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税理士、公認会計士など経営関連の士業の登竜門といわれている「簿記1級(日商簿記1級)」は合格率が低い超難関資格。資格取得者が少ないため一般にはよく知られていません。具体的にはどんな資格であり、経理担当者が簿記1級を取得した場合はどんなメリットがあるのでしょうか。
資格検定機関の日本商工会議所は、簿記1級を「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門」と定義しています。また、大企業や大手外資系企業の経理・財務部長クラスの実務に求められる資格ともされています。
簿記1級の検定試験は毎年6月と11月に実施され、受験資格は年齢・学歴・実務経験等の制限はなく、誰でも受験できます。
試験科目は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目(各科目に25点ずつ配点)で試験時間は3時間。100点満点中70点以上が合格です。ただし4科目中1科目でも正解が10点以下だと、合計が70点以上でも不合格になる「足切り制度」があります。
出題傾向は次のようになっています。
| 商業簿記 | 商業簿記の基礎知識と商業簿記の応用力を試す出題が多い |
| 会計学 | 会計の基礎知識と会計の応用力を試す出題が多い |
| 工業簿記 | 工業簿記の基礎知識と工業簿記の応用力を試す出題が多い |
| 原価計算 | 原価計算の基礎知識と管理会計の計算力を試す出題が多い |
簿記1級と簿記2級とでは、合格の難易度が桁違いといわれています。その理由は主に次の4つです。
簿記1級の受験者に求められる知識レベルは「大学の商学部等で簿記を専攻した者が有する知識」といわれています。したがって、受験者は高度な簿記知識を身に着けていることが前提になります。
簿記1級の出題範囲は「簿記2級の3倍」といわれるほどの広さです。しかもただ単に範囲が広いだけではなく、出題の論点も複雑なため解答には論理的な思考力と簿記の正確な知識が必要といわれています。丸暗記ではまず解けないのが簿記1級の出題といえます。
簿記1級は広い出題範囲の中に、難解な論点を解く問題が多数出題されます。暗記した知識で解答できるレベルのものではないので、高度な計算力に加え科目全体の出題内容を正確に理解した上での解答が必要になります。
簿記1級には簿記2級以下の試験になかった「足切り制度」が採用されています。4科目中1科目でも正解が10点以下だと、合計が70点以上でも不合格になる制度です。このため知識不足や苦手論点の出題により10点以上獲得できない科目があると、その時点で不合格になります。得意科目のみで点数を稼ぐ作戦の受験勉強では、絶対に合格ラインを突破できない試験が簿記1級の「超難関」たるゆえんです。
簿記1級の直近5年間の平均合格率は9.9%、過去16年の平均合格率は10.2%になっています。
試験合格に必要な勉強時間は、個人差を含め簿記2級取得者を基準に800~2000時間といわれています。これを日数換算すると、仮に平日2時間、土日各5時間の週20時間を受験勉強に充てた場合、40~100週間、月換算なら9ヵ月強から23ヵ月強になります。勉強時間も簿記2級と比べ5.3倍から8倍の長さです。
簿記1級は国家資格である士業の難関上位に匹敵する公的資格といわれています。それだけに簿記1級試験合格者の評価は簿記2級の比ではありません。特に次の3つの評価が高いといわれています。
大企業・大手外資系企業の経理・財務部長クラスの必須知識といわれる連結会計、退職給付会計、税効果会計、減損会計など高度な会計処理ができる簿記専門知識を身に着けている証明になります。
高度な会計処理を必要とする大企業の場合、簿記2級取得者の就職・転職志望者が多いため、採用選考において大した自己アピールポイントにはなりません。しかし、簿記1級取得者は超難関を突破した実績から能力の高さはもとより、目標に取り組む積極姿勢や意欲、向上心を採用選考で示せます。したがって経理・財務部門の人材補充計画がない大企業・大手外資系企業であっても、総務・経営企画部門、事業本部などの経営管理エキスパートとして採用される確率が高くなります。
大企業・大手外資系企業の場合、その大半が連結会計システムを導入しており、連結会計のデータを入力すれば自動的に連結決算ができる仕組みになっています。したがって経理・財務担当者が連結会計理論を理解していなくても、連結会決算は何の支障もなく作成できる環境になっています。ところが、連結決算において貸借対照表に計上されていない資産・負債などの簿外の取扱を判断する場合や子会社・関連会社の決算を精査する場合、簿記1級レベルの知識と帳簿読解能力が不可欠になります。
この簿記1級レベルのスキルを身に着けた人材は大企業・大手外資系企業といえども経理・財務部長クラスを除けば、それほどいる訳ではありません。ましてや就職・転職市場においては容易に発掘できる人材ではありません。このため、大企業・大手外資系企業の場合、簿記1級取得者の求人が意外に多く、応募すれば採用される確率が高いといわれています。
「大企業の経理・財務部長レベルの実務能力あり」の証明ともなる簿記1級の取得は、大企業や大手外資系企業への経理・財務部門への転職に有利ですが、経理担当者が簿記1級を取得しただけで転職が有利になる訳ではありません。それには「20代から30代前半」の年齢が前提条件になります。
なぜなら30代後半になると、簿記1級を取得しても大企業や大手外資系企業の場合、人材採用ニーズ自体が低くなるからです。さらに、中堅・中小企業の場合、簿記1級はオーバースキルなのでそもそも人材ニーズがありません。
また、経理・会計事務所でキャリアアップや年収がアップしている人は、簿記1級取得だけではなく、プラスで経験やスキルなどを評価されているケースも多いようです。
大企業・大手外資系企業への転職において、経理担当者が簿記1級取得を活かせるのは20代から30代前半です。
したがって30代後半以降で簿記1級を取得した経理担当者は、大企業・大手外資系企業への転職を目指すのではなく、簿記1級の知識を活かせる税理士、公認会計士、中小企業診断士など経営関連の士業へのキャリアアップを目指すのが、簿記1級取得の現実的な活かし方といえるでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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