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2015年設立の株式会社東京通信は「人々の心を豊かにするサービスを創造し続ける。」というVisionでゲームアプリ開発やプラットフォーム運営など幅広いインターネットサービスを展開しています。
多様なサービスを展開する同社に、複数企業での役員経験や企業投資、経営戦略の経験を買われて、2022年6月に取締役CFOに就任した赤堀政彦氏にこれまでの経歴、CFOやこれからコーポレート部門に求められる能力についてお話を伺いました。
インタビュアーは株式会社MS-Japan執行役員の清水悠太が勤めました。
<プロフィール>
赤堀 政彦(あかほり まさひこ)
2009年3月 慶應義塾大学 経済学部卒
2009年4月 株式会社シーエー・モバイル(現株式会社CAM)入社
2010年9月 セレンディップ・コンサルティング株式会社
(現セレンディップ・ホールディングス株式会社)入社
2016年3月 同社取締役就任
2018年6月 株式会社MIEコーポレーション 社外取締役就任
2019年5月 株式会社マネジメントソリューションズ入社
2020年6月 株式会社グローバルウェイ 取締役就任
2022年3月 株式会社東京通信 社外取締役就任
2022年6月 株式会社グローバルウェイ 取締役監査等委員就任(現任)
2022年7月 株式会社東京通信 取締役CFO就任(現任)
――(清水)まずは、赤堀さんのご経歴を教えていただけますか?
私の出身は愛知県です。1985年生まれで、大学入学と同時に東京に来ました。学部は経済学部だったのですが、「M&A」に強い興味がありましたので、就職活動では証券会社やコンサルティングファームを中心に受けていました。
――(清水)投資銀行系志望だったんですね。でも、入社されたのはシーエー・モバイルですが、Webコンテンツサービス関連の会社ですよね?
そうですね。サイバーエージェントの子会社で、エンタテインメントやライフスタイルメディアを中心としたwebサービスや広告サービスを展開している企業でした。一般的に新卒がM&Aに関わることは難しいと思いますが、M&Aに関与できる部門で採用いただけるという募集だったので、「こんなチャンスは無い」と思い入社を決めました。
ただ、2008年後半に起きたリーマンショックの影響を受けて、入社早々に部門が縮小されることになり、結果1年ほどで転職を決意しました。
――(清水)世間的にはリーマンショックで不景気になっている最中ですよね。チャレンジングですね。
新卒の時も「やりたいことを実現する」という視点でシーエー・モバイルに入社したので、迷いはありませんでした。
そのため、少人数ながらもコンサルティングを実施しているセレンディップ・コンサルティングに転職しました。ところがこの会社も、入社から2年ほどで事業承継企業の譲り受けと経営者の派遣に軸足を移すことになってしまうのです。世の中、上手く行かないこともあるものです(笑)。
結局、この会社は企業投資、経営者派遣を中心に事業展開することになり、私は投資先企業を探し、そこに常駐して会社の改善をする仕事をすることになりました。
――(清水)想定とは違ったものの約9年務められたので、やりがいはあったのでしょうか?
やりがいというよりは、私の価値観が大きく変わるターニングポイントともいえる出来事があったのが大きかったです。
具体的には、初めて投資した案件で、私だけではなく会社のビジネスモデルを変える転機にもなった仕事でした。関東・中部エリアに展開するベーカリーチェーンの再生案件を請け負うことになり、私が担当することになりました。
私自身、初めて事業会社でコーポレート部門の責任者を務めたのですが、結果だけみると1年で黒字転換に成功し、セレンディップ・コンサルティングとしても、大きな投資リターンを得ることができました。
――(清水)さすがですね。この成功体験が今のCFO職につながるのですか?
残念ながら違います(笑)。
実は再生の途中で、どうしても儲からないテナントが複数店舗あることがわかりました。ただ、その店舗は、ある大手チェーンストアに入っていて、事業の立て直しのためにはチェーンストア本社と条件面の交渉が必要になり、もちろん、その交渉は担当の私が勤めることになりました。
採算が悪いとは言え大口ではあったので、当然交渉には慎重を期したつもりだったのですが、話がこじれてしまい、最終的に全店舗がチェーンストアから撤退することになってしまったのです。全社売上の6分の1程度を占めていたものが、一瞬で無くなってしまう事態に陥りました。当時の私は27歳で、これらの交渉に死ぬほどドキドキしたのを覚えています。
――(清水)普通の27歳が経験する体験ではないですね。
そこからは必死に対応策を練り、人員の整理や再配置などハードな経営判断も行いました。結果的には赤字改善にも繋がったので、事業を立て直すことができました。これは大変重要なターニングポイントでした。今でも苦い思い出としてこの経験は忘れられませんね。
とはいえ、私としてはこの経験が、経営判断をすることや事業に責任を持つような仕事に携わる第一歩となりました。正直、成功体験よりこのような失敗体験が私にとっては成長の機会になっています。その後、セレンディップ・コンサルティングでは投資事業やコーポレート部門を任されて様々な経験を積ませていただき、現在のCFOとして基礎が築けたと考えています。
――(清水)その後はもう1社で経営企画部長を経験された後に前職のグローバルウェイに入社されていますがこちらではどのような経験を積まれましたか?
グローバルウェイでは、取締役コーポレートサービス本部長として、会社全体のコーポレート部門を統括しました。2016年に上場して以来、売上よりも将来への投資を積極的に行っている段階が続いており、私は決算・開示体制の構築、各種指標の可視化、資金調達、経費コントロール、予算管理制度構築などをミッションとして、更なる積極投資を支える体制整備をしました。いわゆる第二創業期だったと思います。
赤字の事業もあり、コーポレート部門の立場だと、お金を使えない中でさまざまなことを考えるのは、大変ですがやりがいがありました。利益が出た時を見越して、その資金をどう活かすかを考えるのも楽しみでしたね。
――(清水)順風満帆に思えますが、このタイミングで現在の東京通信に参画されたのは何故ですか?
グローバルウェイから転職したわけではなく、取締役監査等委員として引き続き関与しています。ただ、同社に私が入社した時に求められていた黒字化は達成されて、ここからは事業を着実に伸ばしていく段階に入ったと考えています。その段階では、必ずしも私がCFOとして関わる必要性がないと考えました。
それと、これはわがままな理由になりますが、私自身の性格から新しいことに挑戦したいという気持ちが常にあり、必要な部分での関与を残しながら新しいチャレンジをさせてもらうことになりました。
――(清水)求められる場所がありながらも、チャレンジをするというのは理想的なキャリアの作り方と思います。改めて東京通信ではどのような役割を担っているのですか?
東京通信も状況は違えども、グローバルウェイと同じく第二創業期にあると考えています。
現在は「カジュアルゲームアプリ」というイメージが強く、その事業が主な収益源の一つになっていますが、実際には複数の事業を展開しておりますので、それぞれの事業がシナジーを生むような展開を目指しています。
――(清水)赤堀さんの新しい挑戦が楽しみです。最後に、赤堀さんが目指すCFO像を教えてください。
私は経済学部出身で、会計関連の資格は持っていませんが、CFOという役割を拝命しています。キャリアを考えた時にもちろん資格があるに越したことは無いので、資格取得を目指して専門性を磨くことも重要だと思います。ただ、CFOなどの経営幹部を目指すのであれば、会計だけの視点では務まりません。
ビジネスや経営の観点から会社をどうしたいのか語れるようにならなければいけないと思います。決してカッコイイ仕事ではありません。面倒くさいことも多いし、泥水をすする覚悟も必要です。
自分が事業に責任を持つことが求められるので、実際には会計とかファイナンスだけではなく、ビジネスや他のコーポレート機能を理解し、必要に応じて自分自身で対応することが大切です。
もしCFOを目指したいのなら自分の強みになるスキルを持ちつつも、いつまでもそのスキルに固執するのではなく、積極的に幅を広げる必要があります。究極的にはCFOはゼネラリストの道だと思います。
実際に変化の激しい時代なので、特定の専門知識やスキルがあっという間に価値を失うこともあります。興味があることには積極的に首を突っ込んで、自分の力にして欲しいです。
――(清水)以上になります。本日はありがとうございました。
好奇心に素直に向き合いいつまでもチャレンジを続ける赤堀さんに、これからの時代のCFO像のヒントをいただきました。一見、ネガティブな変化やハードシングスも、自分の経験値に変えていく力を付けることが、専門知識や資格を活かす根幹の能力なのかもしれません。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division / 執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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