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【税理士執筆】非居住者の年末調整は「原則不要」？管理部門が迷う判断基準と源泉徴収の落とし穴

公開日2025/12/05 更新日2025/12/04 ブックマーク数

近年、企業のグローバル化が進むにつれて、海外赴任者や海外出向者、あるいは海外で勤務する非居住者に対する給与計算や税務処理の対応機会が増えています。

特に、年末調整業務において、これらの「非居住者」に関する税務をどのように扱うべきか判断に迷う管理部門は少なくないのではないでしょうか。誤った判断は、源泉徴収税の過不足、未払い税金の発生、ひいては税務調査での指摘リスクにつながります。

本記事は、海外赴任者などの非居住者に関する年末調整実務を中心に、判断基準なども含めて解説します。

[ 目次 ]

シェルパ税理士法人
パートナー
公認会計士・税理士　MBA（国際経営学）
檜田和毅

有限責任監査法人トーマツを経て現職。一般的な法人税務に加えて、国際税務、M&A、IPOコンサルティングなどにも従事。上場準備会社のCFOなどとしてもIPOプロジェクトを担当し、実際の上場まで経験。上場会社や上場準備会社の監査役も複数就任。

「非居住者」とは？年末調整との関係を整理

非居住者の税務を理解する上で、まず「居住者」と「非居住者」の区分を正しく把握することが不可欠です。

居住者・非居住者の区分

日本の所得税法では、個人を以下の2種類に区分します。

居住者

日本国内に「住所」を有し、または現在まで引き続いて1年以上「居所」を有する個人を指します。
基本的に日本の税法で定められた全世界所得（国内・国外で得た全ての所得）に対して課税されます。

非居住者

居住者以外の個人を指します。
非居住者は、日本国内で得た所得（国内源泉所得）に対してのみ、日本の税法に基づき課税されます。

この「住所」の判定は、生活の本拠がどこにあるかという客観的な事実（家族の居住地、資産の所在地、職業など）に基づいて総合的に判断されるため、住民票などに記載の住所がどこかで判断されるわけではない点につき留意が必要です。

年末調整が必要かどうかを分ける基準

年末調整は、その年に支払った給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額と、本来納めるべき所得税額（年税額）との差額を精算する手続きです。

居住者

年末調整の対象となります（一部例外を除く）。

非居住者

海外赴任中の給与は国内源泉所得に該当しないため、原則として年末調整の対象外です。
ただし、非居住者である役員の役員報酬については一律20.42%（所得税及び復興特別所得税）の源泉徴収を行う必要があります。

海外赴任・海外出向で非居住者になる代表的なケース

企業から海外に派遣されるケースで、非居住者となるかどうかの判断は特に重要です。

一般的なケース

企業からの辞令に基づき、海外の支店や子会社へ長期（通常1年以上）にわたり赴任し、日本国内に住所や生活の拠点（家族も含む）を残さない場合、赴任開始日をもって非居住者となるのが一般的です。
赴任期間が1年を超えるかどうか未定の状態で海外赴任を開始した場合には、赴任期間が1年を超えることが明らかになった時点から非居住者となります。