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日本でも、のれんの非償却に向けた会計基準の見直しが現実味を帯びてきました。
IFRSや米国基準ではすでに非償却が採用されていますが、日本基準でも改正の要望がFASFに提出されています。
本記事では、その背景や実務上の影響、今後の動向について詳しく解説します。
▼この記事を書いた人
金森俊亮
大手監査法人で10年、会計監査及び会計アドバイザリーを経験後、東京都立川市で独立開業。
また、いぶき監査法人でもパートナーに就任。監査法人では農協や非営利系の法人への会計監査、会計アドバイザリーを実施。
研修講師、会計雑誌への寄稿も行っている。
2025年5月、日本経済新聞の一面に「のれん償却不要」という見出しが掲載され、大きな注目を集めました。
これは、企業のM&Aを活性化させ、特にスタートアップ支援を強化する目的で、のれんの償却ルールを見直すべきだという提言に基づいたものです。
この章では、日本におけるのれん非償却の検討状況や、実際に提出された要望の内容、背景となる経済的・制度的要因について解説します。
しかしながら、2025年現在、スタートアップへの投資が計画通りに進んでいるわけではなく、更なる施策が必要とされています。
2025年5月28日、内閣府の規制改革推進会議は「規制改革推進に関する答申」を公表しました。
答申の中に、スタートアップ・イノベーション促進という項目があり、その中で「のれんの会計処理のあり方について検討が必要」という記述があります。
経済同友会は、2025年5月30日にのれんの会計処理の見直しを求めるテーマ提案書をFASFに提出しました。
FASFに提出された要望は、以下の2つです。
①短期措置として、現状ではのれん償却費を営業費用としているが、これを営業外費用に変更すること
②短・中期的な措置として、のれんの定期償却を見直し、非償却とすること又は償却・非償却の選択を可能にすること
①に関しては、平成20年にM&Aの取得原価の配分(PPA Purchase Price Allocationの略)が義務化され、収益性の高い資産をのれんから除外する会計処理が定着した中で、のれんは識別不能な資産であり、営業活動への直接的な寄与が不明確であり、償却費を営業費用として扱うことは実態に合わないという意見から提案されている。
②に関しては、以下のように様々な理由があります。
1) IFRSと米国会計基準で非償却となっていて、2022年にのれんの償却に関して議論がされたが、非償却を継続するという結論になり、日本企業の国際的な競争力が劣る懸念があること。
2) 近年は成長セクターが無形資産型、知識集約型のビジネスモデルであり、巨大なのれんが計上されるケースが増えているが、のれんの経年劣化で減耗する有形資産のように捉えるのは実態と合わない。
3) 経済同友会が実施したアンケートでは、経営者の70%超がのれんの規則的償却がM&Aの検討の障害となり、約半数の経営者はのれんの規則的償却を考慮してM&Aを断念したと回答があった。
のれんの償却分、利益が下がるまたは赤字に転落することで、株式市場からネガティブに捉えられることが多い。
特にスタートアップは企業価値に対して、純資産の割合が小さいことが多く、多額ののれんが計上されるため、買収の対象としづらい。
いずれの提案も連結財務諸表に与える影響は非常に大きいものであり、慎重な検討が必要になると想定されます。
のれんの償却費分、営業利益が現状よりも多額に計上されることとなります。
ただし、総資産の額も増加することから、ROAといった効率性の指標は悪化することが想定されます。
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