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採用活動の早期化や売り手市場の継続により、内定辞退をどう防ぐかは多くの企業にとって重要な課題となっています。
一方で、内定者フォローや意思確認の進め方を誤ると、学生の職業選択の自由を侵害する行為と受け取られ、トラブルに発展するおそれもあります。
本記事では、オワハラの定義や該当し得る具体例、違法性が問題となるケース、企業側が負うリスクを整理したうえで、採用現場で実践できる防止策まで解説します。
新卒採用では、内定後のフォローや意思確認が重要視される一方、対応が行き過ぎることで学生とのトラブルに発展するケースもあります。その代表例が「オワハラ」です。
本章では、オワハラの定義と、社会的な課題として注目される背景を整理します。
オワハラとは、「就活終われハラスメント」の略称で、企業が内定や内定の維持を条件として、学生に対し他社の選考辞退や就職活動の終了を求める行為を指します。
具体的には、「他社の内定を断るよう求める」「これ以上就職活動を続けないことを前提に内定を出す」など、学生の意思決定に事実上の圧力をかけ、選択の自由を制限する行為が該当します。
本来、学生には就職活動を継続する自由があり、内定を得た後であっても他社の選考を受けること自体に問題はありません。
しかし、企業側が立場の優位性を背景にその選択肢を狭める行為は、学生に大きな心理的負担を与えるものとして、ハラスメントの一種として問題視されています。
なお、厚生労働省も、企業の採用活動におけるハラスメント防止の観点から、オワハラを含む不適切な行為について注意喚起を行っています。
採用担当者にとっては、国の示す考え方や指針を理解しておくことが重要です。
参照:厚生労働省│学生の職業選択の自由を侵害する 「オワハラ」は行わないでください!!
オワハラという言葉が広く知られるようになった背景には、就職活動の早期化・長期化があります。
学生が複数の企業から内定を得たり、同時並行で選考を受けたりする状況が一般化したことで、企業側の内定辞退に対する不安も高まりました。
その結果、内定者を確保したいという意図から、学生の意思確認が過度になり、就職活動の継続を制限するような対応が一部で見られるようになりました。
こうした流れを受け、行政機関や大学、企業の間でも、学生の職業選択の自由を尊重した採用活動のあり方が強く求められています。
ここでは、オワハラと判断されやすい代表的な行為を、実務上の注意点とあわせて整理します。
内定や内々定を出すことと引き換えに、学生に対して早急な意思決定を求める行為は、オワハラに該当する可能性があります。
例えば、「この場で他社の内定を断るなら内定を出す」「期限内に承諾しなければ内定を取り消す」といった形で、十分な検討時間を与えずに判断を迫るケースです。
また、内定辞退の意思を示した学生に対し、繰り返し面談や説得の場を設けて引き留めたり、高圧的な言動によって辞退を思いとどまらせようとしたりする行為も問題視されます。
学生にとっては、企業との力関係を背景に強い心理的圧力を感じやすく、自由な意思表示が困難になるおそれがあります。
学生が他社の選考活動を行えないようにする目的で、過度な拘束を行うことも、オワハラの典型例とされています。
具体的には、内定後すぐに研修や課題への参加を求めたり、頻繁な連絡や面談を設定したりすることで、他社の面接や説明会に参加しづらい状況をつくる行為が挙げられます。
また、他社の面接日程と重なるタイミングで内定者向けイベントや集まりへの参加を求めるなど、結果的に学生の就職活動の選択肢や行動を実質的に制限している場合、問題となる可能性があります。
オワハラは、すべての行為が直ちに違法と判断されるわけではありませんが、場合によっては法的責任や企業経営上の大きなリスクにつながる可能性があります。
ここでは、違法と判断されるおそれがあるケースと、企業イメージや採用活動への影響について整理します。
オワハラという行為を直接規定・禁止する法律はありませんが、行為の内容や態様によっては、既存の法令に抵触する可能性があります。
例えば、内定や内定維持を条件に就職活動の終了を強く求めたり、内定辞退を申し出た学生に対して高圧的な言動で翻意を迫ったりする行為は、職業選択の自由を不当に制限するものとして問題となり得ます。
また、「辞退すれば不利益が生じる」「損害賠償を請求する可能性がある」などと告げる行為は、威圧や強制と受け取られやすく、内容次第では脅迫や強要に該当するリスクも否定できません。
対応が度を超えた場合、学生が精神的苦痛を理由に損害賠償を請求する可能性もあります。
こうした点については、厚生労働省の資料でも、採用活動において学生の自由な意思決定を妨げる行為は不適切であるとして注意喚起が行われています。
オワハラが企業にもたらす影響は、法的リスクにとどまりません。
オワハラを受けた学生は、大学のキャリアセンターや相談窓口に相談することも多く、事例が学内で共有されれば、次年度以降の学生から企業が敬遠される可能性があります。
その結果、志望者の減少など採用活動に直接的な影響が及ぶおそれがあります。さらに、企業イメージが短期間で大きく損なわれるリスクもあります。
また、強引な対応の結果として入社した学生は、企業に対する納得感や信頼を持ちにくく、早期離職につながる可能性も高まります。 一方、入社に至らなかった学生も、オワハラを行った企業に対してネガティブな印象を持ったまま「消費者」となるため、中長期的に見ても企業にとってプラスになることはありません。
優秀な人材を確保したいという意図から行き過ぎた対応を取ることは、結果的に企業価値や採用競争力を下げる要因となります。
オワハラは、学生にとっても企業にとっても「誰も得をしない行為」であることを、採用に関わる担当者は正しく認識しておく必要があります。
ここではなぜオワハラは起こるのか、より詳しく解説します。
近年、オワハラが問題視されるようになった背景の一つに、採用競争の激化があります。
採用スケジュールの変化により、選考開始時期が後ろ倒しになったことで、企業側は限られた期間で内定者を確保する必要に迫られるようになりました。
また、学生優位の「売り手市場」が続いていることも、内定辞退への不安を強める要因です。
一人の学生が複数の企業から内定を得る状況が一般化する中、企業は「せっかく内定を出しても辞退されてしまうのではないか」という強い危機感を抱きがちになります。
本来であれば、丁寧なコミュニケーションや相互理解を通じて入社意欲を高めていくことが望ましい対応です。
しかし、内定辞退を確実に防ぎたいという意識が先行すると、学生に対して早期の承諾を求めたり、就職活動の終了を前提とした対応を取ったりするなど、オワハラにつながる行為に発展しやすくなります。
オワハラが起こるもう一つの大きな要因として、採用現場におけるルール不足や対応の属人化が挙げられます。
内定承諾の期限設定や、内定者フォローの方法について明確な社内ルールが整備されていない場合、担当者個人の判断で対応が行われやすくなります。
また、内定辞退の連絡が遅れる、意思表示が曖昧なまま就職活動を続けるといった一部学生の対応により、採用計画が滞るケースもあります。
こうした経験が重なることで、「早めに結論を出させたい」「確実に囲い込みたい」という意識が強まり、結果として学生に過度な判断を迫ってしまうことがあります。
しかし、個別の事情に応じた柔軟な対応や、学生の状況を尊重する姿勢を欠いたまま強引な運用を行えば、オワハラと受け取られるリスクは高まります。
採用活動を安定的に進めるためには、現場任せにせず、組織として共通のルールや判断基準を整備することが不可欠です。
「意図的ではなかったが、結果的にオワハラと受け取られてしまった」というケースも少なくありません。
オワハラを防ぐためには、担当者個人の注意に任せるのではなく、企業としての仕組みや方針を整えることが重要です。
ここでは、採用現場で実践しやすい具体的な防止策を紹介します。
オワハラ防止の第一歩は、採用対応に関するルールを明文化することです。
どのような行為がオワハラに該当するのか、内定承諾や辞退に関してどこまで踏み込んでよいのかを文書で整理し、社内で共通認識を持つことが重要です。
マニュアルには、オワハラの具体例、適切な対応方法、学生からよくある質問への回答例、相談窓口などを盛り込むと実務で活用しやすくなります。
また、採用環境や社会情勢の変化に合わせて、内容を定期的に見直すことも欠かせません。
内定承諾の期限は、学生にとって大きな心理的負担になりやすいポイントです。
一律の短い期限を設定するのではなく、学生の選考状況や事情に配慮し、相談に応じられる余地を残しておくことが望まれます。
他社の結果待ちであることを理由に期限の延長を認めるなど、柔軟な対応を行うことで、学生は安心して判断できるようになります。
こうした姿勢は、オワハラ防止だけでなく、企業への信頼感を高めることにもつながります。
内定後から入社までの期間に何が行われるのかが分からないと、学生は不安を感じやすくなります。
内定者向けのスケジュールや連絡頻度、研修・イベントの有無などをあらかじめ示しておくことで、不必要な誤解やプレッシャーを避けることができます。
内定者交流会や懇親会を設ける場合も、参加が任意であることを明確に伝えるなど、拘束と受け取られない配慮が重要です。
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オワハラは、企業が意図せず行った対応であっても、学生の職業選択の自由を侵害する行為として受け取られれば、大きな問題へと発展します。
内定辞退への不安や採用競争の激化といった背景があるとはいえ、強引な対応は企業イメージの低下や法的リスク、早期離職など、長期的に見て企業に不利益をもたらします。
重要なのは、学生を「囲い込む」ことではなく、「納得して選んでもらう」採用活動を行うことです。
ルールの整備や研修の実施、誠実なコミュニケーションを通じて、学生の意思を尊重する姿勢を示すことが、結果として信頼される企業づくりと持続的な採用力の向上につながります。
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