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いまさら聞けない「エンゲージメント」とは|第2回「従業員の不満を解消すればエンゲージメントは上がる」という誤解

公開日2025/04/08 更新日2025/04/07 ブックマーク数
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「従業員の不満を解消すればエンゲージメントは上がる」という誤解

前回は、エンゲージメントが離職防止だけでなく事業成果にも好影響をもたらすことをお伝えしました。(いまさら聞けない「エンゲージメント」とは|第1回 エンゲージメント向上に力を入れる企業が増えているのはなぜ?

こうしたエンゲージメントの重要性が一般的に認識され始め、エンゲージメント向上に注力する企業が増えていますが、成果につなげられている企業ばかりではありません。

今回は、エンゲージメントを向上させる際によくある「誤解」と、その対応策についてお伝えしていきます。

田中 允樹様

▼この記事を書いた人

田中 允樹

株式会社リンクアンドモチベーション
中小・成長ベンチャー企業向けクラウド事業・コンサルティング事業 部門責任者

■エンゲージメントを向上させる際によくある「誤解」とは?

効果的にエンゲージメントを向上させるためには、「See(現状分析) → Plan(施策立案) → Do(実行促進)」の3つのステップで取り組むことが重要です。ただし、取り組む際には各ステップでよくある「誤解」に注意が必要です。今回は、特にSee(現状分析)の誤解についてお伝えします。

●Seeの誤解:「従業員の不満を解消すればエンゲージメントは上がる」

See(現状分析)のステップでよくあるのが、「従業員の不満を解消すればエンゲージメントは上がる」という誤解です。

エンゲージメント向上の第一歩は、自社のエンゲージメントの現状分析を行うことです。近年は、「エンゲージメントサーベイ」などのアンケート調査を導入し、自社のエンゲージメントを定量化・可視化する企業が増えています。

通常、エンゲージメントサーベイを実施したら、その結果をもとに現状分析を行い、従業員の不満や組織課題を抽出します。この時、多くの企業は「こんなに不満があったのか」とショックを受けながらも、「一つずつ不満を解消していこう」と対策に着手します。しかし、従業員の不満を解消するだけではエンゲージメントは期待したようには上がりません。このことは、「ハーズバーグの二要因理論」からも明らかです。

臨床心理学者であるハーズバーグは、職場において、無ければ不満を感じるが、得られても満足につながるわけではない要因を「衛生要因」、無くても不満は感じないが、得られれば大きな満足につながる要因を「動機付け要因」と定義しました。

・衛生要因〈個人の職務環境に関する要因〉
経営方針、上司・同僚・部下との関係性、作業条件、賃金、雇用の安定性など

・動機付け要因〈個人の職務内容に関する要因〉
達成感、承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長など

ハーズバーグの二要因理

多くの企業は、給与や働き方を見直すことで従業員の不満解消に努めますが、衛生要因を解消するだけではエンゲージメントの向上は一定で止まります。さらにエンゲージメントを高め、事業成果につなげるためには、衛生要因に対応しつつ、いかに動機付け要因に働きかけられるかが重要です。

動機付け要因に働きかけ、エンゲージメントを高めるポイントは、以下の2点です。

●ポイント①サーベイで「満足度」だけでなく「期待度」も測る

一般的なエンゲージメントサーベイでは、従業員の満足度のみを測る場合が多く、「満足度の低い項目から手を打つ」という方針になりがちです。しかし、必ずしも満足度の低い項目が、優先的に改善すべき項目とは限りません。

たとえば、サーベイで上司に対する満足度が低いことが分かったため、1on1の導入や上司向けの研修を実施したとします。しかし、満足度の低さと優先的に解決して欲しいことは必ずしも一致するとは限りません。従業員に上司以外の他に優先的に解決して欲しい不満がある場合、解決すべき課題とズレた施策になってしまい、逆に不満を増幅させてしまう危険性があります。 こうした「施策のズレ」をなくすためには、サーベイで満足度だけでなく、”期待度”も測ることが重要です。

従業員が会社に対して「何をどのくらい期待しているのか」という期待度を把握し、そこに対して「どれだけ満足しているか」を把握することで、「不満を解消する」のではなく、「期待に応える」という方向で施策を講じることができます。また、従業員の期待度が分かれば、動機付け要因も抽出しやすくなるため、より効果的にエンゲージメント向上を図ることができるでしょう。従業員の期待を把握し、改善しながら組織変革を進めることで、自組織の状況に合わせた対応がとれるようになり、安直な他社の模倣をしないことにもつながります。

従業員が会社に対しての期待度

●ポイント②何によってエンゲージメントを高めるのかを絞る

従業員の期待度を把握したら、次は「何によってエンゲージメントを高めるか」を決めることが重要です。当社では、エンゲージメントを左右する企業の魅力を「4P」という形で以下の4つに分類しています。

組織の所属を左右する4つの魅力

4Pのうち、Privilege(待遇の魅力)は、不十分だと従業員の不満につながるため、これを無視することはできません。また、Privilege(待遇の魅力)は模倣される可能性が高く、対応できる範囲がリソースで制限されやすいため、ハーズバーグの二要因理論の「衛生要因」として捉えた方が良いでしょう。

そして、他の3つのPの中で「動機付け要因」となる部分を高めることでエンゲージメントの向上が期待できます。 ただし、企業のリソースには限りがあるため、3つのPをすべて高めるのは現実的ではありません。 「どのPでエンゲージメントを高めるのか?」を決め、そのPに注力した施策を講じるのがポイントです。

■事例紹介

Seeのポイントに注力し、エンゲージメントを向上させ、事業成果につなげた電機メーカーの事例をご紹介します。A社は典型的な日本の大企業であり、保守的な風土が蔓延していました。取り組み前に行ったアンケート調査では、「無駄な仕事が多い」「評価がフェアでない」「大企業病に陥っている」など、従業員から厳しい声が寄せられました。そこで、新しく策定した中期経営計画の重要なKPIの一つとしてエンゲージメントを掲げ、保守的な風土から脱却し、従業員の挑戦を促す風土づくりに着手しました。

エンゲージメントサーベイで従業員の期待度を把握し、4つのPのなかでも特に期待度が高く、満足度が低い「Philosophy(目標の魅力)」に絞った取り組みをおこないました。具体的に実施したのは次の2つの施策です。

①従業員が会社の方針を理解し、自らの役割を再認識できるよう、経営トップとの双方向セッションを実施。
②理念浸透のキーパーソンとなる管理職のマネジメント力を強化。新任の管理職だけでなく既存の管理職にも研修を実施し、マネジメント力の変化を定量的に把握・開示。

約4年にわたる取り組みの結果、従業員に会社の理念が浸透し、新たなプロジェクトへの挑戦が次々と生まれる組織へと変貌を遂げました。特筆すべきは、株価・時価総額が4年で2倍以上になったことです。

同社の成功要因は、従業員の期待度を把握し、注力する要素を絞ってエンゲージメント向上に取り組んだことです。風土改革の取り組みが、事業成果にもつながった好事例だと言えるでしょう。

次回は、エンゲージメント向上における「Plan(施策立案)」のステップで陥りがちな誤解と、その対応策について解説していきます。


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