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『限定正社員』とはどういう制度!?

公開日2019/07/11 更新日2019/07/12
『限定正社員』とはどういう制度!?

正社員と非正社員の処遇の違いからくる社員のモチベーション問題は、特に終身雇用制度の崩壊が社会的話題になった2008年のリーマンショック以降、人事の世界で悩ましい問題になっていました。そんな中、2012年に誕生した第二次安倍政権が打ち出した「アベノミクス」政策の1つが「多様な働き方」の実現でした。その結果、「限定正社員」と呼ばれる新しい雇用制度が提案され、次第に浸透してゆきました。企業にとって、この制度はどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

限定正社員とは

限定正社員とは、勤務地、職種、勤務時間などの勤務形態を限定して働く正社員のこと。従来型の正社員(無期雇用社員)と非正社員(パート、アルバイトなどの有期雇用社員)の中間的な雇用制度とされています。勤務形態の変更がないので、子育て・介護などの事情で勤務形態を変更されたくない社員にとっては働きやすいといわれています。

「ジョブ型正社員」、「多様な正社員」とも呼ばれ、厚生労働省は次のように分類し、限定正社員制度の普及に努めています。

勤務地限定正社員

転勤エリアの限定、転居を伴う転勤がないか転勤が一切ない正社員(特に既婚女性社員にとっては働きやすい雇用形態といわれている)

職務限定正社員

担当する職務やその範囲が他の職務と明確に区別・限定されている正社員(専門職や技能職の場合は、その職業的特性から職務が限定されているので、専門・技能職に近い雇用形態と見られている)

勤務時間限定正社員

所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員

いわゆる正社員(従来型正社員)

勤務地、職務、勤務時間のいずれも限定がない正社員

正社員との違いに関して

社会通念上、正社員とは「無期雇用、直接雇用、フルタイム」で働く社員と広く認識されています。また、正社員は労働契約で定年までの長期雇用を保障される代償に、会社から配置転換や残業を命じられた場合はそれに従う義務があるとも認識されています。

対して限定正社員の場合、無期雇用は正社員と同じですが、勤務地、職務、勤務時間のいずれか(あるいは複数)を選んだ上で企業と労働契約を結び、昇給・昇進、退職・退職金規程、福利厚生などの処遇は法令的に正社員と同一であることが保障されています。

限定正社員制度は、社員のワークライフバランス実現と雇用の安定、企業の優秀な人材の確保などを同時に図る施策として、2013年に内閣府の「規制改革会議」の「雇用ワーキンググループ」を中心に論議され、限定正社員制度推進方針が決定された経緯があります。

したがって、雇用制度的には正社員と非正社員の中間的な位置づけながら、国の労働政策を強く反映した雇用制度といえるでしょう。

限定正社員のメリット

限定正社員制度の導入は、企業にとって下記のメリットがあるとされています。

即戦力となる人材の確保

従来の人材採用においては、人事担当者が自社に必要な「社員の適格性」を判断基準に応募者を選考し、採用後は研修やOJTで業務スキルや専門性を高める人材育成に努めてきました。このため、新卒・中途採用を問わず、その戦力化には一定の時間がかかりました。

一方、限定正社員制度を導入すれば転勤や異動のない専門職的な勤務形態になるので、最初から業務スキルや専門性の高い人材採用が容易になり、採用=即戦力が可能になります。結果的に人材育成コスト圧縮にも繋がります。

多様な人材の確保

高い業務スキルと勤労意欲がありながら、家庭の事情などにより制約の多い正社員雇用を避けている人材は少なくありません。一方、人材採用活動においては、母集団の形成が優秀な人材確保の前提条件になります。

この点で、限定正社員制度を導入して採用活動をすれば、正社員雇用を避けていた優秀で多様な人材も応募してくるので、自社が欲している人材の母集団形成が通常の求人より容易になり、優秀で多様な人材確保が容易になります。

採用コストをかけない優秀な人材の確保

従来の雇用形態は正社員と非正社員の2つしかなかったので、非正社員の正社員化には様々な阻害要因がありました。たとえば、正社員化を希望する非正社員を無条件で無期雇用労働契約に変更すると、人件費が一挙に膨張します。しかし、限定正社員制度を導入すれば、非正社員との労働契約を限定正社員の労働契約に変更でき、人件費膨張を抑制できます。さらに採用コストをかけない優秀な人材確保にも繋がります。

限定正社員のデメリット

限定正社員制度の導入はメリットがある反面、下記のデメリットもあるとされています。

解雇手続きは正社員同様の煩雑さが求められる

限定正社員制度を導入すると、限定勤務事項を除き正社員と同一の処遇をしなければなりません。したがって、限定正社員を何らかの理由で解雇する場合も、正社員同様な煩雑な解雇手続きが必要になります。すなわち、労働契約法16条は「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を濫用したものとして無効とする」と定めているからです。

労務管理が複雑化する

限定正社員制度を導入すると、大半の企業において正社員、限定正社員、パートタイマー・アルバイト等の非正社員と3種類の雇用制度が混在することになり、人事担当者は雇用制度ごとに異なる労務管理をしなければならなくなります。したがって労務管理が複雑化し、人事・労務担当者の負担が増加する可能性があります。

まとめ

限定正社員制度は企業と社員の双方にとってデメリットよりメリットの方が大きい制度といえます。しかし無計画に導入すると、デメリットの方が際立つのが避けられないでしょう。したがって導入の際には、自社のどの業務を限定正社員制度の対象にするのか、限定正社員向けの就業規則に何を盛り込むのかなど、制度の導入目的と運用の仕組みを明確化する必要があります。限定正社員向けの給与体系も導入目的に沿って策定する必要もあります。そうすることがデメリットの極小化とメリットの最大化を可能にし、制度導入効果を高める前提であることを、人事担当者は忘れてはならないでしょう。

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