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THECOO株式会社は、オンラインマーケティングのコンサルティング事業会社として2014年に創業。以来、インフルエンサーマーケティングのBtoBビジネスを展開してきましたが、2017年にBtoC向けの会員制ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon(ファニコン)」を立ち上げました。
Faniconは、タレントやアーティスト、インフルエンサー(以下アイコン)の活動をコアなファンと一緒に盛り上げていくプラットフォームで、サービス開始からわずか2年半で2,300以上(2022年3月時点)のコミュニティが立ち上がるほど人気となっています。Faniconを運営するTHECOO株式会社は2021年12月に上場を果たしましたが、その陰にはCEOの熱い思いを支える経験豊かなCFOの存在がありました。
今回は株式会社MS-Japanの執行役員である清水をインタビュアーに迎え、THECOO株式会社取締役CFO、森 茂樹氏に同社のCFOになるまでの経緯や上場の際に苦労したエピソード、今後のバックオフィスの役割やあり方について伺いました。
(清水)
まずは簡単に、森さんのご経歴を教えていただけますか?
(森氏)
私の生まれは京都で、育ちは神奈川です。高校卒業後は慶應義塾大学の商学部に進み、卒業後5年ほどして南カリフォルニア大学でMBAを取得しました。アメリカでMBAを取得したのは、一回り年の離れた叔父の存在があったからです。もう亡くなってしまいましたが、当時は日債銀に勤務していてニューヨーク駐在、後にヘッジファンドに転身して英語も堪能だった。とにかくカッコ良かったんです。
そんな叔父に影響を受けて、私はアメリカに対する憧れが強かった。アメリカに行きたかったがゆえに、就職先もそれを念頭に選びました。まずは新卒の就職先はUBS(スイスに本拠を置く、スイス最大の銀行グループ)、それを一年もせずに辞めてGM(ゼネラルモーターズ)に転職しました。自宅のある神奈川から大手町まで通いながらお金を貯め、GMATとTOEFLのために必死で勉強しましたね。本当は社費で大学院進学を希望していましたが、まだ若輩者の私には許されませんでした。仕方なく休職して渡米していましたが、どうしても学費が足らなくなり退職金を受け取るために退職しました。今思うと、ひどい社員ですね(笑)
(清水)
MBA取得後はやはり外資に?
(森氏)
はい。化学王手のダウケミカル、言わずと知れたアップル(当時の社名はアップルコンピュータ)、医療機材のガイダント(在籍中に買収)、米国の投資信託会社フィディリティと転々としました。一貫していわゆるビジネスファイナンスを経験しました。ファイナンスといっても、外資でいうコントローラー、もしくはFP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)というとわかりやすいかもしれません。ただしここで大きく人生が変わります。
(森氏)
リーマンショックの影響を受けて会社が方針を変え、会社都合で辞めることになったのです。ちょうど37歳の時でもちろんその後再就職しましたが、そこから3社連続、会社都合(日本からの撤退や合併解消など)で辞めることが続きました。そのたびに数カ月分の給料は渡されるので生活はなんとかなりましたが、4、5年は不遇の時代が続きましたね。キャリア的に美しくはないし、ある転職エージェントからは森さんのキャリアは終わっていると言われました。
(清水)
ひどいことを言うものですね。でもそこからどうやって軌道修正を?
(森氏)
自分の人生の風向きを、変えなきゃいけないと思いました。主にそれまでは完成された財務諸表を下に将来の経営計画を作るなどの仕事に就いていましたが、袖をまくってもっと川上から携わる仕事を経験する必要がある。デシジョンメイクばかりでは今の経済環境ではダメだと思ったのです。ただし年齢やキャリアもあるし、外資では同じことしか経験出来ないし、今更日経の大手は難しい。ならばスタートアップしかないと思いました。ちょうどそのタイミングで知り合いから声がかかり、国内資本のスタートアップ企業でアパレルECを受託するルビーグループに転職したのです。
資金調達を手伝ってくれと言われて転職したのですが、VCとのやり取りに加え内部統制全般の構築、金融機関対応、予実管理なども必要になるので、今まで自分が経験してきたことに加えて、MBAで学んだ知識も役に立ちました。ただ外資では外部からの資金調達は少なかったので、日系企業の資金調達の常識や作法を身につけるのに多少時間がかかりました。もっともファイナンスには正解がありませんから、ゴールを見据えて最適の方法を考え出して、エクスキューションすることが必要でした。特にビジネスサイドのファイナンスで経験を積んできたため、事業理解は得意でファイナンス目線で金融機関に自社のサービスや成長可能性などの説明ができたことは功を奏したと思います。FP&Aやマーケティングの経験が活かせました。
(清水)
ルビーグループでも上場準備を経験されていますか?
(森氏)
ルビーグループでは、スタートアップが急成長するのを体験でき、上場準備も少しかじることが出来ました。でもこれは入門編としてとても良い経験になりました。
(清水)
THECOOにはどのような経緯で参画を?
(森氏)
ルビーの役員陣と(現CEOの)平良は、元同僚で旧知の仲でした。またTHECOOは創業時にルビーグループから出資を受けているのです。ある時、両社が資本関係について議論を重ねていたとき、自分が平良とやりとりをする中で、平良が自分の為ではなく、当時のTHECOOは(当時の社名はルビー・マーケティング)小さい所帯でしたが、メンバーのことを一生懸命考え、また、本当に良いサービスを作りたいという気持ちで事業に臨む彼の姿勢に惹かれました。
ルビーグループはその後、一部上場の会社に売却しました。その方向性が見えた頃に、平良からTHECOOに誘われるのですが、確か、それまでに食事を5回以上していると思います。平良は経営者として会社に対する誰にも負けない熱い思いを持っている。ハード面もソフト面も兼ね備えている人だと思いました。CFOはある意味CEOと心中する決意がないと出来ないと思います。その点においては、この人となら成功も失敗も分かち合えると思いました。
(清水)
それでTHECOOに参画された。THECOOもその時から上場を目指していたのですか?
(森氏)
はい。CEOの平良は自分でこの事業を育て上げることを望んでいて、上場しかないと僕が入社する前からメンバーに話していたようです。すでに外部から資金も調達していたし、僕が入ったタイミングで本格的にFaniconが立ち上がりました。前職(ルビーグループ)では小さな会社が急成長するのを見ていたので、THECOOにも同じ成長のステップを順調に踏んでいくイメージが持てました。事業内容はもちろん、平良と平良を支えるメンバーの人となりでそう確信しました。
(清水)
貴社は2021年12月に上場されましたが、上場に当たってご苦労されたことはありますか?
(森氏)
上場準備するに当たっては、内部統制面において平良を説得するのが大変でした(笑)。「自由と責任」を標榜している会社組織ですので、上場するために必要な決め事をいかに社内に浸透させていくかは大きなチャレンジでした。私もいろいろな方から情報を収集し、平良にインプットし、コンプライアンス、ガバナンス上、絶対に必要なことなんだ、と何度も議論をしました。最終的にはその過程を経たことで、良い風土を残して上場できたので、今思えば会社のカルチャーを守るためにも必要な時間だったと考えてます。
(清水)
上場したTHECOOは、これからどのような方向に進んでいくのでしょう?
(森氏)
会社としては今取り組んでいることをまだ数年は続けていこうと考えています。理由としては、当社の目の前にあるマーケットが非常に大きいからです。具体的には、Faniconのアイコンをどんどん獲得して、色のついていないマーケットを取りに行きたいです。あとはWeb3.0への対応です。Web3.0はまだ法的な部分や会計的な部分が実情に追いついていないと考えています。ビジネスサイドにいた経験から攻め時の重要性を理解している一方で、管理部門の長でもあるので、上場会社として慎重さも求められます。これからも引き続き未知の世界で闘っていくので、日々学習し、また、知人やビジネスパートナーから色々教えていただき、成長と変化を続けていきたいと考えています。
それからBtoB(インフルエンサーマーケティング/オンライン広告のコンサルティング)とBtoC(Fanicon)のシナジー創出ですね。今はそれぞれ独立した事業で、在籍しているメンバーの個性もぜんぜん違うのですが、両事業のアセットを有効に活用することで、シナジー効果を出せると考えています。結果、会社の価値をどうやったら上げていけるのか、中期的な視野に立って日々考え、行動しています。
(清水)
弊社ビジネスメディア「マネジー」のユーザーは管理部門の方が中心となります。そのような管理部門の方々へ、これまでのご経験からメッセージをいただけますでしょうか。
(森氏)
各社のCFOは、会社の枠を超えて横でつながって、切磋琢磨ができる環境があります。一方で部長、課長クラスの方は社内に目を向けることがポジション的にも多いせいか、社外との接点が少ないと思います。ネットワークを構築して、情報のインプットやアウトプットがとても大切だと考えています。監査法人や証券会社、顧問など利害関係のある人だけではなく、第三者からの意見も大切です。管理畑の人は外に出たがらない人が多いので、少し行動するだけでも自分の価値を高められると思います。特にスタートアップに就業している方は積極的に外に出て、情報を取りに行かないといけません。守秘義務も確かにありますが、自分の中にたくさんのオプションを作っておくべきです。
あと職位を上げていくことを目指すのであればもちろんスキルや経験も必要ですが、もっと必要な事はビジネスサイドの理解をフロントの人間と同じくらい、持つ事だと思います。その上で管理・コーポレート部門のプロとして自分の意見をしっかりと言えることが大事なのです。つまり、管理・コーポレート部門の業務だけにキャリアとしてこだわらない姿勢も必要じゃないかと思います。
(清水)
最後に、THECOOという会社の魅力を教えていただけますか?
(森氏)
当社はいわゆるスタートアップで、前職が同じでいわゆる「同じ釜の飯を食った」人達が中心となり、さらに世の中に新しいもの、良いものを提供したい、という強い志をもった仲間がたくさん集った集団です。そのため、組織としては安定感がありながらも常に変化を求められています。部門要所要所の人間が、良い意味で仲が良く、なんでも言いたいことを言って健全な議論ができます。私のいる管理部門を含め社員全員がユーザー目線で仕事をすることを共有できている点は魅力と考えています。
それと私の想いとしては、今の時代、一つの会社に定年まで居続ける人は少ないと思うので、いろいろな理由で当社を去った人でも、後になってあの会社で働いていた時は楽しかったな、とか、あの会社で働いていたから今があるな、と思って貰えるような会社にしたいと思っています。
―以上になります。本日はありがとうございました。
今回のインタビューでは、外資系企業のビジネスサイドの経験、複数回の転職で一度は「キャリアが終わっている」と言われましたが、スタートアップで幅広い経験と行動力を活かし、CFOとして独自の価値を発揮している森さんにお話を伺いました。
そのご経験から、これからの管理部門人材は社内だけでなく、社外に出て多くのインプット、アウトプットを経験すること、そして自分の担当業務だけでなくビジネスそのものを知ることが重要ということを学ぶことができました。
森 茂樹(もり しげき)/ THECOO株式会社 取締役CFO
京都府生まれ、神奈川育ち。
1994年、慶應義塾大学商学部卒業後、2000年に南カリフォルニア大学にてMBAを取得。 外資系企業数社にて、マーケティング、経営企画、ファイナンスの要職を経て、ファッションアパレルEコマースの受託開発・コンサルティングを手がけるスタートアップに転身。執行役員経営管理本部長として管理部門構築、資金調達などに携わった。
2018年11月よりTHECOO株式会社の取締役CFO兼コーポレート本部長に就任し、2021年12月の上場を達成した。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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