中とはいえ、業界や働き方によっては「デジタルで給与を支払う/受け取る」ことに抵抗感を持つケースが少なくないようです。特に、現金支給や銀行振込に慣れ親しんだ従業員との間で、キャッシュレス化に対する意識のギャップが存在することが明らかになりました。
2つ目の課題は、「既存システムとの連携の複雑さ」や「導入プロセスの難しさ」、「セキュリティ面への不安」です。
既存の人事労務システムがデジタル払いに対応していない場合や、システム連携が複雑化することへの懸念が調査結果で示されました。また、金銭のやり取りが関わるため、情報漏洩や不正アクセスといったセキュリティリスクへの不安も企業の障壁となっているようです。
3つ目の課題として、「法規制や制度の内容がわかりにくい」という点です。デジタル払いを利用する際の企業のリスクが明確でないことも、導入をためらう要因の一つとなっています。
企業がスムーズに「給与デジタル払い」を導入するために求められる対応として、以下の3つが考えられます。
デジタル払いを導入する際、最も重要なのが雇用主と労働者の間で労使協定を結び、適切な同意を得ることです。この制度は法令上、事前に労使協定の締結が義務付けられており、企業は次の点に留意する必要があります。
このプロセスを通じて、制度の透明性を確保するとともに、従業員からの理解と信頼を得ることが可能となります。また、企業としては単に制度導入を進めるのではなく、従業員の不安や疑問に寄り添ったコミュニケーションを行うことが、スムーズな定着を促すために重要になるでしょう。
賃金デジタル払いを円滑に導入するための2つ目のポイントは、「既存の人事労務システムの対応状況を確認し、社内制度としての導入意義を明確化すること」です。
その中で、最初にすべきは「人事労務システムの対応状況の確認でしょう。 現在使用している人事労務システムがデジタル払いに対応しているかを確認する必要があります。主要なSaaSベンダーは、この新たな制度に対応するためのアップデートを進めていますが、既存システムが未対応の場合は、システムの改修や刷新が必要になることも考えられます。
また「導入意義の明確化」に関して、デジタル払いは、単なる給与支払い方法の変更ではなく、労務管理の効率化やキャッシュレス化推進など、企業の課題解決に貢献する可能性があります。しかし、現状では従業員のニーズが必ずしも明確に表れているわけではなく、調査結果からも、導入の必要性が理解されにくいというギャップも存在します。
このギャップを埋め、社内で制度を浸透させるためには、次のような「デジタル払い導入の大義名分」を明確にすることが重要です。
これらの導入意義を明確にし、企業全体として「なぜデジタル払いで給与支払いを行うのか」を社内に周知することで、理解と納得を得やすくなります。
賃金デジタル払いを円滑に導入するための3つ目のポイントは、従業員の理解を深め、デジタル払いに対する意識のギャップを解消することです。
デジタル払いを推進するには、従業員の理解を深めることが不可欠です。そのためには、以下の施策が有効です。
これにより、デジタル払いの仕組みや企業が導入を目指す理由について、従業員が納得できる形で理解を深めることができます。現金払い・銀行振込が一般的なため、新たな支給方法に抵抗感を持つ従業員も少なくありません。
このため、以下のポイントを強調して説明することが重要だと言えるでしょう。
デジタル払いの導入には、企業と従業員双方にとっての利点が期待される一方で、慎重な検討が必要なポイントも考えられます。
まず、従業員にとってのメリットとして「従業員の利便性向上」があげられます。 一般的な銀行振り込みとは異なり、即時払いが可能になるため、特にスポットワーカーやパート・アルバイトの従業員へ給与の支払いを行うことができます。給与の即時受け取りは、アルバイトなど人材を獲得する上では、従業員だけでなく企業にとってもメリットが生じることが考えられます。
企業にとっても、「業務の効率化」が期待できます。振り込み支払いや現金払いに比べて、事務作業が簡略化され、労務管理の効率が向上することが考えられるためです。
一方、考えられる懸念としては、「セキュリティリスク」、「社内への利用浸透が難しい」という点が考えられます。セキュリティリスクに関しては、デジタルプラットフォーム上でやり取りを行うからこそ、不正利用や情報漏洩の可能性も考えられます。
賃金デジタル払いを各企業へ浸透させるためには、以下の3つのポイントが重要だと考えています。
1つ目は、「法令遵守の徹底」です。
前述したように、従業員への細かな説明無しでは、デジタル払いにて給与を支払うことは認められません。まずは、企業が制度を安全に活用できる体制を整備することが重要でしょう。
2つ目は、「システムインフラの整備」です。
既存システムでどのように対応していくかを模索する必要があります。既存システムが対応していない場合は、信頼性/セキュリティ性の高いシステムを導入し、運用リスクを最小限に抑えることも1つの手段として考えることができるでしょう。
3つ目は、「適切な情報発信と社内研修」です。
従業員と管理者双方に対して、デジタル払いにて給与を支払うことに対するメリットの訴求や、安全性の仕組み等を分かりやすく伝える研修を都度行うことが重要になるでしょう。
賃金デジタル払いは、デジタル時代の働き方に即した新しい給与支払いの選択肢です。適切に導入すれば、従業員の利便性向上や業務効率化を通じて、人材獲得等、企業の競争力を高める重要な施策となります。
今後、企業がこの制度を有効活用するためには、法令遵守、システム対応、従業員教育を含む包括的な準備が求められます。 これを機に、自社の人事労務体制の見直しを進め、新たな時代の給与支払い制度の可能性を検討してみてはいかがでしょうか。
参照元
※1:厚生労働省|労働者・雇用主の皆さまへ 賃金のデジタル払いが可能になります!
※2:経済産業省|キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性
※3:jinjerBlog|給与デジタル払いの認知度およびその実施状況に関する調査
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