公開日 /-create_datetime-/
Q:当社の従業員の過失により、回収できない商品代が出てしまいました。
役員から当該社員へ話があり、この方に未回収の商品代を負担させるということになりました。支払い方法は毎月の給与から天引きです。
本人は役員じきじきに話をされたこともあり、また反省もあり「払う」といっていますが、会社としてこれは大丈夫なのでしょうか?
もしこの従業員が返済前に退職になったら?そもそも会社あるいは役員が訴えられたら?疑問ばかり出てきます。
法的な観点と、会計的な観点、労務的な面などそれぞれの見解をいただけますと幸いです。
A:法的な観点から述べさせていただきます。結論からいいまして、両者ともに違法です。
①回収不可の金額を従業員に請求することについて
この件につきましては、会社に生じた損害を従業員に転嫁するものですから、会社から従業員への損害賠償請求と同視し得る(若しくは損害賠償請求権の行使そのもの)と考えます。厳密な説明は、報償責任に基づく信義則上の問題としてなどになり難解になりますので、簡単にいいます。
つまりは、「従業員を使って普段利益を上げているのに、損害を被ったときだけ、従業員のせいにするな」ということです。
極論として、裁判をしても、従業員が適切な訴訟活動をすればですが、勝てることはほぼないと考えます。
仮に、従業員に故意や重大なミスがあったとしても、全額について認められることはまずないでしょう。
②給料からの天引きについて
労働法上の原則として、「給料全額払いの原則」というのがあります。この意味は読んで字の如くです。
給料から一定額の貸付金などを天引きすることは、原則として、この給料の全額払いの原則に反し、違法となります。
例外としては、調整的相殺の場合などがあるのですが、今回はこの例外については、考慮する必要はないと考えます。
簡単にですが、法的観点からは、以上になります。
労働者の損害賠償責任とその制限について
民事上の原則では、従業員が必要な注意を怠り、労働契約上の義務に違反した場合は、損害賠償責任を負うというのが一般的な考えですが、そこにはいろいろな制約があります。
過去の裁判例を見ても、たとえ労働契約上の義務違反が認められた場合であっても、故意や重大な過失があるとき以外は、損害賠償責任は認められていません。また、損害賠償の請求額もかなり制限されているのが実状です。
というのも、事業を進めていくうえで、ある程度のリスクは避けることはできません。
会社は、従業員を雇うことで利益を上げているわけですから、業務上から生じるリスクについても、会社が負担すべきという考え方が、根底にあるようです。
従業員が損害賠償義務を負うケース
では、従業員が損害賠償を負うことがあるのは、どのようなケースでしょうか。
まず、従業員の加害行為によって、使用者に直接の損害を与えた場合、民法上の損害賠償責任を負うことがあります。
たとえば商品や機器、機材の損傷や紛失などによる損害などですが、従業員の行為が労働契約上の債務不履行(民法415条)、または不法行為(民法709条)に該当する場合です。
また、従業員のミスによる交通事故や、取引先をはじめ第三者への損害が発生した場合、使用者は被害を受けた第三者に対して損害賠償責任を負う必要がありますが、民法715条3項に、その負担を従業員に求めることができるとあります。
しかし、その場合、危険責任・報償責任の原則や、使用者と従業員の経済的格差への配慮、従業員の地位・職責・労働条件、加害行為の予防や損失の分散(保険の利用など)について、使用者側の対応判断材料となり、従業員の賠償責任は制限されています。
また、花田亨先生の回答にもあるように、給料から天引きすることは、法律違反となります。労働基準法24条1項には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあります。
従業員のミスで会社に損失が生じた場合、損害賠償請求をすることは可能ですが、認められるケースは少なく、たとえ認められても請求額には制限があります。また、いろいろな法律がからんでくるため、専門家とよく相談して対応する必要があります。
請求書受領サービスの 失敗しない選び方
【新卒採用トレンド】優秀な人事は押さえている!新卒採用3大トレンド
Docusign CLM 導入事例(ウーブン・バイ・トヨタ株式会社)
法務部の負担を軽減!「契約ライフサイクル管理システム(CLM)」のキホンを徹底解説
経理業務におけるスキャン代行活用事例
採用より早い? 最短1週間で法務の即戦力を確保する方法とは【ランスタセッション紹介】
ミッションを“使える言葉”にするマネジメント─理念を文化に変える現場リーダーの習慣
司法書士試験の「科目」を徹底解説!|出題範囲や配点、合格を決める「主要科目」などの勉強戦略を紹介
法務人材不足は「採用」でしか解決できない?―25年の実践から生まれた、組織を強くする次の一手とは【ランスタセッション紹介】
【最大17,000円分】『ManegyランスタWEEK -2025 Summer-』に参加してAmazonギフトカードをゲット!
マンガでわかる!契約業務の課題と解決策 〜解決のカギはCLMにあり〜
「チェックリスト付き」電子契約サービスの失敗しない選び方
電子署名の適法性 ~日本の裁判手続きにおける電子署名の有効性~
どう選ぶ?契約ライフサイクル管理(CLM)ソリューションの選定に役立つ評価チェックリスト
26卒エンジニア学生551名に聞く|志望度が上がる・下がるサマーインターンシップ調査レポート
”自己健康保持義務”を会社は社員にどこまで求められる?~会社は社員の私生活にどこまで介入できるか~
2025年度 宅建の試験日程はいつ?申し込み期間や合格発表など解説【最新情報】
ミッション起点の組織変革が、ウェルビーイングと業績を両立させる理由
製造業における外国人雇用|就労可能なビザ・雇用時の注意点を解説
飲食業における外国人雇用|就労可能なビザ・雇用時の注意点を解説
公開日 /-create_datetime-/