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”自己健康保持義務”を会社は社員にどこまで求められる?~療養専念義務とは~

公開日2025/07/26 更新日2025/07/25 ブックマーク数
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”自己健康保持義務”を会社は社員にどこまで求められる?~療養専念義務とは~

▼この記事を書いた人

杜若経営法律事務所

岸田鑑彦(きしだ あきひこ)
弁護士

使用者側労務専門弁護士として、訴訟、労働審判、労働委員会等あらゆる労働事件の使用者側代理人を務める。また、人事担当者等を対象とした研修、セミナー講師を多数務める。

自己健康保持義務とは少し異なりますが、労働者が疾病等により労務提供できなくなった場合に、療養に専念する義務のことを「療養専念義務」といいます。

疾病が私傷病による場合、労働者は、雇用契約に基づく労務提供義務を自己の都合によりできない状況、すなわち労務提供義務の不履行の状態になっています(有給休暇その他の法律上認められた休暇を取得するときは別です)。

このような状況において、会社が休職命令を発令するなどして、一定期間の療養を認めるようなケースでは、労働者においては、療養に専念することでなるべく早く回復して復帰することが求められます。したがって、労働者は、休職期間中に、疾病が悪化したり、回復に反するような行動をしないことが求められます。

しかし、会社側の対応として注意が必要なのは、メンタル疾患等の場合、日常生活を問題なく送れる日があったり、日常生活を問題なく送れるようにするためのリハビリをしていたりすることです。 外形的には仕事をしないで遊んでいるようにみえ、会社側が誤解してしまうケースがあります。

実際に私傷病休職中の行動について、療養専念義務に違反したかどうかが問題となった事案(マガジンハウス事件・東京地判平成20年3月10日)で裁判所は、「私傷病欠勤期間中に、オートバイで頻繁に外出していたこと、ゲームセンターや場外馬券売場に出かけていたこと、飲酒や会合への出席を行なっていたこと、宿泊を伴う旅行などをしていたことを療養専念義務に反する行為であると主張するが、うつ病や不安障害といった病気の性質上、健常人と同様の日常生活を送ることは不可能ではないばかりか、これが療養に資することもあると考えられていることは広く知られていることや、原告が、連日のように飲酒などを行ない、これが原告のうつ病や不安障害に影響を及ぼしたとまで認めるに足りる証拠もないことからすれば、原告の上記行動を特段問題視することはできないというほかない」と判断しており、療養中の行動については、それが療養に反するかどうかを医師の意見も聞きながら慎重に判断することが求められます。

* * *

自己健康保持義務の問題は、当該労働者の労務提供の状態が、本来予定されている正しい労務提供と言えるか、また業務遂行にどのような影響、支障を与えているかという観点から捉えることが重要です。

個別の私生活の行動を批判するのではなく、「あくまで私生活は自由であるが、結果として、労務提供に影響が出ているとなると会社としては困るし、そこは介入せざるを得ない」というスタンスで注意指導をしていくことが求められます。

記事提供元

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