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経理の現場では、「記帳に追われて本来の業務に時間を割けない」「月次決算が遅れがち」といった課題が増えています。
近年は取引量の増加に加え、経理業務に求められる精度やスピードも高まっており、担当者の負担が大きくなりがちです。
そこで、領収書や請求書、通帳明細をもとにした仕訳・帳簿作成を外部に委託する“記帳代行”を活用する企業が増えています。
本記事では、記帳代行の仕組み、メリット・デメリット、依頼先の種類、料金相場、選び方までを実務目線でわかりやすく解説します。
記帳代行とは、領収書・請求書・通帳明細などの取引情報をもとに仕訳を行い、会計ソフトへ入力して帳簿を作成する業務を専門家にアウトソースするサービスです。
経理担当者の負担を大きく軽減できるだけでなく、会計処理の正確性向上や月次決算の早期化にもつながるため、多くの企業が導入しています。
企業規模を問わず、取引内容を正確に記録し帳簿として保存することは不可欠ですが、記帳作業は専門知識と手間がかかり、取引量が増えるほど担当者の負担が大きくなります。
加えて、電子帳簿保存法やインボイス制度などの対応も求められ、記録の精度と効率性は以前より重要になっています。
こうした状況から、記帳業務を外部に任せて負担を軽減したい企業が増え、“記帳代行”の活用が広がっています。
記帳代行と経理代行はいずれも経理業務をアウトソースするサービスですが、担う範囲に明確な違いがあります。
記帳代行は、領収書・請求書・通帳明細などをもとに取引を仕訳し、会計ソフトへ入力して帳簿を作成する「記帳に特化したサービス」です。
一方、経理代行は記帳作業に加えて、支払・入金管理、請求書発行、給与計算、決算サポートなど、日常経理を幅広くカバーすることが特徴です。
なお、決算書の作成や税務申告といった税務業務は、税理士事務所または税理士法人と連携している事業者でなければ取り扱えません。
経理代行はサービス範囲が事業者により異なるため、導入時には対応範囲を確認することが重要です。
記帳代行では、日々の取引を正しく記録するために必要な次の業務を委託できます。
領収書・請求書・通帳明細などの情報から仕訳を起こし、会計ソフトに入力する作業です。
クラウド会計であればログイン情報を共有し、オンライン上で処理を依頼するケースが一般的です。
仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛金・買掛金の管理表など、月次・年次決算に必要な帳簿を整える業務です。
帳簿が早期にそろうことで、経営状況の可視化や月次決算の早期化につながります。
紙の領収書や請求書を郵送する運用の場合、書類整理を代行してくれるサービスもあります。
ファイリングが整うことで、必要な書類がすぐに確認でき、監査や税務調査への備えにも役立ちます。
記帳代行を活用することで、経理担当者の負荷軽減から内部統制の強化まで、幅広い効果が得られます。
ここでは、企業が導入を検討する際に特に押さえておきたい5つのメリットを解説します。
記帳は細かな作業が多く、取引量が増えるほど負担が大きくなります。
外部に委託することで入力・帳簿作成の手間が減り、残業削減や業務効率の向上につながります。
経理には予算管理・経営分析など、企業の意思決定に関わる重要業務が多くあります。
記帳を外部化することで、社内リソースをコア業務に割けるようになり、生産性や戦略性が高まります。
記帳には専門知識が必要で、経験が浅いとミスや遅れが発生しやすくなります。
記帳代行業者は大量の仕訳を扱うため、正確かつスピーディーな処理が可能で、月次決算の遅延リスクも抑えられます。
増員には給与・社保・研修など多くの固定費がかかりますが、記帳代行なら必要な範囲を月額で依頼でき、採用・教育コストを削減できます。中小企業には特に効果的です。
少人数の経理体制では不正が起きやすくなりますが、外部のチェックが入ることでプロセスが可視化され、不正防止に効果があります。
業務分担が明確になることで内部統制も強化されます。
記帳代行は多くのメリットがある一方、注意すべきポイントもあります。
導入効果を正しく判断するためには、自社にとってのリスクや運用上の課題も理解しておくことが欠かせません。ここでは特に重要な3つのデメリットを解説します。
記帳を外部委託すると、仕訳判断や帳簿作成の経験が社内に残らず、担当者の会計スキルが育ちにくい点がデメリットです。
ただし、委託範囲や数字の作られ方を把握し、知識を引き継ぐ仕組みを整えれば、一定のリテラシーは維持できます。
書類提出から処理完了までのタイムラグにより、最新の業績を即時に確認できない可能性があります。
クラウド会計に対応した業者なら仕訳反映を随時確認でき、タイムラグを軽減できます。スピード重視の場合は更新頻度など事前確認が必須です。
記帳代行では機密情報を外部に共有するため、業者の管理体制が不十分だと情報漏えいの懸念があります。
セキュリティ対策が明確な事業者を選ぶことが重要で、自社でも情報管理ルールを徹底し運用することでリスクを最小限に抑えられます。
記帳代行と一口にいっても、依頼先にはいくつかのタイプがあり、特徴や提供できるサービス範囲が大きく異なります。
ここでは、代表的な3つの依頼先について、その強みや注意点を整理します。
税理士事務所は、記帳だけでなく決算・申告など税務業務まで一括して依頼できる点が強みです。法改正に対応した正確な処理が期待でき、経理体制を社外にまとめたい企業に向いています。
一方で費用は比較的高めで、事務所ごとに対応範囲が異なるため、事前の確認が欠かせません。
記帳に特化した業者は、低コストで日々の記帳をスピーディに処理したい企業に適しています。
専門スタッフによる一定の品質が期待できますが、税理士がいない場合は決算や申告には対応できません。税務が必要な場合は提携状況を確認することが重要です。
会計ソフトを活用すれば社内の記帳効率を高められ、記帳代行との併用も可能です。特にクラウド型は自動連携やリアルタイム確認ができ、法改正にも自動対応します。
インストール型はセキュリティ面で優れる一方、更新やバックアップを自社で管理する必要があります。自社の体制やリテラシーに合った方式を選ぶことが大切です。
記帳代行の料金は、依頼する相手や提供されるサービス内容によって大きく異なります。以下に、税理士事務所と記帳代行専門業者の一般的な料金相場を紹介します。
税理士事務所へ依頼する場合、記帳だけでなく税務相談や決算サポートを含めて依頼するケースが多く、顧問契約として固定料金を支払う形式が一般的です。
| 区分 | 料金相場(目安) |
|---|---|
| 法人 | 月額4万円前後〜 |
| 個人事業主 | 月額3万円前後〜 |
仕訳数に関係なく一定額で契約できる反面、専門性の高さから費用がやや高めになる傾向があります。税務まで含めて一元管理したい企業に向いています。
記帳業務に特化した代行業者では、仕訳数に応じた従量課金制が一般的です。必要な業務だけを依頼できるため、コストを抑えたい企業に選ばれています。
料金相場(目安)の目安は以下です。
| 仕訳数の目安 | 料金相場 |
|---|---|
| 月100〜250仕訳程度 | 6,000円〜2万円前後 |
証憑整理、特急処理、レポート作成など、追加サービスを依頼する場合は別途料金が発生します。
記帳代行サービスは、「どこに頼むか」によって品質やコストだけでなく、日々の業務のやりやすさも大きく変わります。
ここでは、サービスを比較・検討する際に押さえておきたい主なポイントを整理します。
まずは、「自社の業種や取引内容をどこまで理解しているか」を確認することが大切です。
業種ごとに典型的な取引や勘定科目の使い方は異なるため、同業の支援実績があるか、特定業種に強みがあるかをチェックしましょう。
将来、決算や申告まで任せたい場合は、税理士事務所か、税理士と連携している事業者かどうかもあわせて確認しておくと安心です。
外部委託では、日々のコミュニケーションのしやすさが想像以上に重要です。
問い合わせ方法(メール・チャット・電話など)や返信の早さ、説明の分かりやすさは、見積もりや初回相談の段階で確認しておきましょう。
あわせて、領収書・請求書を「郵送」「スキャンデータ」「専用システム」などどの形でやり取りするか、自社のフローに無理なく組み込めるかもポイントです。
一口に記帳代行といっても、仕訳入力だけを行うのか、証憑整理やファイリング、月次レポート作成まで含むのかは事業者によって異なります。
自社がどこまで外部に任せたいのかを整理したうえで、サービス範囲を比較しましょう。
あわせて、自社が利用している(または導入予定の)会計ソフトに対応しているか、クラウド会計や銀行明細との連携に強いかなど、「システムとの相性」も確認しておくと、後々の手戻りや二重入力を防ぎやすくなります。
記帳代行は、経理担当者の負担軽減から業務品質の向上、内部統制の強化まで、多くのメリットをもたらす選択肢です。
一方で、ノウハウ蓄積の難しさや情報管理のリスクなど、注意すべき点も存在します。
重要なのは、自社の課題と委託したい範囲を明確にし、専門性・対応範囲・会計ソフトとの相性・セキュリティといった観点から最適なパートナーを選ぶことです。
外部の力をうまく活用することで、経理はより付加価値の高い業務へシフトし、企業の意思決定を支える強いバックオフィスづくりへとつながります。
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