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280年の歴史を次の世代につなぐために──“現場に入り込む情シス”が挑んだ老舗酒造の業務DX

公開日2025/09/25 更新日2025/09/24 ブックマーク数
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280年の歴史を次の世代につなぐために──“現場に入り込む情シス”が挑んだ老舗酒造の業務DX

白鶴酒造株式会社 勝部様、櫻井様

1743年(寛保3年)に創業し、280年を超える歴史を持つ白鶴酒造株式会社は、灘の地で日本酒文化を守り続けてきました。
しかしその伝統の裏には、老朽化したシステムや属人化した経理業務といった、次世代への引き継ぎが難しい課題が残されていました。

とくに経理では、取引先ごとに作り込まれたExcelで入金消込を行っており、月3万件・年間550時間もの作業負担が発生。
「伝統を守るだけでなく、次世代に引き継げる仕組みを」──そんな想いからDXとペーパーレス化を本格始動。「Victory-ONE」の導入を決断します。

今回は、情報システム室の勝部様・櫻井様に、導入の背景とプロセス、そして“老舗だからこそ挑んだDX”の軌跡を伺いました。

若手が引き継げない独自システム――業務効率化とDX推進が課題に

創業280年を超える白鶴酒造では、長年にわたり独自開発の基幹システムを運用してきました。
古い開発言語で構築されたオンプレミス環境は、保守や改修が困難で、業務フローも標準化されていない状態。
社内の担当者にしか分からないデータが残っており、新たに加わった社員や若手がスムーズに業務を引き継ぐのが難しいという実情がありました。

とくに入金消込の実務では、経理担当者が取引先ごとにExcelファイルを個別にカスタマイズし、請求金額と振込金額の差異を1件ずつ目視でチェックする運用が常態化。
消込が必要な明細数は月に3万件を超え、多い月では8万件に及ぶこともありました。
銀行から届く振込データを紙で出力し、それをExcelの帳票と突き合わせる作業は、手間と時間を要するものでした。

「請求金額と振込金額がぴったり合えば簡単なのですが、返品や単価ズレ、手数料控除などの理由で一致しないケースもあります。たとえば110万円の請求に対して、100万円の入金があった。未入金の10万円はExcelに記録しておいて、他の明細からその相当分を探していく感じです。」(勝部氏)

Victory-ONE導入前のフロー

Victory-ONE導入前のフロー

この作業には、経理部門10名のうち4名が毎月対応しており、1人あたり約50時間、年間にして550時間もの工数を費やしていました。
加えて、取引先の慣習や商流の違いに応じて、各担当がExcelの仕様を独自に作り込んでいたため、担当者以外には処理内容がわからない“ブラックボックス化”も問題となっていたのです。

「東京のお店はAさん、関西のお店はBさん、というように担当が分かれていて、誰かが急に休むと、他のメンバーでは処理ができないリスクもありました。」(櫻井氏)

こうした状況に対し、情報システム部門ではかねてから「このままでは持続不可能だ」という危機感を抱いていました。
現行システムは構築から長年の間に属人化が進み、独自の運用ルールが温存されたまま。若手がキャッチアップするには、あまりにハードルが高い──そんな懸念が顕在化しつつありました。

独自開発システムの限界を役員層にプレゼンし、他社の事例や業界のDX動向を共有するうちに、中期経営計画の中に「DX」や「ペーパーレス化」が掲げられるようになり、全社的な取り組みとして位置づけられました。
その後、2022年に策定された同社の中期経営計画には「年間550時間かかっている消込時間を40%削減する」と明記されました。

「最初は今ある仕組みをそのまま焼き直す案もあったのですが、それだと正直、DXといってもあまり意味がないなと。せっかく手を入れるなら、“業務”をもっと効率化する方向で考えました。」(勝部氏)

「中期経営計画の中でDXやペーパーレスというキーワードが上がっており、システムによる業務の標準化は必須のものとして考えていました。Victory-ONE は、AIで消込業務をやってくれるという機能が本当に魅力的で業務の標準化にピッタリでした。」(櫻井氏)

属人化が進んでいた入金消込業務において、「Victory-ONE」のAI機能による自動化機能は、まさに“次世代へ引き継いでいける業務基盤”を築き、業務を標準化していくための突破口となりました。
その達成に向けてVictory-ONEの導入が本格的に始動したのです。

情シスが経理の業務を体験──“理解できるまで手を動かす”導入姿勢が鍵に

Victory-ONEの導入にあたって、同社が重視したのは「実務とのズレがないか」を徹底的に検証することでした。
情シス主導のプロジェクトとはいえ、対象は経理部門の入金消込業務。そこで同社では、情シス担当者自らが消込作業を体験し、業務フローとシステム仕様の突き合わせを繰り返しました。

「まずは僕らが使い込まないと、経理を説得できないと思ったので、実際に何パターンもの消込作業を現行システムとVictory-ONEで操作し、試しました。どこで何が発生するかを理解したうえで、“ここはVictory-ONEで代替できます”と説明できるようにしたのです」(勝部氏)

とはいえ、社内には「今の仕組みで問題なく回っている」「今のフローのままにしてほしい」といった声も根強くあり、現行のExcelベースのやり方を変えることに対する不安の声も少なくありませんでした。

「現場からは“今動いているものをわざわざ変えたくない”という本音もありました。今までできていたことが、新システムでできなくなることだけは絶対に避けたかったので、“それはこうすれば対応できます”と、ひとつひとつ説明していきました。正直、折衝は大変でしたね」(櫻井氏)

互いに異なる立場から業務を見ているからこそ、導入プロセスには丁寧な調整が求められました。
情シスは「導入する側」で終わらず、現場の業務や課題を実地で理解し、粘り強く対応を重ねることで、少しずつ社内の理解と納得を得ていきました。

「Victory-ONEのUIはすごく直感的で、説明会も2回ほどで理解してもらえました。僕らが使い込んだからこそ、自信を持って経理に渡せたと思っています」(勝部氏)

現場に歩み寄り、実務のリアルを理解しようとする──。そんな“現場主義を貫いた情シスの姿勢”が、白鶴酒造の業務DXを一歩前へと動かす原動力となったのです。

Victory-ONEの導入で見えた効果──使いやすさと属人化の解消

2022年の4月に「Victory-ONE」の導入が決定となり、2023年の4月から本格的に稼働することとなりました。
本来はもっと早く稼働できたのですが、旧システムからの切り替えや新しい請求書システムの稼働待ちとなっていたのです。

Victory-ONE導入後のフロー

Victory-ONE導入後のフロー

「2023年の4月から6月は、旧システムと並行稼働しながら細かいところをすり合わせしていきました。導入には経理部門から3名、情報システム部門から5名が出て調整に当たりましたね。R&ACさんのサポートもすごくよかったです。最初から入ってもらっていた開発者はずっと相談に乗ってくれましたし、稼働後もよく声をかけてくれました。改修もすぐに対応してくれてスピーディーでよかったし、標準化に対しても多く提案をもらいました。」(櫻井氏)

「一番気を遣ったのは、旧システムからの残高移行です。旧システムで請求書を発行して、まだ入金のないものは旧システムで処理をしていましたが、キリがないので一部入金された請求データとしてVictory-ONEに渡しました。結局、残高を2回作って連携させるような形になり、その件数と旧システムの残高が合致しているかいちいちチェックしていったので、そこだけは大変でしたね。」(勝部氏)

「でもVictory-ONEの導入効果は絶大でしたよ。今までは手で入力していた消費税や振込手数料の差分が、パッと出てくるし、次回からはちゃんと覚えていてくれる。債権のまとめ機能もいいですね。複数の特約店に対して一括で消込処理ができる。しかも一度グルーピングしたら勝手に覚えてくれるから、これが一番便利かも(笑)。」(櫻井氏)

「Victory-ONE」の導入は、業務の可視化と属人化の解消に直結しました。従来は担当者しか把握できなかった顛末管理が共有化され、未入金も一覧で確認可能に。
結果として、誰でも入金消込に対応できる体制が整いました。

「従来は卸売業者や特約店ごとに、Excelファイルが膨大にありました。それぞれの特約店や二次店は癖があるので、それに対して別々のExcelを作っていたのです。今回アドオンした顛末管理の機能は、未入金になっている理由や月ズレ、単価間違いなどが一目でわかるようになりました。これで担当者が急遽お休みするとか、やむを得ない離職が発生した場合も消込作業に誰でも対応できます。」(勝部氏)

次なるDXへ──“本丸”はこれから、全社を見据えた変革へ

Victory-ONE導入後のフロー


Victory-ONEの導入により、経理部門の入金消込業務は大きく効率化され、業務の標準化と可視化も進みました。しかし、DXの取り組みはまだ道半ば。伝票処理などにはいまだに紙が残っており、さらなる改革が求められています。

「DX推進の達成度で言えば、まだ全体の20%くらいですね。基幹システムはすべて独自開発なので、そこに手を入れるにはかなりの時間が必要です。販売管理システムの導入も始まっていて、今後2年ほどかけて変えていく予定です。若い世代が使える環境を整えることが重要だと感じています」(勝部氏)

「社内のペーパーレス化も深刻な問題でした。当社は経費精算や請求書発行業務など、あらゆる手続きでとにかく紙が多い! コロナ禍をきっかけとして150くらいの業務をペーパーレス化しましたが、まだまだ足りない。DX化推進はペーパーレスへの肝ですから、これからもどんどん推進していきます。」(櫻井氏)

また、企業の改革には“変化への抵抗”という壁もあります。とくに経理業務は保守的になりがちな領域ですが、それでも各社が少人数での運用やトップダウンでの変革を実現している事例が増えてきているといいます。

「業界全体でもDXをもっと進めていかないといけない。実際、大企業の経理部門では、30人でやっていた業務を10人で回せるようになったという話も聞きます。酒造業界でも、経理が主導して改革を進めているケースも出てきています。そういう話を聞くと、うちも負けていられないなと思いますね」(勝部氏)

Victory-ONEの導入は、白鶴酒造にとってDXの入り口にすぎません。
これから先は、全社的な業務改革と業務継承を見据え、より大きな“本丸”へと踏み込んでいくフェーズに入ります。

まとめ──システムの刷新は「未来に引き継ぐ」ための投資

白鶴酒造がVictory-ONEを導入した背景には、古い独自開発システムの限界と、「このままでは業務を次世代に引き継げない」という危機感がありました。
長年積み重ねてきた運用を変えることには不安もありましたが、情シスが現場に入り込み、実務を深く理解したうえで導入を進めたことで、効果的なDXが実現しました。

Victory-ONEの導入により、属人化していたExcelベースの運用は標準化され、消込業務の工数も大幅に短縮。未入金の可視化や債権グルーピング機能、直感的なUIなども評価され、経理部門は“本来やるべき仕事”に集中できる環境を手に入れました。

しかし、これはあくまでスタート地点。基幹システム全体の刷新や精算業務のペーパーレス化、生産・販売管理の見直しなど、次のステップはすでに動き出しています。

伝統を守るとは、過去のやり方を大切に未来へ引き継ぐため、その時代に合わせた仕組みに進化させていくことでもあります。白鶴酒造の挑戦は、同じように古いシステムと向き合う企業にとって、大きなヒントを与えてくれるはずです。

Victory-ONE G5: https://www.r-ac.co.jp/victory-one/


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