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業務の効率化やコスト削減が求められる中、今注目されているのが「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」です。
BPRは単なるツール導入や部分的な改善ではなく、業務そのものの在り方を根本から見直す手法であり、多くの企業において、成果をあげています。
とはいえ、やみくもに改革を進めればよいわけではありません。
現場の理解や巻き込み、目的の明確化がなければ、逆に混乱を招くこともあります。
本記事では、税理士の視点から、BPRの基本的な考え方と、バックオフィス業務において実際に業務改革を進めるためのステップ、成功のポイントをわかりやすく解説します。
▼この記事を書いた人
宮川 大介
sankyodo税理士法人
CTO 税理士
2009年より都内税理士法人にて中小零細企業から上場会社の税務を担当。
連結納税システム導入コンサルティングでは述べ100社以上の導入に関わり、講師等を担当。
システムエンジニアの経験から、生産性向上を目的とした会計・税務システムの導入・業務改善コンサルティングを行う。
2019年sankyodo税理士法人にマネージャーとして入社
2021年sankyodo税理士法人のパートナーに就任
BPRとは、企業や組織の業務プロセスを根本的に見直し、抜本的な改革を行うことを指します。
単なる業務の効率化やツール導入とは異なり、「そもそもこの業務は必要か?」「もっと本質的なやり方はないか?」というゼロベースの視点で、業務の流れ・役割分担・情報の扱い方などを再設計していく手法です。
業務改善が現状からの積み上げでゴールを描くのに対して、BPRは理想とするゴールから逆算で現状の業務を見直すというアプローチの違いがあります。
たとえば、紙で決済の承認を取る稟議書の運用がある場合、承認を「電子化」するだけではBPRとは言えません。
BPRの考え方では「そもそも承認は誰が、どこまで必要か」「承認の目的は何か」といった本質的な問いを立て、業務そのものを再構築します。
BPRの目的は、コスト削減やスピード向上だけでなく、品質の改善や顧客満足度の向上など、多面的な価値創出です。
特に、環境の変化が激しいVUCAの現代において、従来のやり方を前提とせず、柔軟に業務を進化させていく姿勢が求められています。
また、BPRを理解する際に必要なのは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)との定義の違いを明確にすることです。
観点 | DX | BPR | BPO |
---|---|---|---|
対象範囲 | ビジネス全体・価値提供の変革 | 業務プロセスの根本改革 | 業務の外部委託 |
主体 | 自社主導 | 自社主導 | 外部委託先 |
技術の活用 | 中心的 | あくまで手段 | 活用されることもある |
ゴール | 競争力強化・ビジネスモデル刷新 | 効率化・品質改善 | コスト削減・業務集中 |
スコープ | 戦略・組織・文化を含む広範囲 | 業務プロセス中心 | 業務単位での外注 |
DXは「企業の未来を変える」、BPRは「業務を根本から見直す」、BPOは「業務を外に任せる」ことにつながる取り組みです。
これらをそれぞれを単体で考えるのではなく、BPRで業務を再構築し、BPOで非効率を手放し、DXで新たな価値を創出するという流れを理解することが大切です。
近年、企業を取り巻く環境が大きく変化している中でも会計・税務の分野においては、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入など、制度対応が高度化・複雑化しており、従来の業務プロセスでは対応が困難になりつつあります。
紙ベースの運用や人手に依存した確認作業では、法令を遵守しながら正確・迅速に処理する体制を維持することが難しく、業務そのものの再構築が急務となっています。
例えば、電子帳簿保存法への対応を考えた場合、単にスキャナ保存やタイムスタンプの導入を行い人手をかけて対応するだけでは対応が不十分です。
新たな法制度への対応を契機にして、どの帳票が対象か、いつ・誰が・どのように処理するかを業務レベルで見直し、帳票フロー・承認ルール・保管ポリシーを一貫性ある形に再設計する必要があります。
ここにこそ、BPRの本質である「ゼロベースで業務を再構築する」アプローチが必要です。
さらに、インボイス制度によって請求書の記載要件や仕入税額控除の要件も厳格化されました。
仕入先からの受領書類を正確に分類・管理し、消費税処理まで一貫して整合性を確保するためには、これまでの「人が目で確認して処理する」業務フローでは限界があります。
デジタル化を前提とした業務再設計によって、制度対応と業務効率化を両立させることが求められているのです。
税理士として現場に立つと、「制度に対応しながら、業務効率化も求められる」という二重の負担に悩む経理担当者の声をよく耳にします。
今こそ、制度対応を単なる「義務」として捉えるのではなく、BPRの好機=業務改革の起点と捉える発想の転換が重要です。
これにより、企業の成長を支える持続可能で変化に強い業務体制が実現できるのです。
業務改革を成功させるには、単に理想を語るだけではなく、現場に根ざした段階的なアプローチが重要です。
以下では、バックオフィス(経理・総務など)を対象としたBPRの進め方を、5つのステップで解説します。
最初のステップは、業務全体を「見える化」することです。
「誰が、いつ、何のために、どの手順で」業務を行っているかをフロー図や一覧で整理します。
特に経理業務では、請求書の受領から仕訳入力、支払処理、帳票保存までの一連のプロセスを丁寧に洗い出す必要があります。
チェックリスト例
☑二重チェックや承認の重複はないか
☑手作業・紙処理が残っている箇所はどこか
☑法令対応(電子帳簿保存・インボイス等)に適合しているか etc..
業務の全体像が見えたら、非効率や属人化、法制度リスクなどの課題を抽出します。
「なぜこの業務は遅いのか」「なぜエラーが発生するのか」といった原因を深掘りし、業務フローのどこにボトルネックがあるかを明確にします。
課題と改善例
☑「経費精算の承認が月末に集中して処理が遅延」→週次ルール+経費アプリ導入へ
☑「インボイスの保存・判定が属人化」→フォーマット統一+OCR活用へ etc..
次に、課題解決と制度対応を踏まえた「あるべき業務の流れ」を設計します。
この段階では、SaaSの導入や将来的なBPOも視野に入れながら、費用対効果を冷静に検討することが重要です。
業務プロセス設計のポイント
☑ITツールの導入は「コスト」ではなく「投資」として評価
☑属人業務の自動化・外注化でミスリスクと人件費を同時に低減
☑電子帳簿保存法対応=「紙から脱却する」チャンス
いきなり大きく変えるのではなく、「小さく始めて改善を繰り返す」ことが現場定着のコツです。
例えば、1部門だけで新しいワークフローを試行し、成果と課題を評価したうえで横展開する方法が有効です。
実践ポイント
☑初期は「100点の改革」ではなく「50点でも回るプロセス」を目指す
☑ツール導入だけで終わらせず、運用ルールやマニュアルも整備
☑利用者の声を拾い上げ、改善を継続
BPRの本質は「一度変えて終わり」ではなく、定着と継続改善の仕組みづくりにあります。
KPI(業務時間、エラー率、コスト削減額など)を設定し、定期的に効果を評価しながら、必要に応じてプロセスを再設計します。
KPI例
☑月次処理日数の短縮(10日 → 5日)
☑紙書類の削減率(前年比▲80%)
☑インボイス保存の誤り件数(0件化)
BPRに取り組むことには多くのメリットがありますが、同時に注意すべきデメリットも存在します。
まず最大のメリットは、業務の可視化と標準化が進むことで、属人化から脱却できる点です。
これは、会計や経理業務で特定の担当者に依存していた状態から、組織全体での共有・運用が可能になるという意味で、特に中小企業や成長企業にとって大きな価値があります。
また、業務フローが再設計されることで、入力や処理ミスの削減、作業時間の短縮といった直接的な効果が期待でき、制度対応(インボイス・電子帳簿保存法など)の効率的な実装にもつながります。
さらに、BPRを通じてデータ処理の整備が進むと、経営判断に使えるリアルタイムな数値が可視化されるようになることも重要な利点です。
これにより、財務・税務の観点からも、タイムリーな意思決定が可能になります。
一方、デメリットとしては、現場の抵抗感や改革に伴う一時的な混乱があげられます。
特に、業務をゼロベースで見直す際には、従来の慣習や個人の仕事のやり方が大きく変わるため、丁寧な説明と段階的な実行が不可欠です。
また、ITツール導入などには一定のコストがかかるため、費用対効果の見極めも重要な視点です。
安易にシステム導入だけを進めると、期待する成果が得られず、逆に混乱を招くリスクもあります。
ある企業では、オンプレミス型のシステムで行っていた会計処理と給与計算を、クラウドERPの導入を行うことで、作業時間を30日短縮し、月次決算の早期化に成功しました。
この例では導入後のシステムのランニングコストは1万円もかからず、導入はわずか2ヶ月で従来の方法からの切り替えを行っています。
書類がすべて揃ってからでないと行えなかった経理業務は、業務のクラウド化によって取引の発生段階から仕訳まで自動連係し、経費精算や給与計算などのワークフローを導入することで、紙の処理では発生していた手続きや二重転記を排除することが可能となっています。
【クラウド会計による改善効果】
【クラウド給与による改善効果】
結果として、経営側はタイムリーに経営数値を把握することが可能となり、BPRによる改善効果は非常に大きなものとなりました。
BPRを成功に導くには、単に新しいツールを導入したり、業務フローを整えるだけでは不十分です。
むしろ、人・組織・目的を含めた“全体の最適化”を設計することがカギとなります。
たとえば、仕訳入力の自動化を進めたとしても、その前後の請求書の処理や承認フローが従来通り属人的・紙ベースのままでは、全体としての効率化にはつながりません。
BPRとは、特定業務だけの改善にとどまらず、業務全体の流れを俯瞰して最適化する発想が必要なのです。
また、業務改革は「やればいい」というものではなく、「なぜその業務を変えるのか?」「誰の負担を減らすのか?」「どんな効果を得たいのか?」といった目的の明確化が極めて重要です。
プロジェクトを進めるうちに、ツール選定や手段が目的化してしまうケースも散見されますが、本来の狙いは“業務の質と生産性の向上”です。
導入・変更のたびにこの目的に立ち返る姿勢が求められます。
さらに忘れてはならないのが、“人”の変化です。
いくら優れたシステムやルールが整っても、それを実際に使う現場が理解・納得していなければ定着しません。
運用ルールの明文化、担当者の研修、トラブル対応の仕組み作りなど、地道な準備とフォロー体制が不可欠です。
とはいえ、現場だけでこれらを一貫して設計・実行するのは簡単ではありません。
だからこそ、バックオフィス業務に精通した税理士や業務改善コンサルタントなど、外部の専門家を巻き込むことで、客観的かつ中立的な視点が加わり、改革の推進力が大きく高まります。
特に税理士は、業務だけでなく制度や内部統制の観点からも助言できる立場にあり、プロジェクトの羅針盤として大きな役割を果たすことができます。
BPRは単なる「業務のやり方を変える」ことではなく、業務の“あり方”そのものを問い直すプロセスです。
だからこそ、全体を俯瞰し、人・仕組み・目的を結びつける設計力と、現場と経営の橋渡しをする外部支援者の存在が、成功の決め手となるのです。
制度対応を受け身で済ませるか、改革のチャンスと捉えるかで、企業の成長力に大きな差が生まれます。
BPRは一度きりの施策ではなく、「変化に強い企業体質」をつくる投資なのです。
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