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現在、人手不足による倒産が急増しており、帝国データバンクによると2024年の累計では、従業員の退職や採用難、人件費高騰を原因とする人手不足倒産は342件となっています。前年比で1.3倍増加し、2013年以降最多であり、2年連続で大幅に増加しています。全体のうち、建設業と物流業が40%を占め、その他、飲食業、美容室などの美容業、労働者派遣業、警備業の倒産も急増しています。
東京商工リサーチによると、2024年度(4-2月)の人手不足による倒産は過去最多の283件の前年同期比88.6%増となっており、産業別では通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などのサービス業が前年同期比で68.6%増の86件となり、過去最多となっています。
厚生労働省における令和6年上半期雇用動向調査結果の概要の未充足求人の状況によると、産業別の未充足求人数は、卸売業・小売業が270.6千人で最も多く、次に医療・福祉が269.5千人となっています。欠員率では、建設業が5.4%と最も高く、次に鉱業・採石業・砂利採取業が4.6%、宿泊業・飲食サービス業は4.4%となっています。
人手不足で企業が倒産する原因は、人件費高騰、従業員の退職、求人難によるものとなります。企業規模の観点では、比較的資力のある大・中規模の企業は労働条件が良く、労働環境が整っているため、人が集まりやすいです。
一方で小規模企業は労働条件を良くし、労働環境を整備する余裕がないため、募集をかけても人が集まりにくく、人手不足に陥りやすくなります。業種別の観点では、物流、建設、介護、飲食サービス業などの労働集約型産業はマンパワーが必要な業態であり、長時間労働で離職率が高く、他の業種と比べると人手不足に陥りやすい傾向にあります。
人手不足倒産を防ぐには、採用戦略を練り、法令を遵守し、働きやすくなるよう労働環境を整えることが必要となります。
募集をかけても人が集まらないのは、求人媒体が原因と考え、求人媒体を変えようとしますが、それではあまり意味がありません。募集ターゲットが明確ならそのターゲット層が応募したくなるように募集内容を充実させるなどして、効果的な採用活動を行うことが重要です。
比較的若い労働力が必要な建設、物流、飲食、介護事業においては、外国人を採用する、または人材マッチングサービスを利用するなどして、労働力の確保を図ると良いでしょう。知人を紹介して採用するリファラル採用は人材の定着率が高くなる傾向があり、検討すべき採用方法の一つといえます。
労働・社会保険の諸法令をはじめとした法令を遵守し、ハラスメントが起きないような職場づくりをします。柔軟な働き方が求められている昨今では、変形労働時間制やフレックスタイム制、時差出勤による働き方の導入、さらにテレワーク環境を整えることが必要不可欠です。
柔軟な働き方の導入、働き方のルール変更を社内で行うことが難しい場合は、社会保険労務士など外部の専門家に相談することも検討ください。
人手不足により、一人で複数の仕事を兼任し、残業時間は多く、休暇は取得しにくくなり、結果として、従業員が離職してしまいます。その状況下で、従業員を採用しても状況が変わらないため、採用した従業員が離職してしまうという悪循環になります。
人手不足を回避するには、人材の定着を図り、離職者を減らすこと、また、従業員を教育し、従業員の能力を向上させ、業務能率をあげることが人材不足を回避する上では重要です。機械やシステムを導入して、一部の業務を自動化することで人手不足が一定程度緩和されます。業務を機械やシステムにより自動化するには、業務の棚卸作業が必須です。業務の棚卸により、自動化できるものが明確になり、また、アウトソースできるものも明確になります。
人手不足解消に役立つ助成金がありますので、紹介します。
業務改善助成金は、中小企業に対して、生産性を向上させる設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。
業務改善助成金について
人材を教育するための助成金である人材開発支援助成金は現在6つコースに分かれており、そのうちの一つである人材育成支援コースは、職務に関連した10時間以上の訓練やOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練等を実施することで、賃金助成と教育訓練に係る経費助成を受けることができます。
人材開発支援助成金について
両立支援等助成金は、複数のコースに分かれ、働き続けながら育児・介護を行う従業員の仕事と育児・介護等の両立や雇用の継続を支援する労働環境の整備に取り組む事業主に対して助成されます。
両立支援等助成金について
65歳超雇用推進助成金は3つのコースに分かれ、そのうちの65歳超継続雇用促進コースは、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した場合に助成されます。
65歳超雇用推進助成金について
人手不足に陥らないためのポイントは次のとおりです。
業務の棚卸により、機械やシステムで自動化できるものを洗い出し、アウトソースできるものはアウトソースします。
フレックスタイム制やテレワークを導入し、さらにDX化を図り、柔軟な働き方ができるよう労働環境を整備します。
労働・社会保険の諸法令をはじめとした法令を遵守し、ハラスメントが起きないような職場づくりをします。
従業員の教育・研修により、社員の質を高め、業務能率や生産性を向上させます。
業務効率化を図るための機器を導入するなら、業務改善助成金、社員教育を行うなら人材開発支援助成金を使うといった助成金・補助金の活用をします。
会社と求職者が気軽に話すことのでき、人が多く集まる採用イベント、またはマッチングイベントを利用し、人材の確保を図ります。
会社HPやSNS、動画等で自社の良さを宣伝・アピールをします。
従業員満足度やワークエンゲージメントを高めることで従業員の士気が上がり、人材の定着に繋がります。
人手不足課題を乗り越えた企業の取組事例を紹介します。
地方にある従業員数は50名ほどの建設業の事例です。従業員の平均年齢が53歳で、建設業従事者の全国平均(44.2歳)に比べると高めでした。請負⾦額が⼀定額以上の現場には、有資格者が必要であるため、有資格者は即戦力となりますが、そのような人材に巡り合う機会は少ないという課題を抱えていました。
課題対応の取組として、年間休日数を増加させたことにより、従業員のプライベート時間が増え、従業員満足度があがりました。また、作業日が減ったことで、業務効率を意識するようになり、結果として、生産性があがりました。インターン生を受け入れ、建設業を知ってもらう機会を作るといった啓蒙・啓発活動を行いました。採用イベントに積極的に参加したことにより、有資格者であり、かつ業界経験のある者の採用に繋がりました。
参考:中小企業庁|中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集(令和4年度)94~96頁
地方にある従業員数は300名超の物流業の事例です。労働集約型である物流業は、IT化機械化は進めてはいるものの、労働力の確保は必須でした。また、多くの従業員を指導し、まとめるリーダーシップのある人材、トラックやフォークリフトなどの運転免許を有するオペレーターの確保や育成が急務でした。
課題対応の取組として、女性や高齢者を積極的に採用し、女性や高齢者でも作業しやすい様にパワーアシストスーツや小型の運搬機器を導入し、身体的な負担の軽減を図りました。女性専用休憩スペースを確保し、全てのトイレをウォシュレット付きの洋式トイレにして、女性が働きやすい環境の整備を行いました。
その他、フォークリフト免許の取得のためのサポートを実施し、能力とやる気のある女性には営業所の管理を任せました。高齢者にあっては、優秀な人材が定年年齢を超えても継続して働けるように就業規則の改定を行いました。それらの取組の結果、安定した人材の確保が可能となり、女性社員にあってはモチベーションが向上しました。
参考:経済産業省|中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集(平成29年)63頁
地方にある従業員数は80名ほどの石油製品の卸・小売販売を行う企業の事例です。課題として、以前は地域や縁故者の採用が多く、労働力人口が減少した昨今、採用の応募が少なくなり、採用ができなくなっていました。
課題対応の取組として、社内に年間を通じて採用業務を行う採用専任者を置き、採用の強化を図りました。高校生対象のインターンシップを導入し、自社の仕事を理解してもらい、志望を促しました。また、認知度を高めるために在籍する社員の出身校へ訪問するほか、SNSやCMを活用しました。その他、中途採用の年齢制限を撤廃し、未経験者や異業種からの受け入れを積極的に行ったほか、新人研修などを開始し、人材育成の強化をしました。結果として、認知度があがったことで応募者数は増え、さらに人材育成の強化をしたことにより職場定着に繋がりました。
参考:中小企業庁|中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集(令和2年度)14頁
大阪府にある従業員数は170名ほどの訪問介護・看護を中心とした介護福祉事業を行う企業の事例です。課題としては、介護利用者の増加に伴い、慢性的に人手不足が続いていました。採用イベントを活用していましたが、当時はコロナ禍であり、リアルの採用イベントの開催が少なくなっていました。また、採用してもミスマッチが生じていたため、採用方法を見直す必要がありました。
課題対応の取組として、就職氷河期世代を採用するにあたり、ミスマッチを防ぐため、現場で要求される接遇レベルや現場対応力などの選考基準を明確にし、マッチング会参加者に対し、現場の仕事の厳しさを伝え、双方納得の上で応募、面接を行いました。入社後は計画的な教育と研修を行い、IT化による情報共有と業務効率化を図りました。結果として、多様な人材確保に繋がり、組織力が強化され、未経験で採用された場合であっても早期に戦力化、人材の定着が図られました。
参考:中小企業庁|中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集(令和3年度)40~42頁
人手不足倒産のリスクを避けるための採用・労務管理について解説しました。人手不足による倒産の背景には、昨今の仕入価格の高騰、光熱費や原油価格の高騰などのコスト高が原因となっています。さらに、人件費高騰が追い打ちをかけるかたちとなり、複数の要因が絡み合い、結果として倒産に至っていると考えられます。人手不足倒産を回避するため、企業は他社取組事例を参考にし、自社にあった戦略を立て、対応していくことが求められます。
【筆者のご案内】
イデアル社会保険労務士事務所
社会保険労務士 上見知也
【参考】
帝国データバンク|人手不足倒産の動向調査(2024年)
東京商工リサーチ|2024年度の「人手不足」倒産 過去最多の283件 賃上げムードのなか、「人件費高騰」が106件に倍増
厚生労働省|令和6年上半期雇用動向調査結果の概要 未充足求人の状況
中小企業庁|中小企業・小規模事業者の人手不足への対応事例集を公表します
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