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去る11月26日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等を公表した。コメント期限は12月26日。
主な改正点は次のとおり。
2027年3月期から、時価総額が一定規模以上の東証プライム市場上場会社に対し、段階的にサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の適用義務づけの方針が示されたことを受け、次の必要な制度整備を行うもの。
⑴ SSBJ基準の適用
東証プライム市場上場会社のうち、平均時価総額(有報の対象事業年度前の5事業年度末における時価総額の平均)が1兆円以上の会社に対し、SSBJ基準に従って、有報等の記載事項のうちサステナビリティ関連記載事項を記載することを義務づける。
2段階開示を可能とする規定を設ける。
⑵ SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加
「サステナビリティに関する考え方及び取組」等に、次の記載を求める。
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・SSBJ基準上開示が求められる事項の記載のほか、SSBJ基準に準拠している旨、2段階開示やSSBJ基準上の経過措置の適用状況 ・将来情報やスコープ3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、推論過程等に関する記載およびこれらの情報に係る社内の開示手続 |
前事業年度に係る有報の「サステナビリティに関する考え方及び取組」その他の項目において記載した見積りの方法により算定した数値について、確定値が判明し、見積りによる数値と確定値との間に差異がある場合には、半期報告書において記載することができる。
⑶ スコープ3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備
スコープ3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、一般に合理的と考えられる範囲で差異が生じる要因や推論過程等、社内の開示手続等に関する記載がされている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないとする考え方を明示する。
本年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針2025」等において提言されている人的資本に関する開示の拡充のため、有報において、新たに次の事項について開示を求めるなどの改正を行う。
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・企業戦略と関連づけた人材戦略およびそれを踏まえた従業員給与等の決定方針 ・従業員の平均給与の対前年比増減率 ・(持株会社である場合)連結会社(外国会社を除く)のうち、従業員数が最も多い「最大人員会社」の従業員給与の平均額、その前年比増減率等 |
会社の開示負担を軽減し、株主総会前の有報の開示を促進する観点から、次の改正を行う。
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・有報の記載事項等が定時株主総会またはその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときにおける当該決議事項等の概要の記載を原則不要とする。 ・半期報告書の「大株主の状況」および「議決権の状況」について、中間配当基準日現在における「大株主の状況」および「議決権の状況」を記載することができる。 |
⑴ 「サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備」の改正
2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額に応じて、次の日以後終了する事業年度に係る有報等から適用される。
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・3兆円以上である会社:2027年3月31日 ・3兆円未満1兆円以上である会社:2028年3月31日 |
⑵ その他の改正
2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有報等から適用される。
去る11月28日、金融庁は第10回金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(座長:神作裕之・学習院大学大学院法務研究科教授)を開催した。
主な審議事項は次のとおり。
「サステナビリティ情報の保証に関する専門グループ」において、保証業務実施者の責任については、監査法人等の義務・責任を参考としつつ、一方で過度な責任を負わせない措置の検討も必要とされている。
事務局は、こうした議論を踏まえて、投資者保護のためのエンフォースメントについて次のとおり検討した。
⑴ 行政責任
公認会計士法では虚偽証明を行った公認会計士、監査法人に対して課徴金納付命令が規定されており、これは本来財務諸表監査が継続的な業務であるにもかかわらず、虚偽証明があった場合、業務停止命令によって(虚偽証明と)無関係な企業にその影響が及ぶところ、金銭的負担を課すことで違反行為を抑止することが効果的であるとの考えに基づいている。
事務局は、こうした考えが保証業務実施者にも当てはまるものであり、虚偽「保証」を行った者に対する課徴金制度を設けてはどうかとした。また、保証業務実施者に対する課徴金額の考え方は、公認会計士法を参考に、①相当の注意を怠ったことによる虚偽「保証」には保証報酬相当額を課し、違反行為を効果的に抑止する観点から、②故意による虚偽「保証」には保証報酬の1.5倍を課すことを基本としてはどうかとした。
委員からは、賛意が聞かれた。
⑵ 刑事責任
事務局は、有報等の虚偽証明について金商法上に刑事罰を科す規定がないことから、サステナビリティ情報の虚偽「保証」についても刑事罰を規定しないことが適当と考えられるとした。
一方、監査法人の業務が適切に実施されるよう、重要な行為規制の違反については罰則が科されるものもあることから、保証業務実施者の守秘義務については、次のように考えることを提案した。
| 保証業務実施者において、その業務が適切に実施されるよう、監査法人との規制のイコールフッティングの確保という観点にも留意しつつ、守秘義務等の重要な行為規制について罰則を設けることが適当ではないか。 |
委員からは、賛意が聞かれた。
⑶ 民事責任等
事務局は、金商法において有報等の重要な事項に虚偽の記載等があった場合について、その監査証明を行った公認会計士・監査法人の虚偽証明責任が規定されていることから、保証業務実施者においても、虚偽「保証」を行った場合における立証責任が転換された民事責任を規定することとしてはどうかとした。
また、事務局は、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」において議論されている企業のセーフハーバー・ルールを前提に、企業にセーフハーバー・ルールが適用される場合(将来情報等の合理性確保のための推論過程等が適正に開示されている場合)、保証業務実施者においても責任(立証責任が転換された民事責任)を負わないものとしてはどうかとした。なお、有報において「将来情報等の合理性確保のための推論過程等」の開示が真実ではなく、企業にセーフハーバー・ルールが適用されない場合は免責されないことする。
委員からは、賛意が聞かれた一方で、「金商法上の手当てが前提となっているが、公認会計士法の責任や処分をどう考えるのか。他の業務実施者とのイコールフッティングを」との意見等が聞かれた。
今回の審議事項ではないものの、前回会議にて実施しないとされた第三者保証が付されている場合における有報の提出期限の延長について、「(やむを得ず)法定期限を過ぎてしまうような場合に訂正報告書による2段階開示しか認められないというのは制度として硬直的」などの理由から「実施すべき」旨の意見が複数の委員から寄せられた。
事務局は、「現行の金商法においてやむを得ない理由があって法定の期間内に有報を提出できないと認められる場合には、あらかじめ当局の承認を得たうえで提出期限の延長をすることができる規定があるため、これを柔軟に運用できないか開示ガイドラインの改正も含め検討したい」と回答した。
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