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先日、民間のシンクタンクが年代別意識調査の結果を公表し、注目を集めています。
その結果によると、働くことについての考え方を尋ねる質問では、高校生、大学生、20代の会社員の約7~8割が差別・偏見のない職場で働きたいと答え、複数ある項目の中での最多回答となりました。職場には多様な差別や偏見が存在すると考え、それによるハラスメントを受けることを恐れている若い世代が多いようです。
そこで今回は、職場に存在する差別や偏見とは何かについて、深く掘り下げて解説していきます。
目次【本記事の内容】
ハラスメントとは、職場における嫌がらせやいじめのことです。1980年代頃からセクシャルハラスメントやパワーハラスメントが問題視されるようになりましたが、現在では差別や偏見に基づく多様なハラスメントが社会問題として浮上しています。
現在一般化されつつあるハラスメントの種類としては以下が挙げられます。
・パワーハラスメント……上司から部下、先輩から後輩など、職場での上下関係に基づく権力を背景としたハラスメント。
・セクシャルハラスメント……性的な言動、プライベートのこと、容姿等について傷つける発言をしたり、態度を取ったりすること。男性から女性、女性から男性のどちらのパターンもある。
・セカンドハラスメント……ハラスメントを受けた人が、受けた事実を理由として上司や同僚から二次被害を受けること。セクシャルハラスメントを訴えたなどの事実をもとに嫌がらせをされるなど。
・モラルハラスメント……意見・提案の全否定、実行不可能な仕事の押し付けなど、精神的な嫌がらせ。
・リモートハラスメント……Web会議からのけ者にする、Webカメラに写った自宅内をチェックするなど、リモートワークで生じるさまざまな嫌がらせ。
・ジェンダーハラスメント……女らしさ、男らしさなどを求める嫌がらせ。「男のくせに力がない」「女のくせに気が利かない」などの発言。採用条件・人員配置で男性を優先するなど。
・アルコールハラスメント……無理にお酒を飲ませることによる嫌がらせ。一気飲みの強要など。
・スモークハラスメント……喫煙者が受動喫煙させる、喫煙を強要するなどの嫌がらせ。
・マタニティハラスメント……妊娠、出産、子育てを理由とする嫌がらせ。精神的にストレスを与える発言や態度、人事・待遇の不利益など。
・テクノロジーハラスメント……ITスキルの高い人が、低い人に対して行ういじめ、嫌がらせ。
・スメルハラスメント……口臭、体臭、香水によって周囲の人にストレスを与えること。
・リストラハラスメント……リストラの対象となった人に対するいじめ、嫌がらせ。
ハラスメントの種類は実に多様ですが、実際のところ、明らかにハラスメントだと指摘できるような分かりやすい嫌がらせについては、社会的な意識の高まりもあって、企業内で対処してくれることが多いようです。
たとえば、2020年6月1日に施行されたパワハラ防止法では、各企業に対してハラスメント対策のための相談窓口の設置が義務化されています。中小企業については2022年3月末までは努力義務でしたが、2022年4月からは中小企業においても大企業と同様に義務化されました。
しかし、ハラスメントには、わざわざ相談窓口で相談するまでもない、ちょっとした言動や態度が含まれる場合が少なくありません。何気ない会話の中でハラスメントにあたるような言葉、態度があっても、その場ですぐに「これはハラスメントにあたるね、ごめんなさい」などと言われると、窓口に大々的に訴えて問題化する気が起きなくなるかもしれません。
こうした、いわば「グレーゾーンのハラスメント」は、制度を整えたり、相談窓口を設置したりしても、なかなか改善しにくい部分があります。
自分では気づかないまま心の中にもっている偏見や差別のことを「アンコンシャス・バイアス」といいます。ビジネスシーンでは、女性管理職、外国人労働者、非正規社員、高齢者、LGBTQ+などに対してもたれることが多いです。このような差別・偏見をなくし、ダイバーシティを実現することは、国連のSDGs(持続可能な目標)の中でも定義づけられ、各企業においても取り組みが進められています。
アンコンシャス・バイアスは、先入観や固定概念、組織文化、慣習・常識などによって生み出されます。アンコンシャスとは英語のUnconsciousをカタカナ語にしたもので、日本語訳では「無意識」という意味です。つまり、意識して差別・偏見をもたないよう心掛けていても、無意識レベルでもっているために、本人も気づかないうちに発言や態度の中で相手にストレスを与えてしまう恐れがあるわけです。
自分が無意識のうちにもっている差別・偏見が、ちょっとした発言や態度に思わず出てしまうことを「マイクロアグレッション」といいます。日本語で直訳すると「最小の攻撃性」であり、その名の通り、ハラスメント行為として大々的に取り上げられることはないような、普段の日常会話・日常業務でみられる偏見・差別意識が感じられるささいな言葉や態度のことです。
たとえば、普段から仕事上でお世話になっていて、接し方も優しい男性上司が、「女性が入れてくれた方がおいしいから、お茶を入れてくれる?」とたまたま言った場合を考えてみましょう。厳密にいえば、これはジェンダーハラスメントですが、言われた本人はこのことをいちいち窓口で相談したり、「ハラスメントを受けている」と社内で声を上げようとはしないのではないでしょうか。しかし、この男性上司は女性の部下に対して、差別・偏見意識に基づくマイクロアグレッションを行っているといえます。
無意識レベルの偏見・差別であるアンコンシャス・バイアスに基づくマイクロアグレッションは、個々については「わざわざ相談するまでもない」とも思える事案であるため、相談窓口など公的な対策・制度では対応しきれない面があります。しかし、日常のシーンで事あるごとに直面し続けると、ハラスメントを受ける側からすれば、精神的なストレスを受け続けていることになるのです。
アンコンシャス・バイアスをなくし、マイクロアグレッションを生じさせないようにするには、従業員の考え方や価値観、組織文化、慣習を、時間をかけて改善する必要があります。
対策の一つとして挙げられるのは、啓発活動の促進です。社内研修を実施し、具体例などを通してアンコンシャス・バイアス、マイクロアグレッションに関する理解を深め、各人に当事者意識をもってもらうことが大切です。
また、研修時の資料とするためにも、アンケート調査を実施することも重要になってきます。アンケートは匿名で書けるので、顕在化していない問題を発見する上で有効です。特に若い社員は職場では声を上げにくい雰囲気もあるため、匿名調査によって告発を拾いやすい傾向にあります。
アンケートの結果、問題が深刻であることが分かった場合は、対策委員会を設けるなどして解決に乗り出す必要があるでしょう。
職場における差別や偏見に基づく嫌がらせは、目に見えて分かるような明確なものだけではありません。日常的に小さな針で刺すように生じる、アンコンシャス・バイアスによるマイクロアグレッションも、働く人に少なからずストレスを生じさせます。
現在、明確なハラスメントに対しては制度上でも対策が整えられ、各企業では相談窓口が設置されています。しかし、それだけでは対応しきれない、無意識レベルでの差別・偏見に基づく「小さな嫌がらせ」が、職場の組織文化として行われている可能性があります。若者が感じる職場における差別・偏見の不安もこの点にあるとも考えられ、企業・管理者側としては実態把握・対策を講じる必要もあるのではないでしょうか。
■調査データ概要
調査地域 :全国
調査対象者:男女16~84歳のT会員
有効回答数:11,033サンプル
調査期間 :2022年6月23日(木)~2022年6月30日(木)
実査機関 :CCCMKホールディングス株式会社
調査方法:インターネット調査(Tリサーチ)
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