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岸田総理が所信表明演説内で「今後5年間で1兆円投入する」と発言し注目され、2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされた「リスキリング」。 近年よく耳にする言葉ですが、詳しい事情は分からないという人もいるのではないでしょうか? 本記事ではリスキリングの定義や日本企業での実態について説明します。
目次【本記事の内容】
経済産業省では、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。 就労と学習を繰り返すリカレント教育とは違い、リスキリングは業務と並行してスキルを習得していきます。
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現在、データやデジタル技術を活用し、業務プロセスや製品、サービス、ビジネスモデルなどを変革していくDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されています。
一方、多くの企業で「中心になってDX戦略を進められる専門性の高い人材」が不足しているのが現状です。実際に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の『DX白書2021』によると、「多くの日本の企業が変革を担う人材の量と質が不足している」と考えています。
そのような中、リスキリングによって「デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように、多くの従業員の能力やスキルが再開発される」ことが期待されるようになりました。
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デジタル人材確保のために注目されているリスキリングですが、現在の企業の取り組みはどのようになっているのでしょうか。
総合転職エージェントの株式会社ワークポートが117人の人事担当者を対象に実施したアンケート調査*によると、デジタル人材について、17.9%の企業が「充足している」と回答していますが、41.9%が「やや不足している」、40.2%が「大幅に不足している」と答えています。
また、デジタル人材採用については、69.2%が「課題を感じている」ことが明らかになりました。デジタル人材育成については、35.9%が「取り組んでいる」と回答していますが、「取り組んでいない」が36.8%、「検討中」が27.4%であることも分かりました。
上記の結果から、多くの企業がデジタル人材の不足を実感しながらも採用や育成に難航していることが見てとれます。日本の企業が抱える課題解決のために、今後ますますリスキリングが注目されるのではないでしょうか。
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企業主体でリスキリングを進めるメリットについて、次のような効果が期待されています。
アンケート結果を紹介したように、多くの企業がデジタル分野を中心に人材不足に悩んでいます。採用活動を行ったとしても、理想の人材に巡り合えるとは限りません。リスキリングで内部人材を確保できれば、積極的にDXを促進できるようになります。
また、内部人材の育成は採用コストのカットや余剰人員発生防止の観点からもメリットがあるといえるでしょう。
外部人材を採用した場合、独自の社内ルールなどを理解してもらうのに時間がかかります。また、貴重なスキルを有しているからといって待遇を厚くすれば、既存の社員との軋轢が生じる可能性もあるでしょう。
社員を対象にリスキリングを行えば、企業理念や方針、風土などに精通している人材を確保できます。これまで培ってきた社内文化を継承しやすいという点でもリスキリングは効果的でしょう。
リスキリングはDXをはじめとして、企業のさまざまな取り組みを促進できます。従業員のスキルが向上してイノベーションが起きれば、これまでになかったアイデアが生まれてくるかもしれません。
時代に対応したビジネスの創出は企業の基盤強化にもつながり、従業員へ利益が還元されるという良いサイクルが発生することも期待できるでしょう。
実際に企業がリスキリングに取り組むためのステップについて紹介します。
まずは「何を誰に学ばせるか」を明確にしなければなりません。特に学習内容については非常に重要で、自社の発展に貢献できるものでなければなりません。データ分析やプログラミング、マーケティング、情報セキュリティなど、社内で課題になっている分野を中心に導入を検討しましょう。
やみくもに学習を進めてもなかなかスキルは習得できません。効果的な学習プログラムを検討しましょう。学習方法としては、外部研修やオンライン講座、eラーニングなどさまざまです。
また学習プログラムの検討と同時に、社内の雰囲気作りも大切です。リスキリング対象社員が、他の社員から「仕事中に勉強できるなんて不公平だ」と思われてしまったら人間関係にも悪影響を及ぼします。社内全体でリスキリングを後押しする環境を整備しましょう。
プログラムが準備できたら、いよいよリスキリングの実行です。社員にとって業務を進めながらの学習は大きな負担となるでしょう。心身のケアに気を配ってあげることが大切です。
また、労働時間外の学習は社員のモチベーション低下を招きやすいので、できるだけ業務時間内にプログラムを実行できるようにリスキリングを進めましょう。
1回のプログラムですべてがうまくいくことはほとんどないでしょう。社員からのフィードバックを受けたり、スキル習得具合を頻繁に確認したりすることで、日々プログラムの改善を図ることが重要です。
次に、リスキリングを導入する際の注意点について説明します。
高度な学習になればなるほど、教育にかかる金額は高くなります。また、リスキリング中は対象社員の生産性も落ちるため、両方のコストを考慮する必要があるでしょう。その上で最後までリスキリングを遂行できるように、事前に予算を確保しておく必要があります。
リスキリングでスキルを習得しても、パフォーマンスを発揮する場がなければ意味がありません。社員としてもリスキリングの結果が評価されなければ、会社への不信感につながってしまいます。リスキリングを実施する際は同時に、対象社員が活躍できる環境も準備しましょう。
リスキリングを終えてスキルを習得した社員は市場価値が非常に高い人材となっています。社内での評価や給与が低いと転職を検討する可能性もあるでしょう。せっかくコストをかけて育てた人材が流出しないよう、社員には万全のケアを施す必要があります。
働きながらスキルを習得する「リスキリング」は、DX時代の新しい取り組みとして注目を集めています。実際にデジタル人材不足の課題を抱える企業の多い日本では、国を挙げての施策が必要かもしれません。
企業としては、リスキリングによってイノベーションが促進される反面、コスト増加や人材流出などのリスクが常につきまといます。従業員と企業、双方がメリットを得られるような教育プログラムの検討が必要不可欠です。
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