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リストラハラスメント(リスハラ)とは?背景・事例・人事が知るべき防止策

公開日2025/12/18 更新日2025/12/17 ブックマーク数
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リストラハラスメント(リスハラ)とは?背景・事例・人事が知るべき防止策

退職勧奨が必要になる場面では、その伝え方や進め方にわずかな配慮不足があるだけで、社員に強い負担を与えたり、誤解を生んだりしやすくなります。

意図せず強い口調になったり、説明や記録が不足した状態で話を進めてしまうと、当事者には「リストラハラスメント(リスハラ)」と受け取られ、労働紛争や企業イメージの低下につながる恐れもあります。

本記事では、リスハラの基本、起こりやすい背景、典型的なパターン、違法性の判断軸、人事が押さえるべき防止策までを実務視点で整理します。
まずは、自社の退職勧奨プロセスを客観的に見直すところから始めてみましょう。

[ 目次 ]

リストラハラスメント(リスハラ)とは?

リストラハラスメントとは、リストラの対象となった従業員に対し、退職へ誘導することを目的にプレッシャーや不当な扱いを加える行為を指します。

具体的には、上司や周囲の同僚が本人に対して 業務上不合理な要求をしたり、唐突に役割を外して疎外する といった例が見られます。
また、パワハラやセクハラのような明確なハラスメントだけでなく、無視・陰口・情報共有の排除など、精神的に追い詰めるモラハラ的な働きかけが組み合わさることも特徴です。

このように、複数のハラスメントが複合的に現れやすい点が、リストラハラスメントの大きな問題点と言えます。

リストラハラスメントが起こる背景

リストラハラスメントが発生する背景には、法的リスクを避けたい企業側の事情と、退職プロセスを適切に運用できない組織体制の弱さが関係しています。

背景①:企業側がリスクを避けたいという事情

日本の労働法では、解雇の要件が厳しく、企業がリストラ対象者に辞めてもらいたい場合でも、正当な理由が認められなければ解雇が無効となる可能性があります。 その場合、企業は以下のような負担が発生する可能性があります。

・解雇が無効と判断され、社員を雇用し続けなければならない
・不就労期間分の賃金を支払う義務が発生する可能性がある

こうした事態を避けるため、対象者が自発的に退職を申し出る状況をつくろうとする圧力が現場にかかりやすくなります。

背景②:自主退職に見せかけるための体裁づくり

「自ら辞めた」という形にすれば、

・解雇トラブルを避けられる
・双方の合意退職として処理できる

といった企業側のメリットがあるため、退職勧奨が行き過ぎて嫌がらせに発展するケースが指摘されています。

自主退職を促すこと自体は法律違反ではありませんが、
その過程で心理的圧力・不当な扱い・職務の排除など、ハラスメント行為が混在する例が見られる点が問題です。

リストラハラスメントの事例

リストラの対象となった社員に対し、評価面談や日常の職場コミュニケーションの中で不適切な言動を繰り返すケースです。典型的には、人格否定につながる発言、威圧的な態度、過度な叱責などが含まれます。

例えば、

・「あなたは組織に必要ない」などの断定的な発言
・会議の場で過度に能力不足を強調する
・改善支援を行わないまま「もう無理だ」と告げる

といった行為は、安全配慮義務違反やパワーハラスメントに該当する可能性があります。こうした言動が繰り返されると、心理的なプレッシャーにより社員が正常な判断ができなくなり、事実上の退職強要につながるリスクが高まります。

過度に退職を提案する

退職勧奨そのものは違法ではありませんが、提案の回数・頻度・言い方が不適切な場合、リスハラに当たる可能性があります。
社員が明確に拒否の意思を示しているにもかかわらず、繰り返し同じ話題を持ち出すことは“自由意思の侵害”と見なされやすい行為です。

よくあるケースとしては、

・面談のたびに「退職したほうがあなたのため」と持ち出す
・上司複数名で囲み、同調圧力を与える
・「受け入れないと今後の評価は厳しい」などの示唆を与える

などがあります。退職勧奨を行う際は、記録化・面談頻度・言動の適正管理が必須であり、人事がプロセスを統制すべき領域です。

退職せざるを得ない状況を作り出す

直接的な退職強要ではなく、間接的に仕事環境を悪化させ、社員が自ら辞めざるを得ない状態に追い込むケースです。本人が選択したように見えても、実質的に会社が“意図的に退職へ誘導した”と判断される可能性があります。

具体的には以下のような状況が挙げられます。

・役割を大幅に縮小し、実質的な“追い出し部屋”に配置する
・過度に重い業務を割り当て、心身の負担を増大させる
・明らかに本人の適性とかけ離れた業務を継続的に与える
・必要な情報提供や指導を行わず、意図的に仕事を遂行できない状況をつくる

これらは、労働契約法上の「信義則違反」や「パワハラ」に該当し得る行為であり、労務リスクとして注意が必要です。

リストラハラスメントは違法なのか

リストラハラスメントは、単独の法律で直接規制されているわけではありません。しかし、退職勧奨の進め方が社員の自由意思を侵害した場合、その行為は複数の法律に抵触し得ます。つまり、「形式上は退職勧奨でも、実質的に強要とみなされれば違法」と判断される可能性が高いという点を押さえておく必要があります。

民事上の違法となるケース

まず、民事の観点では、不当な圧力や精神的苦痛を与えるような行為は不法行為(民法709条)に基づく損害賠償の対象になり得ます。

たとえば、退職を断った直後に机・業務・権限が急に取り上げられたり、社内で孤立させるような扱いを受けたりすると、社員は「働く権利を不当に侵害された」と主張できます。

実際に、退職勧奨を拒んだ翌日に席がなくなっていた、急激に業務から外された――といった例では、慰謝料請求が認められたケースも報告されています。

また、強引な退職勧奨によって提出された退職届は「自由意思によるものではない」と判断される可能性があり、退職そのものが無効になることも珍しくありません。

刑事上の責任が問われることも

さらに、言動が社会通念上の許容範囲を超えた場合は、刑法に触れる可能性もあります。 脅し文句を用いて退職を迫れば「脅迫罪」や「強要罪」、人格を否定するような発言を繰り返せば「名誉毀損罪」や「侮辱罪」が成立する余地があります。

暴力行為を伴えば、当然ながら暴行罪・傷害罪の対象となり、企業側の“退職勧奨の一環”という主張はほぼ通りません。

企業が特に注意すべきポイント

企業がリスクを抱えやすいのは、退職勧奨のプロセスを十分に記録せず曖昧なまま進めてしまう場合や、改善指導を経ずに突然退職を打診するケースです。
対象社員にメンタル面での配慮が求められる状況であったにもかかわらず、その点を軽視した進め方をすると、裁判では企業に不利な判断が下されやすくなります。

ポイント

✔ 退職勧奨は「受けるかどうかを社員が選べる」プロセスである
✔ 圧力・威圧・不当な扱いが加わると“強要”とみなされる
✔ 強要性が認められると民事・刑事の双方で違法の判断が下り得る

リストラハラスメントは、企業にとって「やり方次第でリスクが一気に高まる」領域です。適切な手続きと記録管理を徹底することが、最も重要な防御策になります。

人事が知るべきリストラハラスメント防止策

リストラハラスメントを防ぐには、個々の管理職の判断に委ねるのではなく、組織として「適切な退職勧奨の進め方」を共通認識として整備することが重要です。
とくに、人事部門がリードし、教育・制度・運用の3つの面から対策を講じることで、現場のトラブル発生を大幅に減らすことができます。

研修を実施する

退職勧奨や人員調整に携わる管理職は、法的な線引きやコミュニケーションのポイントを十分に理解していないことが少なくありません。
そのため、管理職向けのハラスメント研修・評価面談研修を定期的に行うことが効果的です。

研修では、「何がリスハラに該当し得るのか」を具体的に示しつつ、適切な面談手順や、社員の尊厳を損なわない伝え方を取り上げると良いでしょう。
言い回しや態度ひとつで成立してしまう行為も多いため、ロールプレイやケーススタディを取り入れ、現場で迷わない状態をつくることが重要です。

相談窓口・内部通報制度を強化する

リストラハラスメントは被害者が声を上げにくく、表面化しにくい特徴があります。
そのため、社内の相談窓口や内部通報制度を整備し、早期に兆候を拾い上げる仕組みをつくることが不可欠です。

専門部署(人事・コンプライアンス部門)とは別に、匿名で相談できるチャネルを設けておくと、対象社員が安心してサポートを求められます。
また、相談内容の取り扱いルールや調査フローを明文化することで、担当者の対応品質も安定します。

さらに、相談が寄せられた後のフォロー体制も重要です。
面談記録の確認、関係部署へのヒアリング、改善指導の実施などを一連のプロセスとして運用することで、再発防止につながります。

まとめ

リストラハラスメントは、表面的には退職勧奨の場面で起きるものの、その本質は「社員の自由意思を奪う不当な行為」です。
強引なコミュニケーションや不当な配置転換など、意図しない形で発生するケースも多く、企業にとっては民事・刑事の双方で大きなリスクとなり得ます。

防止のカギは、管理職への正しい知識の浸透と、相談窓口・内部通報制度の仕組み化です。
まずは、現在の退職勧奨プロセスや面談記録の運用状況を点検し、自社の対応に抜け漏れがないかを確認するところから始めてみましょう。適切な運用を徹底することで、組織と社員の双方を守ることができます。

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