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ご存じの通り、近年の日本における労働市場は少子高齢化の影響もあり、労働供給すなわち働き手の不足が目立ってきています。2024年における従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産は過去最多を更新しております(https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250109-laborshortage-br2024/)し、直近では新卒社員を集めるために初任給を大幅に上昇させる企業も出始めています。
こういった状況の中注目されているのが外国人雇用で、外国人労働者を積極的に受け入れることによって人材を確保し、事業の安定・拡大を図っていこうとする動きがあります。外国人労働者の適正かつ有効な受け入れについては、入管法と労働法という二つの視点から考える必要がありますが、今回の記事では主に労働法の観点から、外国人労働者雇用のポイントと労務管理の注意点についてご紹介していきます。
▼この記事を書いた人
寺山 晋太郎
社会保険労務士
社会保険労務士法人 宮嶋社会保険労務士事務所
福島県出身。一橋大学社会学部卒業。大手鉄道会社にて現業や本社勤務など様々な業務を経験。2014年第一子誕生を機に育休を取得。その後現職に転じ、働きながら社労士資格を取得。社労士業の傍ら、3児の父親としても奮闘中。
まず外国人雇用の現状です。平成19(2007)年より、外国人労働者を雇い入れた事業主は、その雇用もしくは離職の際に、ハローワークへ届け出ることが義務化されており、その統計結果は厚生労働省より年一回のペースで公表されております。
最新のデータである令和6(2024)年10月末現在における外国人労働者数は2,302,587人と、前年よりも253,912人増加しており、過去最高の人数になっております。外国人労働者を国籍別にみると、最多がベトナム、続いて中国、フィリピンの順になっています。
また人数の増加に伴って、外国人労働者を雇用する事業所の数もどんどん増えており、その数は342,087箇所とこちらも過去最高の数値になっています。このように、外国人労働者とそれらの方々を雇い入れる事業所の数は、過去例のないペースで増加しているというのが現状です。
この背景にあるのは、特に人材の確保が難しい業種の存在です。外国人労働者の内訳を在留資格別にみると、最も多いのが「専門的・技術的分野」であり、続いて「身分に基づく在留資格」「技能実習」「資格外活動」となりますが、ここで注意しておかなければならないことは、「専門的・技術的分野」には「特定技能」も含まれるということです。
「特定技能」とは令和元(2019)年より創設された在留資格で、人材の確保が困難な状況にある産業上の分野(介護、建設、自動車整備など)において外国人労働者を受け入れるためのものです。近年はこの「特定技能」の増加が非常に著しく、令和6(2024)年10月においては206,995人で対前年比49.4%増と、全在留資格の中でも最も大きい伸び率になっています。このことからも、国内において人手の確保が難しい業種において外国人労働者の受け入れが進んでいることが分かります。
外国人労働者の受け入れは今後も拡大することが見込まれ、それに伴い外国人労働者における労務管理の重要性も増していくことが予想されますので、次項以下で具体的な注意点、ポイントなどをご説明していきます。
外国人労働者を採用するにあたって、まず大前提として確認しておくべき法的要件があります。それは、当該外国人労働者が有効な「在留資格」を有しているかどうか、という点です。外国人は、認められた在留資格や在留期間の範囲内でのみ日本国内で活動することができますので、採用後に従事してもらう予定の業務が可能である在留資格を持っているかどうかを必ず確認しておく必要があります。
在留資格の確認は、「在留カード」を通して行います。在留カードとは、日本における中長期在留外国人に対して、上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可などの在留に関する許可に伴い交付されるもので、当該在留者の氏名や生年月日、国籍、在留資格の種類と期間、就労に関する制限の有無などが記載されています。そのため採用の際には必ず在留カードの提示を求め、有効な在留資格および在留期間を満たしているかどうかを確認するようにしましょう。
例えば「留学」という在留資格では基本的に就労はできませんし(資格外活動の許可を得ることができた場合のみ、例外として就労時間などの制限付きで就労させることができます。資格外活動許可の有無は在留カードに記載されます)、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人労働者に工場労働を行わせることは、在留資格と就労業務の関連がないので認められません。
違法に資格外活動を行うと、国外への退去強制など本人への処罰はもちろん、雇入れた側も不法就労助長で懲役・罰金などの刑が科されます。なお不法就労助長は、たとえ雇用する側が当該外国人について不法就労であることを知らなかったとしても成立しますので、十分な確認と注意が必要です。
その上で外国人労働者の採用手続きや法的要件ですが、基本的に日本の労働法制に国籍は関係ありませんので、たとえ外国人労働者であっても、国内で働いているのであれば労働基準法や労働契約法、最低賃金法など労働関係法令は日本人と同様に適用されます。ゆえに、例えば労働契約の締結時には一定の労働条件(雇用期間・就業場所・業務内容・賃金等)を書面により明示しなければなりませんし、雇入れの際には健康診断を受診させなければなりません。
外国人だからといって省略してよい採用手続きは基本的にないという認識を持っていただければと思います。加えて①の冒頭で少しお話ししましたが、外国人の雇入れ・離職の際にはハローワークへ外国人雇用状況の届け出を行う必要もあります。たとえ短期アルバイト、留学生が行うアルバイト等であっても必要です。雇用保険に加入する場合は同手続きと同時に行うことが可能ですが、加入しない(していない)場合であっても別途手続きが必要になりますので、忘れないようにしましょう。
なお、特に外国人であることに気を使っていただきたい事項もあります。例えば賃金ですが、日本における職能給制度(同じ仕事をしていても、在籍期間等によって給与額が異なる制度)は世界レベルで見ると一般的ではないため、より丁寧な説明が必要になるでしょう。また労基法では国籍を理由とする差別的取り扱いを禁止しておりますので(労基法第3条)、外国人労働者であることを理由とした不合理な賃金体系を適用することはできません。
また社会保険や労働保険といった各種保険制度についても、条件を満たせば加入してもらう必要があります(当該国との間で社会保障協定が締結されている場合などを除く)ので、要件に該当する外国人労働者に対しては制度の趣旨や内容、各種給付や申請方法などについて一通り説明しておくことが大切です。日本年金機構や厚生労働省のホームページには、様々な言語で記載された説明用パンフレットがアップされておりますので、それらを活用されることもお勧めいたします。
当然ながら、外国人と日本人とではバックグラウンドが大きく異なり、日本の労働慣行や労働法制についての知識もそこまで持ち合わせていない場合がほとんどですので、その点を念頭に置いた労務管理を行っていきましょう。具体的には、外国人労働者に対し会社の規程や慣習、日本の社会保障制度や賃金支給の仕組みなどを丁寧に説明し理解を得ていくとともに、こちらも当該外国人労働者の出身国の慣習などバックグラウンドを理解するように努め、それに対しできるだけ配慮を示していくことが大切になります。以下、外国人労働者との間で問題になりがちな事項をピックアップしてご説明いたします。
例えば賃金支給の仕組みについてです。まず、額面と手取り金額が異なることは日本人にとっては当たり前のことですが、外国人労働者にとってみれば「何故当初聞いていた金額がもらえないのか」と疑問に思うかもしれませんし、きちんと説明しないと誤解を招いてトラブルに発展する可能性もあります。そうならないように、源泉徴収の仕組み、社会保険制度の概要やそのメリット、どの社員も公平に控除されていることなどをしっかりと説明しておきましょう。可能であれば実際に控除される額と手取りの額を示すなど、できるだけ具体的にイメージできるような説明ができれば、外国人労働者の理解も得やすいでしょう。
賃金体系についても同様です。基本給と各種手当という区別がない国もありますし、そもそも通勤手当が出ない国もあります。またそれぞれの手当についても、支給要件は会社によってさまざまなルールがあると思いますので、それらを分かりやすく説明し理解を得ておくようにしましょう。なお繰り返しとなりますが、労働法制は外国人にも適用されますから、国籍を理由に不当に賃金を低くしたり、最低賃金を下回る賃金の定めをすることはできません。
他には、休暇に関する事項もしっかりとコミュニケーションを取っておきましょう。日本では有給休暇取得率はあまり高くない現状があり、取得する際も周囲とのバランスを考える傾向がありますが、外国人労働者の中にはそのような考え方をしない方も多く、母国の慣習に合わせ、日本ではあまり一般的ではない時期に長期休暇を取得しようとする場合もあります。
トラブルを避けるために、例えば、長期休暇を取得する際には業務への影響が大きくなるため事前に伝えてほしいことや、会社には時季変更権があるため、場合によっては希望する期日に休暇が取得できない可能性があることなどを説明しておき、理解を得ておくと共に、母国の慣習や帰省予定など事前に聞き取れることは聞きとっておき、なるべく希望を叶えられるような体制をとっておくのも良いでしょう。
以上、一部をピックアップしてご説明しましたが、この他にも理解を得ておくべきことは多々あります。どういった事項をどのように説明すればよいかについては、厚生労働省が発行している『外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集~日本人社員、外国人社員共に働きやすい職場を作るために~』という資料が参考になりますので、ご活用いただければと思います。
また、外国人労働者とコミュニケーションを取る際、言語の壁が問題になることもあるかと思います。特に専門用語が飛び交う職場や、建設業や製造業など安全衛生に特に気を遣う業態については、ちょっとしたコミュニケーションロスが大きな事故につながる可能性もあります。在留資格によっては一定の日本語能力(日本語能力試験で一定レベル以上の認定を獲得)を取得要件としてはおりますが、可能であれば日本語学校に通ってもらったり、eラーニングを受けてもらうことも有効でしょうし、また逆に日本人社員に対して外国語教室を開くなど、お互いの理解を深めるような施策も検討に値するかと思います。
外国人労働者の労働条件については、繰り返しとなりますが労働法制に基づいたものにする必要があります。しかしながら残念なことに、外国人労働者に対する待遇が適正に確保されているとはいえない現状があります。特に在留資格「技能実習」においては様々な問題が指摘されており、厚生労働省が発表している令和5年分の調査結果によると、監督指導を実施した技能実習受入先のうち73.3%で労働基準関係法令違反が認められたという結果が出ております。
違反の内容は違法な時間外労働(1ヶ月平均80時間超過)、時間外労働の割増賃金未払い、資格が必要な業務に無資格で従事させる、等です。技能実習制度については制度上の問題点も指摘されていたことから、2024年6月には技能実習に代わる新たな制度として育成就労制度を設ける法改正が可決成立しているところではありますが、世界的に人材獲得競争が厳しくなる中で(つい最近では、IT人材確保のためにインド人留学生に1人300万円を補助する、というニュースが報じられたばかりです)、日本が選ばれる国になるためにも、外国人労働者の労働条件と待遇の適正化は喫緊の課題であるといえます。
具体的な例を挙げますと、まずは労働契約です。そもそも労働契約というものは労働者と使用者の合意によって成立するものである以上、お互いが契約の内容をよく理解しているというのが大前提となります。しかし外国人労働者が日本の労働法制、労働慣行に基づいた労働契約を一朝一夕で理解するのは困難ですし、契約書独特の言い回しや言葉の壁の問題もあります。
よく理解されぬまま労働契約を結んでしまうと、後々トラブルになってしまうことも考えられますので、外国人労働者向けに母国語や英語などで書かれた労働条件通知書もしくは雇用契約書を用意しておくのが良いかと思います。それらを活用して、労働契約の内容をしっかりと理解してもらうようにしましょう。
また、契約の内容自体も適正なものとしましょう。外国人ということのみを理由とした不合理な待遇差は許されませんので、仮に日本人労働者と待遇差がある場合には、雇用形態や業務内容、残業の有無、勤続年数など合理的客観的に説明できる基準を設ける必要があります。
次に、就業規則を理解してもらうことも必要です。就業規則も労働条件の重要な構成要素の一つですし、従業員に周知しておく必要もありますので、外国人労働者向けに母国語や英語のもの、それが難しければできるだけ平易な日本語で書かれたものを用意しておき、可能であれば説明の場を設けるなど、できるだけ丁寧に周知を図っておきましょう。その際に、就業規則との関係で母国の慣習上配慮してほしいことなどを聞き取ることができれば、その後の円滑な業務体制構築に役立つかと思います。
以上いくつか例を挙げてご説明いたしましたが、外国人労働者の労働条件・待遇の適正化のためには、大前提としてそれらを労働法制に基づいたものにすることは当然ですが、その上で外国人労働者としっかりコミュニケーションを取り、その内容を理解してもらうように努めましょう。自分の待遇は適正なものであるという認識を外国人労働者自身に持ってもらうことができれば、無用なトラブル防止につながり、お互いが気持ちよく働くことができるようになるでしょう。
外国人労働者の雇用管理については、厚生労働省が定める「外国人雇用管理指針」に詳しく書かれており、その内容も多岐に渡ります。今回の記事では、その中でも特に重要かと思われる点をピックアップしてご説明いたしました。
外国人労働者の雇用にあたっては、基本的には日本人労働者と同じように労務管理を行うことが求められる一方で、外国人であるという事情を背景とした特殊な要件確認・手続きが必要であったり、文化や言語などバックグラウンドの違いを考慮したきめ細かい対応も加えておくことが重要となります。外国人労働者への適正な待遇の確保は、その能力や専門性を十分に発揮してもらうことで事業の安定・発展にもつながるかと思います。今回の記事がその一助になれば幸いです。
監修元
社会保険労務士法人 宮嶋社会保険労務士事務所_公式サイト
執筆者:寺山 晋太郎様
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