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2017年、過去最高額を更新した大卒者の初任給。前年の2016年に比べて1.3%増、2,700円アップして20万6,100円になったことが厚生労働省の賃金構造基本統計調査で明らかになりました。翌2018年にはさらに0.42%増の20万6,333円で、初任給はわずかながら現在も増え続けています。
初任給はその年の経済情勢や景気状況、政治や業界の動向など、時代を反映して来ました。社会人になって初めて、自分で働いて稼いだお金を受け取る初任給には、ライフイベントでありつつ、経済的な指標の一つとして重視されています。
今回は、年代別と学歴別、性別の3つのポイントから新卒の初任給の移り変わりを見ていきましょう。
1976年から2018年までの新規学卒者初任給の推移を確認すると、時代の持つ経済情勢の大きな変化に影響を受けていることがわかります。
数字で見ていくと、1970年代のオイルショックでさえ初任給が下がることはなく、バブル崩壊までなんと大卒者の初任給は年平均5%もの高い割合で伸び続けていました。
男性、女性に関わらず、この約40年で初任給の変化に大きな転換点があったのは、1990年代前半です。それまでずっと右肩上がりでアップし続けていた初任給の金額の伸び率が停滞して1990年代後半以降、横ばい傾向が20年近く続きました。
これは明らかにバブル経済の崩壊による、日本経済の落ち込みを反映したものです。このバブル崩壊後の初任給の変化には学歴や性別は関係なく、高校卒も高専や短大卒、大学卒まで伸び悩むようになりました。
とくに初任給の伸び率が一気に縮小してしまった2000年代前半は「就職氷河期」と呼ばれる戦後類を見ない就職難の時代です。求職者のうち2人に1人が職に就けないという異常な事態であり、企業はこぞってコスト削減や人員整理という名の下、リストラを敢行した時期でした。
1985年の男女雇用機会均等法、1999年の男女共同参画社会基本法を経た現代でも、初任給を男女別で見てみると、まだまだ開きが見られます。
2018年の初任給の金額は大学卒の場合、男性21.0万円、女性20.3万円(3.4%差)、高校卒の場合も男性16.7万円、女性16.2万円(3.0%差)と、今でも3%前後の違いがあります。
この数字はあくまで全体の平均値のため、企業規模や業界、都会と地方など、就職先の違いによってはさらに男女間の初任給格差は残っており、社会的課題の一つです。
景気と共に初任給の金額や伸び率はその時代の物価動向に大きく影響されています。物価動向を消費者物価指数から捉えて2018年と1976年の初任給を比較してみましょう。
大学卒の場合、2018年は男性21.0万円、女性20.3万円、1976年は男性15.8万円、女性14.7万円です。つまり42年間で男性の初任給は約25%増、女性は約28%増となっています。
また、高校卒の場合も2018年は男性16.7万円、女性16.2万円、1976年を見ると男性12.9万円、女性12.3万円です。計算すると男性で約23%、女性で約24%もそれぞれ底上げされています。
このうち、景気に大きく左右される物価動向においても、戦後、ぐんぐん上昇を続けたバブル期の1990年前後までアップ率が高かった初任給は、1990年代から横ばいまたはゆるやかな上昇率に変わり、2000年代以降は微増レベルにとどまっているのも初任給の歴史を考える上で大きなポイントだといえるでしょう。
バブル崩壊後、デフレ経済によって不景気が蔓延したため、消費者物価指数も高度経済成長期からバブル期のような上昇率は影を潜め、ほぼ横ばいとなりました。昇給が抑えられて、消費が伸び悩むなか、世界的に大きな衝撃を与えたのがリーマンショックです。2007年から2008年にかけて世界経済が一気に後退しました。そのあおりを受けた日本は「失われた10年」から「失われた20年」に突入したため、初任給も目立った上昇がなく、極めて微増傾向にとどまっています。
これまで見て来たように、初任給の金額の変化は、時代の経済や景気を色濃く反映して来ました。新社会人にとって大きなイベントである初任給で初めて親に自分の給与でプレゼントする、生計を立てるといった大人になる第一歩というイメージも未だに根強く社会に残っています。
その一方、今回参考にした1976年から2018年までのデータを見ても、約40年で大卒初任給は94,300円から20万6,333円と、2倍以上にも大きくなりました。
今後も大きな経済情勢の変化に応じて金額や伸び率に目立った特徴が見られると予想される初任給。ぜひ時代の経済感覚をつかむ意味でも、その動向をチェックしていきたいものです。
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