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【税理士事務所執筆】住民税の計算方法とは?企業の経理担当者が知っておくべき基本をわかりやすく解説!

公開日2025/04/04 更新日2025/04/03 ブックマーク数
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住民税の計算方法とは?

「住民税のことがよく分からない」「住民税はどのように計算するの?」このようにお悩みではないでしょうか。 住民税とは、福祉や教育などの身近な行政サービスに利用される税金で、市区町村や都道府県に納めるものです。

また、住民税は、個人で納める税金の「個人住民税」と、法人が納める税金の「法人住民税」に分かれます。国税とは計算方法などが異なるため、住民税の計算方法がよくわからず、クライアントに上手く説明できないと感じる方もいるでしょう。

本記事では、個人住民税と法人住民税の計算方法や、制度概要を分かりやすく解説します。最後まで読めば、住民税への理解が深まり、適切な事務処理ができるようになるでしょう。

石黒健太様

代表者プロフィール

石黒 健太
石黒健太税理士事務所  代表

京都府を中心に、クラウド会計、経理DXを強みとし、効率的な税務・会計サポートを提供しています。
また職員が働きやすい環境を重視し、フレックスタイム制(コアタイムなし)をはじめとした柔軟な働き方を推進しています。
他にも税理士業界の課題である繁忙期の残業時間削減に取り組むなど「お客様と職員の共に成長できる事務所づくり」を理念に、業界の新たな可能性を追求しています。
HP:https://ishiguro-tax.jp/

住民税とは?基本概要を説明

住民税とは、「都道府県民税」と「市町村民税」の総称のことで、住民登録を行っている個人や、事業所等を有する法人に課せられる地方税です。個人と法人どちらも住民税を納付しますが、納付先が異なります。

納付者 納付先
個人 ・道府県民税と市町村民税分を市区町村へ納付
法人 ・道府県民税分は道府県税事務所へ納付
・市町村民税分は市区町村役場へ納付
・都道府県民税分と市町村民税分を都税事務所へ納付(東京都23区内にある法人)

個人が負担する住民税は、「個人住民税」と呼ばれ、一般的には1月1日時点で住民登録のある市区町村(都道府県)に納めます。

個人住民税では、前年の1月1日〜12月31日の間に得た所得をもとに、納税額を決定します。わかりやすく例えると、令和7年の個人住民税の金額は、令和6年中の所得額をもとに算出されるのです。

個人住民税と混同されやすいものに「所得税」がありますが、所得税は所得を得たその年(現年)に課税される点や、国に納める税金(国税)であることから、住民税とは異なる税金です。

なお、個人住民税については、市区町村に納めるだけで、都道府県への納税も完了します。これは、市区町村の役場が、一緒に徴収した都道府県民税を都道府県に納めてくれる仕組みになっているからです。

また、法人が負担する住民税は、「法人住民税」と呼ばれ、事務所等を有する市区町村と都道府県に対して納めます。法人住民税は、資本金の金額や従業員の人数、法人税額をもとに算出し、道府県民税分と市町村民税分に分けます。そして、道府県民税分は、道府県税事務所へ、市町村民税分は、市区町村役場に納税することで手続きが完了するのです。

ただし、東京都23区内にある法人の場合は、特例として、都道府県民税分と市町村民税分をまとめて都税事務所に納付します。このように、自治体によって納付等の手続きが異なる点には注意が必要です。

住民税の計算方法(個人住民税)

個人住民税は、前年の所得に応じて課せられる「所得割」と、一定所得を上回る人に対して一律に課せられる「均等割」で構成されています。

個人住民税=所得割+均等割

所得割の金額は、以下の5ステップで計算できます。

【所得割の計算方法】

①総所得金額を算出する【計算式】
総所得金額=1年間の総収入-必要経費等(-損失等の繰越控除)
・退職所得などの分離課税分は除いて計算
・必要経費等とは、給与所得控除や公的年金等控除、事業で必要な経費などを指す。
②所得控除額を計算する所得控除とは、納税者の実情に合わせて、所得金額から一定額を差し引くことが認められているもののこと。住民税の所得控除は、以下の14種類がある。
【住民税の所得控除一覧】
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、寡婦控除、ひとり親控除、障害者控除、勤労学生控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、雑損控除
③課税所得額を計算する【計算式】
課税所得額=総所得金額-所得控除額の合計額
④課税所得額に税率を掛けて所得割を算出【計算式】
所得割=課税所得額×税率10%※
※一般的には、うち6%は市町村民税分、4%は道府県民税分に該当
⑤所得割から税額控除を引く税額控除とは、算出された税金額から一定額を差し引くことが認められるもののこと。住民税の税額控除には、以下の6種類がある。
【住民税の税額控除一覧】
配当控除、外国税額控除、寄附金税額控除、調整控除、配当割額及び株式譲渡所得割額の控除、住宅ローン控除

次に、均等割では、所得金額の大小に関係なく、以下の金額を負担します。(生活保護受給者など一定の要件を満たす場合は非課税となる。)

【均等割の負担額】

市町村民税3,000円
道府県民税1,000円

※令和6年からは国税である森林環境税1,000円も一緒に徴収
参考:総務省「個人住民税

最後に、「所得割」と「均等割」の金額を合計すれば、個人住民税の納税額が確定します。

住民税の源泉徴収と納付

個人住民税の納付方法は、普通徴収と特別徴収の2種類に分けられます。普通徴収と特別徴収では、納期限や納付回数に、以下の違いがあります。

納付回数 納期限
(休日のときは翌営業日)
普通徴収
(本人が直接納付)
4回に分けて納付 第1期 6月末
第2期 8月末
第3期 10月末
第4期 翌年1月末
特別徴収
(会社が従業員の代わりに納付)
12回に分けて納付 第1期 7月10日
~第12期 6月10日
※毎月10日が納期

会社の経理担当者が行うのが、「特別徴収」の事務処理です。特別徴収となっていますが、原則として特別徴収の方法による徴収が必要です。特別徴収については、以下の流れで納税額の決定や納付などが行われます。

【特別徴収の事務処理の流れ】

①給与支払報告書の提出
(会社の事務)
年末調整終了後、アルバイトなどを含む従業員について、給与支払報告書(前年の給与支払額等を報告するための書類)を作成する。
提出先は、1月1日に従業員が居住している市区町村で、1月31日までに提出が必要。
(例:令和7年1月1日に京都市在住の従業員がいる場合→令和7年1月31日までに京都市役所の税務部署へ提出)
②住民税の金額を決定
(市区町村の事務)
提出された給与支払報告に基づいて税金額を算出
③特別徴収税額決定通知書等の発送
(市区町村の事務)
5月中旬ごろに、税額等が記載された「特別徴収税額決定通知書」や、天引き分を納付するための納入書等が会社宛てに発送される。特別徴収税額決定通知書は、届き次第、本人に交付する。
④特別徴収の天引き
(会社の事務)
6月分の給与から、特別徴収税額決定通知書に記載された税金額を毎月天引きする。天引きした税金は、翌月10日までに納める。
(例:令和7年6月分給与から天引きした住民税→令和7年7月10日までに納付)

一方、法人住民税は、個人住民税とは違って、法人自らが納税額を申告しなければなりません。申告・納付の期限は、事業年度終了の翌日から2ヶ月以内のため、スムーズな対応が求められます。

法人住民税の計算方法

法人住民税は、「法人税割」と「均等割」の2種類から構成されています。

法人住民税=法人税割+均等割

個人の場合、確定申告や年末調整で住民税が計算されます。しかし、法人の場合は、法人自らが申告と納付をする必要があるため、注意しましょう。

「法人税割」は、国に納める法人税額に以下の税率を掛けて算出します。

【法人税割の計算方法】

都道府県の法人税割都道府県の法人税割=法人税額×1.0%
市町村の法人税割市町村の法人税割=法人税額×6.0%

※ただし、東京23区の場合は、法人税額に7.0%を乗じて法人税割を計算
※市町村などによって適用税率が異なる場合がある

法人住民税の法人税割は、先に法人税額(国税)を算出する必要があるので、注意が必要です。

また、均等割の金額は、資本金の金額と従業員数に応じて算出するため、決算が赤字であっても、納税義務が生じます。資本金額などに応じた負担額は、以下の通りです。

【均等割の金額】

資本金等の額 都道府県民税均等割 市町村民税均等割
従事者数50人超
市町村民税均等割
従事者数50人以下
1千万円以下 2万円 12万円 5万円
1千万円超1億円以下 5万円 15万円 13万円
1億円超10億円以下 13万円 40万円 16万円
10億円超50億円以下 54万円 175万円 41万円
50億円超 80万円 300万円 41万円

引用元:総務省「法人住民税

例えば、資本金額が500万円で従業員数が20人の法人の場合、均等割の負担額は7万円(都道府県分2万円+市町村分5万円)になります。ただし、都道府県民税の均等割については、各都道府県で金額を自由に設定できるため、表の金額とは異なる場合があります。
詳細な金額を知りたい場合は、各自治体のホームページなどを参考にしましょう。

住民税の控除と軽減措置

所得税と同様に、個人住民税の計算でも、所得や税額から一定額を差し引くことができる「控除」があります。所得控除の内容は所得税と同じですが、控除額が異なることがあるため注意しましょう。

【所得控除(所得金額から差し引くもの)】

種類 適用される人 控除額
基礎控除 年間の合計所得が2,400万円以下の人 最高43万円
配偶者控除 年間合計所得が1,000万円以下でかつ、生計を一にする配偶者の年間合計所得が48万円以下の人 最高33万円 (配偶者が70歳以上→最高38万円)
配偶者特別控除 年間合計所得が1,000万円以下でかつ、生計を一にする配偶者の年間合計所得が48万円超133万円以下の人 最高33万円
扶養控除 生計を一にする扶養親族(16歳以上)の年間合計所得が48万円以下の人 最高45万円 (扶養親族の年齢によって異なる)
寡婦控除 配偶者との死別・離婚後、婚姻をしておらず、合計所得が500万円以下の人 26万円
ひとり親控除 婚姻歴に関わらず、合計所得が500万円以下で、生計を一にする子がいる人 30万円
障害者控除 障害者手帳などを有している人や、障害者を扶養している人 最高53万円 (本人・同居親族などで異なる)
勤労学生控除 年間所得が75万円以下(給与所得は10万円以下)になる学生 年間所得が75万円以下(給与所得は10万円以下)になる学生
社会保険料控除 健康保険料や厚生年金保険料などの支払いがある人 支払った金額の全額
生命保険料控除 生命保険や個人年金の支払いがある人 7万円が上限
地震保険料控除 地震保険や損害保険などの支払いがある人 2.5万円が上限
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済や確定拠出年金などの支払いがある人 支払った金額の全額
医療費控除 自分や生計を一にする親族のために支払った医療費がある人 200万円が上限
雑損控除 災害や盗難などによる損害を受けた人 一定の計算によって算出

また、これらの他にも、税金額から控除する「税額控除」や、給与収入から一定額を控除する「給与所得控除」があります。控除の適用を漏らすと、税金の負担が増えてしまうため、控除の種類や適用できる条件などは把握しておきましょう。

住民税の計算ミスを防ぐためのチェックポイント

経理担当者が住民税の計算でミスを起こしやすいのが、以下2つのシチュエーションです。

  • 入社や退社時の手続き
  • 給与支払報告書への記載

クライアントに説明するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。

入社時
☐ 本人に前職の有無を確認
☐ 受け取った「給与所得者異動届出書」を転職月の翌月10日までに市区町村に提出

退社時
☐ 転職先の有無を確認
☐ 転職先がある→必要事項を記載した「給与所得者異動届出書」を本人に交付
☐ 転職先なしで退職が1月~4月→最終給与からの一括徴収
☐ 転職先なしで退職が5月~12月→「普通徴収」か「一括徴収」にするか本人に聞く
☐ 「給与所得者異動届出書」を退職月の翌月10日までに市区町村に提出

給与支払報告書(総括表)の作成
☐ 記載ミスが起こらないよう、注意して転記
☐ 控除額を正しく計算する(所得税の控除額と住民税の控除額は違うので注意)
☐ 扶養家族などの情報に漏れがないよう注意

前職を退職したときに、住民税が全額天引されている場合や、本人が普通徴収を希望する場合は、来年度の住民税の通知が届くまでは特別徴収は不要です。

しかし、前職の退職後に支払う住民税が残っており、転職後も特別徴収を希望するときは、特別徴収への切り替え手続きをしなければなりません。特別徴収を希望する場合、本人は前職から「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」をもらっているはずなので、受け取って記載し、住民税を課税している役場に提出します。

また、退職時は、転職先が決まっているかどうかで対応が変わります。転職先がある場合は、必要事項を記載した「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を退職者に交付し、退職者が転職先に提出することで、特別徴収は継続されます。

転職先が決まっていない場合は、上記リストの通り、退職する時期で対応を変える必要があるので注意が必要です。そして、住民税の税額決定の基礎となる「給与支払報告書(総括表)」の記載でミスが生じると、正しい税額で請求されない恐れがあるため、最新の注意を払いながら作成しましょう。

住民税計算における注意点と企業の義務

年末調整終了後に作成する「給与支払報告書(総括表)」は、市町村が個人の税金を計算する上で必要な資料です。そのため、正確な情報の記載や事務処理が求められます。

【住民税計算の注意点】

  • 記入時は従業員に配布した年末調整関係の書類を参考にする
  • 住民税と所得税で控除の金額が違うことを知っておく
  • 従業員の1月1日時点の住所を把握しておく
  • 翌年1月31日までに該当の市町村に提出する
  • 役職に限らず退職者についても提出する

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの年末調整で配布した書類には、家族の扶養状況や、生命保険料控除といった参考情報が記載されています。これらの書類を参考にしながら作成すると記載漏れが防げるでしょう。

住民税と所得税では、控除金額に違いがあるので計算間違いにも注意が必要です。代表的な控除では、「基礎控除」が挙げられます。住民税の基礎控除は43万円で、所得税の基礎控除は48万円です。控除額が異なるものは、他にもあります。

また住民税における企業の義務は以下が挙げられます。

【企業の義務】

  • 給与支払報告書を提出する
  • 住民税を特別徴収による徴収する
  • 徴収した住民税は翌月10日までに納付する

作成した給与支払報告書(総括表)は、従業員が1月1日に居住する市町村へ、1月31日までに提出します。例えば、1月1日時点で京都市と広島市に住む2人の従業員がいる場合、京都市と広島市にそれぞれ提出しなければなりません。

退職者や、パートタイマー従業員などについても、給与支払報告書の提出が必要です。給与支払報告書の提出は、企業の義務です。提出をしなかった場合、事業者に対して1年以下の懲役や、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

前年中に給与を支払った事実があるなら、役職や在職の有無を問わず、給与支払報告書(総括表)の提出が必須なので注意しましょう。ただし、退職者で年間の給与支払総額が30万円以下であれば、例外的に給与支払報告書の提出が免除されます。

まとめ

住民税には、個人で納める「個人住民税」と、法人が納める「法人住民税」があります。特に、個人住民税の特別徴収(給与からの天引き)や、給与支払報告書の作成は、煩雑でわかりづらいのも事実です。

特別徴収の納付や、届出の提出には期限があります。スムーズに対応するためにも、事務の流れや基本知識、注意点などは押さえておきましょう。

また、住民税の計算や、特別徴収の切り替え手続きでは、一般的な対応ではなく、個別対応が必要になるケースも多くあります。分からないことがあれば、自治体の住民税担当者に問い合わせたり、助言をもらいながら適切に対応しましょう。


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