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政府は雇用保険法改正案を閣議決定し、雇用保険料が引き上げられます。具体的には、労使合わせて賃金の計0.9%から1.35%へ、労働者の負担は0.3%から0.5%へ、段階的に上がる予定です。
今回の記事では、雇用保険法改正案における保険料率の変更内容と、その背景について詳しく解説します。また、人事労務部門の担当者が知っておくべき雇用保険の基本や、対応すべきことについても説明します。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁や専門家にご確認ください
目次【本記事の内容】
2022年2月1日、政府は定例閣議において、雇用保険法等の一部を改正する法律案などを閣議決定しました。また職業安定法や職業能力開発促進法などの関連法も一括して改正されるようです。
雇用保険法改正案は、一般会計から雇用保険に財源を投入できる制度を新設することが柱となっています。具体的には、雇用保険料率を段階的に引き上げる内容が盛り込まれています。
現在は、労使合わせて賃金の計0.9%を負担する保険料率です。これが2022年4月から9月は0.95%へ、2022年10月から2023年3月は1.35%に引き上げられるようです。
*保険料率と負担割合は、業種ごとに定められています。今回は一般の事業をもとに解説しています。ほか農林水産・清酒製造、建設などの業種あり。
雇用保険率の経理区分としては、以下の通りにわけられます。
・失業等給付:保険料率は労使折半で計0.2%
・育児休業給付:保険料率は労使折半で計0.4%
・雇用保険2事業(雇用調整助成金など):企業が全額負担で0.3%
このため、労働者が負担する割合は失業等給付の0.1%と、育児休業給付の0.2%を合わせた0.3%です。
<月収30万円が支給されていた場合>
30万円×0.3%=900円が労働者負担となり、給与から天引きされます。
雇用保険料が、引き上げられる詳細はこちらです。
・失業等給付:保険料率は労使折半で計0.6%(2022年10月~)
・雇用保険2事業(雇用調整助成金など):企業が全額負担で0.35%(2022年4月~)
2022年10月以降、労働者の負担は0.3%から0.5%に変更となります。
30万円×0.5%=1,500円が労働者負担(600円増)となります。
保険料率の水準は、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の「雇用保険部会案」において取りまとめられています。
<失業等給付>
令和4年4月から9月までは2/1000、同年10月から令和5年3月までは6/1000 とすべきである
<育児休業給付>
4/1000のままとすべきである
<雇用保険2事業>
原則の3.5/1,000に戻すことが適当である
なお、保険料率が保険年度の途中で引き上げられた場合、引き上げ分の追加徴収をすることが可能です。前例として、2002年は10月に雇用保険率の引き上げが実施され、追加徴収も行われました。今年度も、20年ぶりに追加徴収があるのではないかと危惧する声も一部では上がっています。
今回、保険料率が引き上げになる背景は、新型コロナウイルスの感染拡大および長期化です。特別措置として講じている雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金を含む)の支給額が膨らみ、財政状況が厳しくなりました。
雇用調整助成金とは、「「新型コロナウイルス感染症の影響」により、「事業活動の縮小」を余儀なくされた場合に、従業員の雇用維持を図るために、「労使間の協定」に基づき、「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するもの」です。
雇用調整助成金の主な財源は、企業が負担する雇用保険の保険料を積み立てた、雇用安定資金です。2020年度当初には、1兆5,000億円程度ありました。しかし、コロナ渦で給付が急増して、ほぼ底をつきたようです。
このため失業給付などの積立金からも1兆7,000億円を借り入れたり、一般会計から1兆7000億円を繰り入れたりなど、補正予算案によって追加財源を投入してきました。昨年の12月10日時点で、雇用調整助成金の支給決定額の累計が5兆円の大台を超えたことを厚生労働省が明らかにし、保険料率引き上げが避けられない事態となったのです。
雇用保険料は引き上げられます。しかし、労働者の生活や雇用の安定を図るためには、加入が欠かせない保険です。
そもそも雇用保険法第5条において、雇用保険への加入が義務付けられています。週20時間以上、31日以上働く見込みがあれば、アルバイトやパートでも加入しなければなりません。
労働者が失業やリストラ、もしくは育児・介護などの休業で所得が減少した場合、その生活を支えたり、再就職を支援したりするために重要な強制保険制度です。たとえば、被保険者が条件を満たせば、以下のような給付金が受けられます。
・求職者給付
・就職促進給付
・再就職手当
・就業手当
・介護休業給付金
・育児休業給付金
・教育訓練給付金
・高年齢雇用継続給付金
雇用保険はもともと失業保険と呼ばれてきました。しかし、失業をしなくても、育児や介護などで、給付金を受給できる機会は沢山あります。
雇用保険は、保険料率は引き上げられます。しかし、社会保険料よりも負担は少なく、労働者によっては大きな恩恵を受けられる制度です。人事労務部門としては、加入だけではなく、受給の手続きもスムーズにできるよう体制を整えておきましょう。
とくに近年は、申請を簡素化した電子申請がスタンダードになりつつあります。人事管理のクラウドサービスなどを活用しながら、雇用保険の手続きにペーパレスでかつスピーディーに処理ができるようにしておきましょう。
今回閣議決定した改正内容は、雇用保険料率の引き上げだけではありません。
たとえば、労働者が会社を辞めて起業する場合、失業手当を受け取る権利がある期間を現行の1年から最大4年まで延長する措置が挙げられます。また、インターネットを介して求人情報を掲載する「求人サイト」について国への届け出を義務付ける制度(運営事業者の名称や所在地などの報告)も導入予定です。
労働者が働きやすい職場環境を整備する、そして健全な組織を構築・運営するために、人事労務部門として最新情報を入手しながら、日々の業務に活かしていきましょう。
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