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通勤中や業務中に従業員が交通事故に遭ったり、労災事故が発生してしまったりした場合、企業側は損害賠償責任をはじめとする様々な責任を負う可能性があります。被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士の視点から、企業側が負う責任とその対応策について解説します。
▼この記事を書いた人
小杉晴洋
弁護士法人小杉法律事務所
弁護士
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
公益財団法人日弁連交通事故相談センター研究研修委員会 青本編集部会所属。
交通事故をはじめとし、労災、学校事故など様々な不法行為に基づく損害賠償請求を専門としている。被害者側損害賠償請求専門弁護士として、数多くの判例誌掲載、執筆、講演などの実績がある。
交通事故や労災事故が発生した際には、速やかに被災従業員に医療機関の受診を勧めましょう。労災指定病院への受診を勧め、企業側からも病院に連絡しておくことで、被災従業員が初診から労災保険適用での療養を受けることが可能になります。
労災保険に関して、企業側は、以下の、労働者災害補償保険法施行規則第23条1項及び同条2項に定められている「事業主の助力等」を行う責任があります。
・労働者災害補償保険法施行規則第23条1項「保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。」
・同条2項「事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。」
また、通勤災害ではない業務中の交通事故の場合では、「事業主の助力等」の他に、以下のとおり労働安全衛生規則第97条に定められている「労働者死傷病報告」を行う必要があります。
・労働安全衛生規則第97条「事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒(以下「労働災害等」という。)により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。」
この労働者死傷病報告については、被害従業員が死亡した場合や休業が4日以上になる(見込みがある)場合は速やかに、それ以外は四半期ごとに提出する必要があります。 このように、労災保険への支給請求書の作成について被災従業員にサポートをしながら、労働者死傷病報告の作成も進めなくてはなりません。
加えて従業員の休業が発生するような場合には、休業期間の最初の3日間(いわゆる待期期間)については、労災保険からではなく企業側から、平均賃金の60%を被災従業員に支払う必要があります。
ところで、被害者側からみると、労災保険による給付のみでは発生した損害の全額を填補できないような場合があります。特に労災保険は慰謝料に相当するような、精神的苦痛に関する給付がないため、被害者側が損害賠償請求権を行使し、それにより企業側の賠償責任(民法415条の債務不履行責任:安全配慮義務違反が根拠となることが多いです。)が認められれば、労災保険による給付額を差し引いた金額を支払う責任が生じる場合があります。
企業側は通勤災害や業務災害が発生した場合には、被災従業員が適切な補償を受けられるよう様々な責任を負うことになります。
他方で、企業側としては労災事故の防止に十分な管理責任を果たしていたと考えられる場合や、当該災害の発生自体に疑義があるような場合には、企業側としては労災保険利用を拒否したい場合も考えられます。
とはいえ、労災事故の該当性や企業側の管理責任の遂行性、ひいては労災保険利用の適用可否を判断するのは労働基準監督署長であり企業ではありません。基本的には協力する、拒否する場合にはしっかりと書式を揃えて同規則第23条の2「事業主の意見申出」の手続を使うのが、企業側としてあるべき姿であるといえるでしょう。
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