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「補助金って、どの勘定科目で処理すればいいの?」
補助金を扱う経理担当者が一度は悩むポイントです。
補助金・助成金・支援金はそれぞれ目的や交付条件が異なり、勘定科目の選び方を誤ると決算や課税に影響します。
この記事では、3つの制度の違いと正しい会計処理のポイントを、仕訳例とともに解説します。
補助金や助成金などの公的資金は、経営を支える重要な財源の一つです。
ここでは、それぞれの制度の違いと会計上の位置づけを整理します。
これらはいずれも国や自治体、関係機関などから交付される資金ですが、性質や申請方法が異なります。
「補助金」は、事業計画の内容や成果目標をもとに審査が行われ、採択された企業のみが交付を受けられる制度です。
代表例として「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」などがあり、成果確認後に支払われる“後払い方式”が一般的です。
一方「助成金」は、厚生労働省が実施する「雇用調整助成金」「キャリアアップ助成金」のように、一定の条件を満たせば原則支給される制度で、審査よりも要件充足が重視されます。
「支援金」や「協力金」は、災害や感染症、行政要請など、突発的な状況で企業や個人を支援する目的で設けられるケースが多く、「持続化給付金」や「休業協力金」などが代表的です。
会計上は、これらの交付金はいずれも企業にとって「収益」として扱われます。
原則として「交付決定」が通知された時点で収益を認識し、入金が翌期以降になる場合は「未収入金」として計上します。
また、設備投資を目的とする補助金は「圧縮記帳」の対象となる場合があり、固定資産の取得原価や減価償却に影響します。
補助金は、会計上「収益」として扱われるため、原則として所得税・法人税の課税対象となります。
一方で、商品やサービスの提供に対する対価ではないことから、消費税は課税されません。
また、会計上の収益認識のタイミングと、税務上の課税時期が一致しないケースもあり、その場合は申告時に調整が必要になることがあります。
特に、補助金を受給した事業年度と実際に使用する年度が異なる場合には注意が必要です。
補助金や助成金、支援金を受け取った場合、どの勘定科目や損益区分で処理するかは、性質によって異なります。
ここでは代表的な勘定科目と使い分けの考え方を整理します。
補助金や助成金を収益として計上する際にもっとも一般的に使用されるのが「雑収入」です。
「雑収入」とは、企業の通常の営業活動以外から生じる収益のうち、特定の勘定科目に分類されないものをまとめて処理する科目です。
入金が確定し、支給通知書などの証憑が揃った時点で収入として計上します。入金と計上が同時であれば、入金日に「雑収入」として処理すれば問題ありません。補助金や助成金の支給が決定しているものの、実際の入金まで期間が空く場合は「未収入金」で処理します。
「未収入金」は、営業取引以外で発生したまだ受け取っていない債権を指す勘定科目です。
決算期をまたぐ場合には、支給決定通知などに基づいて未収計上し、入金時に消し込みを行う必要があります。一方で、決算期をまたがず短期間で入金される場合には、入金日に収入として計上しても差し支えありません。
補助金・助成金・支援金を受け取った場合、交付決定のタイミングや使途の有無によって仕訳方法が異なります。
ここでは代表的な3つのケースを紹介します。
交付が確定し、同一の会計期間で入金も完了している場合は、入金日に収入として処理して問題ありません。 特に用途制限がなく、自由に使える補助金・助成金の場合に該当します。
仕訳例(交付決定済・用途制限なし)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | 雑収入 | 300,000円 | ○○補助金 |
決算日時点で交付が決定しており、入金が翌期となる場合は、未収入金として計上します。
このケースでは、会計期間に対応する収益として認識するのが原則です。
仕訳例(決算時点)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 未収入金 | 300,000円 | 雑収入 | 300,000円 | ○○補助金 |
仕訳例(翌期入金時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | 未収入金 | 300,000円 | ○○補助金 |
使途が明確に定められている補助金・助成金は、対象となる費用と同じ期間に対応させて収益計上する必要があります。
たとえば、雇用調整助成金なら「人件費補填」、IT導入補助金なら「システム導入費の補填」として扱います。
仕訳例(費用発生時)
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| システム導入費 | 500,000円 | 現金 | 500,000円 |
補助金確定・申請(確定)時
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 未収入金 | 500,000円 | 雑収入 | 500,000円 | ○○補助金 |
補助金・助成金は、収益の認識時期や勘定科目の選定を誤ると、課税所得や決算書の整合性に影響するため、交付要領や通知書の文面を確認して判断することが重要です。
入金や入金額が確実と認められないなど、未収入金として計上することが補助金の制度によっては適当でない場合もあります。
設備投資に関する補助金を受けた場合、「圧縮記帳(あっしゅくきちょう)」という特別な会計処理を行うことがあります。
圧縮記帳は、補助金によって取得した固定資産の購入費用の一部を圧縮(減額)して計上する方法で、課税の繰延べの効果があります。
補助金を受けて設備などの固定資産を取得した場合、その補助金は原則として益金(課税対象)になります。
しかし、そのまま全額を課税すると、補助金の目的が半減することになります。
そこで、補助金に相当する金額分だけ資産の帳簿価額を減額(圧縮)し、その分を損金算入することで課税を繰り延べるのが「圧縮記帳」です。
たとえば、1,000万円の設備を購入し、そのうち300万円を補助金でまかなった場合、帳簿上の資産価額を700万円に圧縮します。
これにより、補助金分の課税を実質的に繰り延べることができます。
補助金の交付を受け、圧縮記帳を行う場合の一般的な仕訳は以下のとおりです。
設備投資1,000万円、うち補助金300万円を受けた場合の仕訳例
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 建物(または機械装置) | 10,000,000円 | 現金(または未払金) | 10,000,000円 |
| 現金 | 3,000,000円 | 補助金収入 | 3,000,000円 |
| 圧縮損 | 3,000,000円 | 建物(または機械装置) | 3,000,000円 |
※「圧縮損」は損金として計上され、補助金分の課税が繰り延べられます。
圧縮記帳を行った場合、減価償却の基礎となる取得価額も圧縮後の金額になります。
上記の例でいえば、設備の取得価額は1,000万円ではなく700万円として減価償却を行います。
そのため、今後の減価償却費は減少し課税所得は増えますが、補助金分についてはすでに損金算入しているため、トータルで課税の公平性が保たれる仕組みです。
なお、圧縮記帳の適用には税務上の要件や手続きがあり、「所得税法第42条」「法人税法第42条」および関連する通達に基づいて処理する必要があります。
補助金の種類や用途によって扱いが異なるため、顧問税理士など専門家への確認が推奨されます。
補助金や助成金の会計処理では、交付時期や勘定科目、税務上の扱いなどでミスが生じやすいポイントがあります。
ここでは、実務で特に注意すべき4つの典型例を紹介します。
もっとも多いミスが、収益を計上するタイミングの誤りです。
補助金の収益は、前述のとおり入金日ではなく交付決定日(交付決定通知日)に認識するのが原則です。
ただし、決定があっても支給条件(設備設置・報告書提出など)が未達の場合は、まだ確定していないと判断されることがあります。
決算期をまたぐ場合は、「交付決定済・未入金」として未収入金計上を失念しないよう注意が必要です。
少額だからといって一律に「雑収入」で処理してしまうケースには注意が必要です。
とくに経常的に受け取る「雇用関連助成金」「事業再構築補助金」「IT導入補助金」などは、前述の原則どおり「補助金収入」「助成金収入」など制度名を明示した勘定科目で処理することで、会計上の透明性・比較可能性が高まります。
補助金を受け取った後に条件未達等より返還するケースもあります。
返還時には、原則として受領時の逆仕訳を行う必要があります。
仕訳例
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 補助金収入 | 300,000円 | 普通預金(または未払金) | 300,000円 | ○○補助金返還 |
同一期間内の返還金を「雑損失」などで処理すると、会計上の整合性が取れなくなるため注意が必要です。
補助金・助成金の多くは消費税の課税対象外ですが、補助金で取得した資産や経費には消費税が含まれている場合があります。
その場合、補助金部分を控除対象外消費税として調整する必要があるケースがあります。
また、法人税の課税所得計算上は、補助金収入を益金として算入し、必要に応じて圧縮記帳を行うなど、税務調整が必要です。
税務申告書(別表四・五)での処理を忘れると、課税所得の過大計上・過少計上につながるおそれがあるため、会計と税務の連携が欠かせません。
補助金や助成金の仕訳・会計処理では、処理方法や勘定科目の選び方について迷うことが多いものです。ここでは、実務でよく寄せられる質問に回答します。
少額かつ一時的な補助金であれば「雑収入」として処理しても差し支えありません。
一方、事業活動と密接に関連する補助金(例:雇用調整助成金、ものづくり補助金など)は、本⽂で述べたとおり「補助金収入」や「助成金収入」として区分するのが基本です。制度名を明示した勘定科目にしておくと、決算説明や分析の際にも内容が伝わりやすくなります。
雇用関係助成金は、人件費補填を目的とした収入のため、「助成金収入」として計上するのが一般的です。
特に「雇用調整助成金」や「キャリアアップ助成金」などは、労働関係の補填性が明確であるため「雑収入」ではなく「助成金収入」勘定を使うのが望ましいです。
また、支給対象期間が複数期にわたる場合は、対象期間に対応して収益計上する(期間按分)点にも注意が必要です。
圧縮記帳は任意処理であり、必ず行う義務はありません。ただし、設備投資などに関する補助金で圧縮記帳を行わない場合、補助金分はそのまま益金算入されます。
課税の繰延べ効果確保したい場合には圧縮記帳を検討し、適用する際は税務申告書(別表四・五)への記載と明細書の添付が必要です。
補助金や助成金は、企業活動を支える重要な資金である一方、処理を誤ると課税や決算への影響が大きくなります。
制度の目的や交付条件を正しく理解し、「いつ・どの勘定科目で・どのように計上するか」を明確にしておくことが、信頼性の高い会計処理につながります。
とくに、交付決定日と入金日のズレや圧縮記帳の要否など、実務上の判断が分かれるポイントは、税理士や専門家と連携しながら慎重に対応しましょう。
正しい会計処理を行うことで、次の補助金申請や安心して臨むことができます。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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