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取適法では、従来の受領拒否や買いたたき等に加え、「協議に応じない一方的な代金決定」や手形払いの禁止など、委託事業者に11の禁止行為が定められました。
【後編】では、11の禁止行為の改正ポイントと価格協議・支払方法の留意点を押さえたうえで、契約書・注文書・支払条件・社内ワークフローの見直しなど、企業が今すぐ着手すべき具体的な実務対応を解説します。
取適法では、従来の受領拒否や買いたたき等に加え、「協議に応じない一方的な代金決定」や手形払いの禁止など、委託事業者に11の禁止行為が定められました。
価格協議のプロセスや支払手段そのものがチェック対象となるため、現場慣行の見直しとコンプライアンス体制の強化が欠かせません。
対象取引に該当し、企業要件において取適法の対象になった委託事業者には、11の禁止行為が規定されています。
改正点として重要なのは、価格交渉に関係する「協議に応じない一方的な代金決定」が新たに明示された点です。
また、11の禁止行為は相手方の了承があっても違法です。
現場の慣行や口頭合意があると説明しても、免責されない場合があるので、そのような運用を行っている企業は見直しの必要があります。
以下では、改正・新設された箇所と重要ポイントに絞って解説します。
「協議に応じない一方的な代金決定」とは、中小受託事業者が代金額の協議を求めたにもかかわらず、協議に応じなかったり、求められた事項について必要な説明・情報提供をしないまま、一方的に代金額を決定する行為をいいます。
運用基準では、代金決定において、①費用変動等の事情の発生、②協議の求め、③協議拒否又は必要な説明・情報提供の欠如、④一方的決定、⑤中小受託事業者の利益侵害というプロセスが認められた場合には勧告対象となることが想定されています。
ここでいう①費用の変動その他の事情には、労務費、原材料価格、エネルギーコストといった要因だけでなく、納期短縮、納入頻度の増加、発注数量の減少など個々の取引条件の変更、需給状況の変化、委託事業者からの値下げ要請なども含まれます。
また、②協議に応じないとは、明示的に拒否する場合だけでなく、協議要請を無視したり、協議実施を先延ばしにして実施を困難にする場合も含むことに留意してください。
さらに、協議において、③中小受託事業者が求めた事項について、代金決定に必要な説明や根拠情報を示すべきことが示されており、形式的な面談だけでは足りないことに注意してください。
委託事業者は「一定の値上げをしたから安全」とは言い切れません。
委託事業者が中小受託事業者の要請額の全部又は一部を受け入れないこと自体は直ちに問題とはされませんが、③受け入れられない理由や考え方の根拠を十分に説明する必要があります。
つまり、取適法対象取引の代金決定においては、価格決定の結果だけでは足りず、価格交渉の機会と説明の質が問われるようになります。
この新設規定は、取引実務に大きな影響を及ぼすことになりうる反面、委託事業者にとっては対応に苦慮する場面が増えることが想定されます。
特に③代金決定に必要な説明や根拠情報の提供については、どこまで示せば十分と言えるのか、個別事案の判断はまだ十分になされておらず、今後の事例の集積も踏まえ運用が明確化していく部分があります。
この点に関しては、今後しばらくの間は、中小受託事業者の要望を傾聴し対応しつつ、行政による公表資料や、業界別のガイドライン等のあらたな発表があれば迅速に対応するなどの準備が必要でしょう。
支払方法として手形払いが禁止されました。
資金繰りにも影響するため、経営側と取引現場の連携が必要な領域です。
一括決済方式、電子記録債権等を決済手段として利用する場合には、必要事項の明示や記録保存を含めた運用整備が前提になります。
また、振込手数料について、たとえ承諾があったとしても中小受託事業者に負担させることは違法になりました(振込手数料は委託事業者が原則負担)。
現場では、従来の支払慣行として受託側負担になっている条項や運用が残っていないか、あわせて確認する必要があります。
不当な返品、購入・利用強制、報復措置などは従来から禁止されていますが、今一度、現場の運用状況を確認しましょう。
とくに、報復措置は、通報等を契機とした不利益取扱いが問題となる類型であり、経営層の知らないうちに現場でなされていることも想定しうる事項です。
また、執行の面では、公正取引委員会・中小企業庁だけでなく事業所管省庁による指導・助言等が可能になりました。
委託事業者側からすれば、各部門の運用不備が、複数の行政窓口から把握される可能性が高まったと言えるため、全社的にコンプライアンスを意識した管理が必要になります。
取適法対応は、法令の理解だけでなく、日々の発注・受注の実務にどう落とし込むかが鍵となります。
委託側・受託側それぞれが、自社の立場や取引類型を整理したうえで、契約書・注文書・支払条件・価格協議フロー・記録保存ルールなどを総点検し、現場運用まで含めてアップデートすることが求められます。
実務対応の出発点は、自社がどの取引で委託事業者になり、どの取引で中小受託事業者になるかを整理することです。
会社によっては、発注側・受託側の両方の立場を持つため、発注業務、受注業務ごとに一つずつ確認する必要があります。
そのうえで、対象取引、資本金基準(該当しない場合のみ従業員基準)に該当するかどうか確認していきます。
対象取引の理解、従業員数の定義・カウント方法・判定時点に関する情報取得と運用ルールを社内でそろえておくことが、後工程の契約修正やワークフロー整備の前提になります。
資本金基準と従業員基準の要件は、まずはウェブサイト等で取引相手の情報を確認することが考えられますが、インターネット情報は古い情報のままだったり、グループ全体の数字が反映されていたりすることもあり、誤っている可能性があります。
本格的な取引に入る際には、取引相手から書面等によるヒアリングを実施すべきでしょう。
適用対象取引をある程度絞り込めたら、次に取引基本契約書、個別契約書、注文書、見積書等を確認し、発注内容が明示されているか、支払期日は60日以内か、禁止行為に関係する項目を点検していきます。
法令に要求される取引条件をどの書面で満たすかを、実務に即して整理することが重要です。
取適法対応は、契約書の修正だけでは完結しません。
発注、検収、支払、保存の各工程で、誰が何を確認し、どの記録を残すかというワークフローの整備が必要です。
特に電子メールやメッセンジャーアプリ等複数の連絡手段を用いた発注・連絡を使う場合は、保存方法や検索可能性も含めた運用設計が必要になります。
また、管理職・購買・外注管理担当者向けには専門家を交えた研修を通じて、対象取引の見分け方、60日ルール、価格協議時の記録化などを共有することが、実務運用の定着に直結します。
中小受託事業者側では、発注内容、変更要請、見積提出、価格交渉、支払条件に関する記録を、見積書・注文請書・電子メール等で残しておくことが重要です。
特に価格交渉に関するやり取りの記録化は、改正後の実務で意味が大きくなります。
報復措置が行われるおそれに備えて、日常の取引段階でも証拠化を進めておくことには実益があります。
相談窓口の活用を検討する場合にも、事前の記録整理が重要になります。
2026年施行の取適法対応は、対象取引の判定、従業員基準の確認、4つの義務への対応、11の禁止行為(とくに価格協議・支払手段関係)の見直しまで含めて各社が対応し、受発注内容や現場の運用をチェックして進める必要があります。
企業としては、契約書・注文書の修正と同時に、発注・支払・記録保存・価格協議の運用を早めに見直し、管理職・現場担当まで含めて実務対応を整えることが重要です。
この記事では、基本的事項と新法による改正箇所を詳しく説明しましたが、詳細な改正箇所、対象取引の該当性や義務、禁止行為に関する検討や書面への反映については、公正取引委員会の「中小受託取引適正化法(取適法)関係」に関するページや、弁護士への相談もご検討ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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