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1952年(昭和27年)に施行された「宅地建物取引業法(以降、宅建業法)」により、主に宅地建物の売買や賃貸を斡旋する者は、宅建業免許の取得が義務づけられました。
これ以降、日本国内での宅地建物取引は宅建業法のもとで行われることになりました。
ところが近年のデジタル化の伸展により、およそ70年前の法律では現実社会には対応できない点が目立ってきたため、2021年に法律改正が成立しました。この記事では新しい宅建業法について、特にテジタル化の観点からポイントを紹介します。
宅地や建物を扱う業種といえば不動産業です。宅地建物取引業とは不動産業の一業務であり、しかも最も重要な業務だともいえます。そのため不動産業を営む事業者は、必ず宅建業免許を所持していなければなりません。
宅建業法では宅建業免許に関する規定と、宅地と建物の媒介契約や代理契約を行う上でのさまざまな規定が条文化されています。また、契約に関連する文書の作成についても詳細に記されています。
全体では非常に規定が多い法律であり、宅地建物の取引に関わる規則なら、どのような細かいことでも明記されています。
宅地や建物のような高額取引では、対面でお互いに契約書を交わすというスタイルが当たり前でした。ところが現在のビジネス環境では、さまざまな分野で電子化(デジタル化)が進行しています。
まず契約そのものが電子契約になり、契約書も電子化され、さらに電子署名も可能になりました。こうした社会の流れに対応するため、政府もデジタル化を推進する方針を示し、2021年9月1日には「デジタル改革関連法」が施行されました。
この法律により、宅建業法上の契約業務についても、今後は電子契約による一貫した取引が可能になります。宅地や建物の取引でも、徐々に対面契約から電子契約へと変化が進むでしょう。
デジタル改革関連法は六つの法律の総称であり、その中で宅建業法改正に関わるのは、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」という長い名前の法律です。今回の宅建業法改正では、電子契約の普及を促進するために、二つの重要な規定が改正されました。そのポイントを順次紹介しましょう。
●押印義務の廃止
まず一つめのポイントは、日本国内での契約には欠かせないハンコに関するもので、正確には押印についてのルール改正です。
法律では非常に難解な表現になるため、なるべくわかりやすい言葉に置き換えて解説します。
これまで宅地建物の取引では、契約に関わる文書内に宅建業者の記名と押印が必要でした。その文書の一つが「重要事項説明書」であり、取引に関連する重要事項について、取引相手に説明するための文書です。
もう一つは「宅地建物の売買・交換・賃貸締結後の交付文書(37条書面)」で、契約成立後に取引相手に対して、主要な契約内容を提示する文書です。
今回の改正で、この2種類の文書に義務づけられていた押印が廃止されました。ただし記名の義務はまだ残っています。
●書面交付の電子化
二つめのポイントは、これまで文書による交付が必要だった書面の一部で、電磁的方法による交付が認められるようになったことです。書面の詳細については省きますが、対象になるのは以下の4種類の書面です。
(1)媒介契約・代理契約締結時の交付書面
(2)レインズ(指定流通機構)登録時の交付書面
(3)重要事項説明書
(4)宅地建物の売買・交換・賃貸締結後の交付文書(37条書面)
これらの書面で電子化が認められたことにより、宅地建物取引における宅建業者と取引先との間では、一連の流れを電子契約で行うことが可能になりました。これで宅建業でもほかの業種同様に、業務のデジタル化が進むことになるでしょう。
今回の宅建業法改正を受けて、宅建業者はこれまでの取引や契約業務を大幅に見直すことになるでしょう。対面でのやりとりは必要最小限に抑えられ、電子書面を使ったワークフローが必要になるはずです。
同時に、電子化された業務システムを構築し、企業内すべての人材に対して、オンラインを用いた業務の進め方を周知させなければなりません。DXのように業務を完全にデジタル化するまでには、ある程度の移行期間も必要になるでしょう。
宅建業法改正の一つとして、日本の伝統的な文化であるハンコ=押印が廃止されたことは、非常に思い切った施策であり、新しいビジネス環境構築のための大きな一歩になるでしょう。これに電子署名を加えることにより、宅建業における取引も完全な電子化に近づくことになります。
ただし宅建業および不動産業界は、扱う物件の金額が大きい上に、契約までに非常に複雑な手続きが求められます。本格的なデジタル業務が広がるまでには、関連する多くの仕組みやセキュリティ対策を整備する必要があるでしょう。
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