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国内企業の不正会計は、2020年3月期で101件(日本公認会計士協会調べ)と、前の期から7割増え、5年前の3倍になるなど急増しています。損益や財務を実態よりもよく見せようとする会計処理での不正がなかなか後を絶たないようですが、どのような経緯で発覚するのでしょうか。
百人一首でお馴染みの「しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は ものや思ふと 人の問ふまで」(拾遺和歌集)は、心に秘めてきた恋心が、どんなに隠そうと思っていても、自然と顔や表情に出てしまうことを詠んだものですが、不正会計の発覚はそんなナイーブな恋心とは違うようです。
不正会計とは、財務諸表に意図的な虚偽表示を行い、または計上すべき金額を計上せず、もしくは必要な開示を行わないことをいいます 。株式会社は正確な会計帳簿を作成し、株主に公開しなければなりません。
ところが、赤字であることを隠すため、あるいは黒字を隠すために、虚偽の会計帳簿作成に手を染めてしまうわけです。そうした不正を防止するために、会社法では大企業などに監査法人による会計監査が義務づけられています。
つまり、監査対象となる企業が公開している財務諸表の記載内容が、適正かどうかを独立した第三者機関(監査法人)が監査し、その結果を監査意見として表明することが会計監査であり、株主などの利害関係者に会計の正当性を証明するためのものです。
最近話題となった不正な会計処理問題といえば、2020年4月に発覚した㈱ジャパンディスプレイの、過大在庫の計上、費用の資産化、費用計上の先送りなどの“不適切な会計処理”ではないでしょうか。
ところで、不正な会計を報ずるニュースには、「不正会計」「不適切会計」「粉飾決算」など、似たような言葉で表現されます。これらは同じことなのでしょうか、それとも違うのでしょうか。そして、どのように使い分けているのでしょうか。
「不正会計」は、財務諸表の良し悪しにかかわらず意図的な不正処理で、意図的かどうかはっきりしない場合は「不適正会計」と使い分けているようです。
「粉飾決算」は財務状況を良く見せるためのもので、逆に財務状況を悪く見せるのは「逆粉飾決算」と呼ばれます。こちらも、“不正会計”同様、意図して改ざんや隠ぺいを行ったときに使われています。
不正であれ、不適切であれ、財務諸表の虚偽表示が発覚すれば、企業の信用は大きく失墜します。上場企業であれば、証券取引所から上場廃止や特設注意市場銘柄への移管といった措置がとられることもありますし、刑事責任に問われることもあります。
経営監視の体制が強化され、また、内部通報制度が浸透したことも、不正会計が表面化しやすくなった要因と考えられています。経営財務3321号に「不正会計等の発覚経緯」は“会計監査が約3割”という記事が掲載されていました。
また、東京商工リサーチが、全上場企業に対して実施した「不適切な会計・経理の開示企業」(2020年)によると、開示した上場企業は58社(前年比17.1%減)で、総数は60件(同17.8%減)です。集計を開始した2008年以降では、過去最多となった2019年の70社(上場企業)、73件(総数)を下回っているものの、2020年の年間50社台という数字は決して低い水準とはいえません。
いずれにしても、適切な会計処理を行うことは企業の社会的な責任です。どんなに隠そうと思って改ざんや隠ぺいをしても、必ず発覚してしまうものと心得ておきましょう。
「不適切な会計・経理の開示企業」(東京商工リサーチ)が、2020年に減少となった背景には、コロナ禍で監査法人の監査の多くがリモートになったことも指摘されています。業種によっては経営環境が一段と悪化している企業もあり、果たして2021年3月期にはどうなっているのでしょうか。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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