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フリーランスの労働者性とは?業務委託契約にまつわるリスクと回避策

公開日2025/04/16 更新日2025/04/15 ブックマーク数
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フリーランスの労働者性とは?

2024年に施行された「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」を受け、企業がフリーランスと関わる際の法的リスクへの注目度がさらに高まっています。

労働力の流動化や働き方の多様化が加速する中で、フリーランスや労働者の定義が企業の現場で誤解されたまま、関係が構築されているケースも少なくありません。

この記事では、「フリーランスの労働者性」をめぐる法的なポイントを整理しつつ、実際に起きたトラブルやその背景、企業が業務委託契約を結ぶ際に押さえるべき注意点について解説します。

アタックス・ヒューマン・コンサルティング

▼この記事を書いた人

アタックス・ヒューマン・コンサルティング
お問合せ先:mitoma@attax.co.jp

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労働者の定義 ~フリーランスは労働者か?~

「労働者」という言葉は日常的に使われる用語ですが、法律上の「労働者」は、労働関係諸法によって定義や対象範囲が異なります。典型的なものとして、労働基準法における労働者の定義があります。

同法第9条によれば、「使用される者で、労働の対償として賃金を支払われる者」とされています。 つまり、事業主の指揮命令に従って労務を提供し、その対価として賃金を得ていることが、法律上の「労働者」を判断する重要な基準です。

一方、フリーランスは一般的に法人に雇用されておらず、企業等と業務委託契約・請負契約などを締結して仕事を受けています。このような関係は、「独立した事業者」として取り扱われ、原則として労働基準法の適用を受けないとされています。

しかし、発注者との関係において、形としては業務委託契約であっても、実態として労働者のように指揮命令を受け、就労時間や場所が固定されている、あるいは報酬が時間ベースになっているといった場合には、「労働者性」が認定される可能性があります。

このように、フリーランスであってもその就労実態によっては法律上「労働者」と見なされ、企業側が労働基準法違反等の責任を問われることがあるのです。

労働者性

【出典:厚生労働省 労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集

フリーランスとの契約に関するトラブル事例

では、労働者性をめぐるトラブルの事例を見てみましょう。

1 アイドル事務所事件(大阪地裁令和5年4月21日判決)

アイドルグループの元メンバーが事務所から違約金を請求された事例です。大阪地裁は2023年、以下の要素から元メンバーの労働者性を肯定し、労基法16条違反で違約金の請求を無効と判断しました。

  • 仕事の依頼や業務従事の指示に対する諾否の自由はなかった
  • 芸能活動だけでなく、その準備にあたる活動、事務や雑務についても指揮監督されていた
  • 元メンバーの都合に関わらず勝手に予定が決まっていたほか、事務や雑務をするために時間的にも場所的にも拘束されることが多々あった
  • 事務所の指揮監督を受け、業務遂行の対償として月額固定給が支払われていた
  • ステージ衣装や機材、レッスン代などを元メンバーが負担することはなく、事業者性がなかった
  • 他社の業務に従事することが禁じられている、時間的にも事実上困難であるため、事務所への専属性が高い
  • 元メンバーに代わる他者が芸能活動(労務)を提供することが認められていなかった

2 横浜南労基署長事件(最高裁平成8年11月28日判決)

自らトラックを所有する運転手が請負契約で運送業務中に負傷し、労災保険給付を求めた事例です。最高裁の判決では、このトラック運転手の労働者性を否定し、以下の要素を判断根拠としました。

  • 請負元である会社の指示等は、一般の従業員と比較して範囲が狭く、内容も弱い
  • 時間的、場所的な拘束も一般の従業員と比較して弱い
  • 報酬は出来高払いであった
  • 業務用器材を所有するなど、業務遂行における危険を負担している
  • 運転手自ら従業員ではないと認識しており、専属的下請業者に近い側面がある

このように、契約書上の形式より、実態が重視されます。

フリーランス新法を踏まえた企業側の留意点

2024年11月、一般的に弱い立場に立たされがちなフリーランスの保護を目的に、フリーランス新法が施行されました。
この法律では、発注者側に以下のような義務と禁止行為が示されました。

  • 書面等による取引条件の明示
  • 報酬支払期日の設定、期日内の支払
  • 受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき等の禁止
  • 募集情報の的確表示
  • 育児介護等と業務の両立に対する配慮
  • ハラスメント対策に係る体制整備
  • 中途解除等の事前予告・理由開示

これらは、従来労働者保護の対象外とされていたフリーランスに対する、初めての包括的な法的保護です。違反した場合は指導勧告、さらには罰則の対象となる可能性もあります。フリーランス新法を踏まえ、発注事業者としての実務では以下に留意した対応がいっそう求められます。

  • 契約書面や報酬支払いサイクルなど、管理体制の見直し
  • フリーランスに対する相談窓口や苦情処理制度の整備
  • 契約の変更や終了を行う場合の透明性と正当性の記録

なお、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合、この法律は適用されません。フリーランスを「独立した事業者」として接し、その程度を超える場合は法律上の労働者として対応する必要があるということです。先述の通り、フリーランスと契約のあり方が「実態として」適切かどうかという視点が重要です。

最後に

人的資本経営が注目度を増す昨今、企業と個人との関係もパートナーシップ型へと移行しつつあります。労働力の流動化・働き方の多様化に伴い、フリーランスを活用することは生産体制の確保および強化の鍵となり得ますが、契約・労務に対する正しい理解と慎重な運用が不可欠です。

この記事で述べたように、「フリーランスだから労働者ではない」と一括りにすることできません。形式だけでなく、日々の業務運営において「独立した事業者」として自律的に働ける実態を整えることが、健全なパートナーシップの前提となります。

これを機に、ぜひフリーランスとの協働における法的視点と信頼関係の両立について、実務や運用を見直すきっかけとしていただければ幸いです。


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