公開日 /-create_datetime-/
Q:遅刻をすると1分につき100円という社内ルールが存在します。
天引きではなく、その場で現金で支払う仕組みです。
社内規定で定められているとはいえ、こちら問題ないのでしょうか。労基に行けば会社に罰則が与えられますか?
よろしくお願いします。
A: 遅刻をした場合の罰金について、違法ではないかとのお問い合わせですね。
まず前提として、労働時間1分当たりの給与単価を算出し、遅刻をした時間分の給与を差し引くことは問題ございません。(ノーワークノーペイの原則:就労しなかった分の賃金の支払いは免れる)
しかしながらそれ以外に、「罰則」として従業員様に制裁を与えることは、労働基準法第16条「賠償予定の禁止」規定によって、原則禁止となります。
この16条は、従業員様側に労働契約違反があった場合、違約金を定めることを禁止している規定です。(お問い合わせの件ですと、1分の遅刻で100円の罰金を課すこと)
ただし、同法91条「制裁規定の制限(減給の制裁)」により、次のポイントがクリアになれば、罰金も可能です。
①(減給の制裁が)就業規則に定められている
②減給の1回の額が、(その従業員様の)平均賃金の1日分の半額以内
③減給の総額が、1賃金支払期における(その従業員様の)賃金の総額の10分の1以内
④罰金の目的が合理的(社内秩序を守るためなど)
⑤罰金を課す理由が社会通念上相当(遅刻の理由によっては減免すべき)
遅刻の理由を問わず、一律に罰金を課すのは、合法とは言えません。
また、1分遅刻で100円ですので、仮に1時間遅刻をしたら、罰金は6,000円です。月給200,000円の従業員様は、減給の制裁の限度額を超えてしまいます。
遅刻の罰金制度については、上記の限度額を管理できればもちろん有効です。しかし額の管理となるとなかなか大変なところです。
1賃金支払期の総額の10分の1の賃金額に値する限度時間を設け、1分の遅刻を15分単位に切り上げる会社様もございます(1分遅刻したら15分分控除、16分遅刻したら30分分控除)。
また、遅刻をした場合には、その従業員様の評価にも影響させましょう。
ありがちな職場ルールだが法律違反になる場合も
遅刻をすると罰金というのは、ありがちな職場ルールですが、法律違反になるケースもあるので注意が必要です。
もちろん、罰金=法律違反というものではありませんが、職場の雰囲気や罰金額によっては、ブラック企業のレッテルを貼られるケースもあり、訴訟に発展することもあります。
しかし、遅刻が多い社員がいると、職場の秩序を保つことができません。社員の勤務状態を監督する立場の管理部門が、職場の秩序を守るために、罰金というルールを設けたくなるという心情も、理解できないわけではありませんが、そこには西方先生が指摘するように、法の規制があります。
罰金制度にまつわる法律
罰金制度にかかわる法律は、労働基準法第16条と第91条です。
労働基準法第16条(賠償予定の禁止)
「使用者は労働契約の不履行について、違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」
労働基準法第91条(制裁規定の制限)
「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」
ノーワーク・ノーペイの原則
ノーワーク・ノーペイの原則とは、「労務の提供がなければ、会社側に賃金の支払義務がない」という、給与計算の基本原則です。
労働契約法第6条が定める労働契約は、労働者による労務の提供と、使用者による賃金の支払契約です。ですから、労務の提供がなく、それが労働者の責任による場合は、賃金の支払義務も原則として生じないというものです。
遅刻者にペナルティよりも無遅刻者に特典
職場の秩序を守るためには、ある程度のペナルティも必要です。でも、罰金がいいのかとなると、いささか疑問も残ります。たとえば、全米テニスオープンで優勝した大阪なおみ選手とコーチの間のペナルティは、渋谷の交差点でダンスの披露や、苦手な納豆を食べるというものでした。
最近、スポーツ界で次々と明るみになるパワハラや暴力問題をみても、厳しさが必ずしもレベルアップにはつながらず、マイナスに作用しているケースが目立ちます。
ペナルティを与えるよりも、無遅刻者や無欠勤者に報酬なり、特典を与えた方がより効果が上がるという指摘もありますので、もし、罰金などのペナルティを設けているのなら、見直してみてはいかがでしょうか。
日本の裁判手続きと電子署名
顧問契約書/コンサルティング契約書の作成で気を付けておくべき事
失敗しない! 産業医選任の手引き
新型コロナウィルス問題と見直しておきたい契約条項
押印に合わせた電子署名形態の選択
大企業法人の経理担当必見!5月の税務ガイド
資生堂が男性の育休取得率100%を達成 社内の風土づくりが奏功、育休からの復職率も92%
「DE&I」を推進するコーセー、“同性パートナー”を持つ人も人事制度・福利厚生の対象に。その取り組み事例とは?
定時株主総会の事前準備総まとめ、各部門担当者の役割と業務上のポイントを解説
企業内大学とは?作り方から導入事例まで徹底解説します
<人的資本開示 実践編 > 人的資本と組織サーベイ
三菱総研DCSが取り組む「ダイバーシティー経営」への第一歩
明日からできる業務改善 ~良くわかる業務整理のガイドブック~
5社比較表付き!電子帳簿保存システム選び方ガイド
契約書のリーガルチェックの重要性と6つのチェックポイント
noteと弁護士ドットコム、炎上させない仕組みづくりに共同プロジェクトを立ち上げ
AGSクライアントの商材・サービス紹介サイト開設のお知らせ
【障がい者雇用】2024年4月の法定雇用率「2.5%」引き上げ、上場企業の約3分の1が“未達成”見込み。充足に向け必要な対策とは?
管理部門・士業に聞いた!「残業」の実態調査2024
健康経営の基礎知識。概念や取組・制度など基本情報を紹介!
公開日 /-create_datetime-/