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日本のDX化促進の観点からも大きな注目を集めるノーコードのガイド・ナビゲーションツール「テックタッチ」を開発・提供するテックタッチ株式会社(以下、テックタッチ)。
同社躍進の影には、財務戦略の他にも事業立ち上げや営業、プロダクトマネジメントなど全方位的に携わるCFOの存在があるようです。
そこで今回は、テックタッチ株式会社CFO中出昌哉氏を取材。これまでの経歴や「テックタッチ」の可能性、これからの管理職に求められることなどをお聞きしました。
中出昌哉(なかでまさや)/ テックタッチ株式会社 CFO / PMM / 公共セクター・SaaS事業 事業開発管掌責任者
2011年、東京大学経済学部を卒業。
同年に野村證券株式会社に入社し、投資銀行部門にてM&A業務に従事。
2016年野村證券退職後、マサチューセッツ工科大学入学。
MBAを取得後、外資系PEファンドのカーライル・グループに入社。
2021年、現職のテックタッチ株式会社に入社、同社CFO・事業開発責任者就任。
――(清水)まず、中出さんのご経歴を教えてください。
東京大学の理科二類に入学後、教養の授業をきっかけに経済学に興味を持ち、経済学部に移りました。もともと理系にいたこともあり数字に強かったので、専門として選んだのは金融経済学でした。ちょうどその頃リーマンショックの影響が大々的に報じられており、金融が経済に与える影響の大きさを実感していたため、学習には意欲的でしたね。
大学卒業後は野村證券株式会社に入社して、投資銀行部門でM&A業務に携わっていました。その後マサチューセッツ工科大学でMBAを取得し、カーライル・グループという外資系PE(プライベート・エクイティ)ファンドに入ったという流れです。
――(清水)PEファンドに入られたのはなぜですか?
MBAプログラムを通じて多くの経営者と関わったことで、自分も経営領域の仕事に強く関心を抱くようになったからです。ただ、いきなり大規模な会社の経営陣になるのは難しく、まずは自身の能力を示す必要がありました。そこで、「これまでの自分の金融領域での経歴と、興味を持っている経営領域とが重なる仕事ができる会社」という視点で選んだのがPEファンドだったのです。
野村證券時代に比べると、カーライル時代の方が投資先企業に対して戦略の細かいところまで入っていくことができました。各社の経営者とディスカッションを行う機会も増え、視野も広がったと思います。一方で野村證券時代に「この会社は伸びそうだ」とか「ここは今なら安く投資できるぞ」という、会社を見る目や投資に関するセンスは磨いてきたつもりだったので、その経験はカーライルでも役に立ちました。
――(清水)王道の金融キャリアから一般事業会社のテックタッチにキャリアチェンジしたきっかけを教えてください。
MBA取得後にカーライルを選んだときと同様、経営に関する興味からです。
カーライルでは経営陣が変わることで会社が大きく変わっていった事例を数多く目の当たりにして、より深く経営に携わりたいと考えるようになりました。それからスタートアップ企業を何社か紹介してもらい、一番自分に合っていると思ったのが現職のテックタッチでした。
――(清水)敢えてスタートアップ企業を選択したのはなぜですか?
ベンチャー企業の方が裁量が大きく、幅広く経営経験を積めるというのがポイントでした。また、ファイナンス面で経営に携わりつつ自分でも事業を動かしていきたいという希望がありました。規模が大きい企業では効率面、統制面から分業化されているので、希望が叶いやすいスタートアップ企業に絞って転職先を探しました。
ただ、実際にスタートアップ企業のCEOの方に「CFOとして入社して、事業立ち上げや営業にも関わりたい」と言うと反応が二極化しました。「CFO業務に特化してほしい」という企業も多い印象でした。そんな中でもテックタッチはチャレンジングな動きを認めてくれたので、私の希望にぴったりでした。
それに、会社の雰囲気も良かったですね。テックタッチは「楽しく仕事をする集団にしよう」というカルチャーが随所にあらわれていて、自分の考えとも一致していたのでそこも決め手になりました。
――(清水)スタートアップやベンチャーの中でも特にチャレンジングな環境だったということですね。現在、入社前に思い描いていた動きができていますか?
ものすごく希望が叶っています。
たとえば、入社してすぐに事業を二つ立ち上げさせてもらいました。「テックタッチ」をSaaS系の企業に提供する事業と、官公庁や自治体などの公共セクターに提供する事業です。私がプレイヤーとして営業やカスタマーサクセスまでやりました。今では「テックタッチ」がデジタル庁で採用されるなど、会社の事業の柱になっています。
――(清水)SaaS系企業から公共セクターまでとなると、顧客層がかなり幅広いですね。それだけ「テックタッチ」は幅広い企業や組織で活用できるものだと思うのですが、あらためてサービス内容を教えてください。
「テックタッチ」はWeb上のシステムにガイダンスを設置し、システムの正しい使い方をナビゲーションしてくれるサービスです。
コロナ禍でDX化が進み、様々なWebサービスや社内システムが導入され、一見すると便利で効率的になったように見えますが、その効果を享受できるまでシステムを使いこなせるようになるには時間がかかります。ツールを導入したものの、その分覚えなければいけない操作が増えたり、マニュアルが使いづらかったりと、実際の活用にはまだまだ障壁があると思います。
「テックタッチ」を使っていただくと、「最初にここをクリックしてね」や「次はここに入力してね」などのガイドを出すことができ、ユーザーがその通りに動かすと直感的に操作ができます。その他にも操作や入力の補助が可能です。隣にシステムのプロがいて、使い方を個別に教えてくれるようなイメージですね。
しかも、これらの機能をノーコードで作成できるので導入が簡単な上に、各システムに合わせた設定が可能です。オンボーディング目的や顧客向けWebシステムの使いやすさ向上のためなど、社内外両方のシーンでの活用が期待できます。
一般的なマニュアルは作る労力が大きい一方で、時間が経つと誰も見なくなってしまうこともありますよね。「テックタッチ」ではそういった部分を効率化できると思っています。
同様のサービスについて、海外ではある程度大きい市場ですが日本は黎明期で、まだまだブルーオーシャンに近い環境です。
――(清水)私も自社Webサービスの責任者なので、先ほどデモ画面を拝見させていただきましたが、本当に簡単に分かりやすいナビゲーションだったので驚きました。日本のDX化推進の起爆剤になりそうですね。
現在、各企業はDX系のツールを一通り導入し終えた頃だと思います。でも「いざ活用してみよう」となったときに使い方がよく分からない。事業部が効率化のために入れたツールがかえって現場の負担を大きくしてしまったというケースもよく聞くので、それを「テックタッチ」が解決できれば嬉しいですね。
「テックタッチ」は企業の大きさや事業規模などを問わず、あらゆるWebシステムで活用できるサービスだと確信しています。便利なツールなのですがまだまだ普及しているとはいえないので、まずは日本での市場を広げていきたいです。それと並行して海外を対象にした事業を展開したり、もっと多岐にわたるエコシステムを開発したり、グローバルな取り組みも進めています。
――(清水)中出さんはアグレッシブなCFOという印象を受けました。最近、中出さんのように事業をドライブしたいなど、プレイヤーに近い動きもできる管理職を目指す人が増えています。そういった方に向けたアドバイスをいただけますか。
たしかに私はかなり攻めのCFOですよね(笑)。
だからこそ、テックタッチに貢献できたことも多いのかなと思っています。
Financial Planning & Analysis(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)、「FP&A」と呼ばれる分野の知見を身に付けることをお勧めします。財務状況の分析から、経営や事業の戦略立案をする力です。管理部門が財務的な視点から事業に対するアドバイスができれば、組織がいっそう強くなると思います。競合企業の財務分析まで行えると、自社の強みや弱み、課題が相対的に見えてくるので、さらなる成長につながります。
また、社内やチームに留まっていると新しい視点が生まれにくいので、多くの人と交流することも大切です。私も他社のCEOやCFOはもちろん、プロダクトマネージャーやマーケターなど、組織外の優秀な人と積極的に会うように心がけています。社外の人の話を聞いてあらためて自社の数字を見てみると、これまでと全く違う情報が浮き彫りになったという経験もあるので、外に出ていくのは重要だと思いますね。
――(清水)最後に中出さんの今後のキャリアイメージを教えてください。
やはり経営に携わり、ビジネスをどうやって伸ばすかを考えて実行までやる、このサイクルを回すことを続けていきたいですね。それが起業なのか、大きな企業の経営陣を目指すのか、具体的な部分はまだ不透明ですが、今やっていることの延長線上に今後実現したいキャリアがあると思っています。
――(清水)本日は貴重なお話をありがとうございました。
財務戦略はもちろん、事業の立ち上げから営業業務まで幅広く活躍されている中出さん。CFOとプレイヤーの二刀流を実現しながら、楽しんで仕事をされている様子が印象的でした。お話から、現場に入って事業運営を行うことの重要さや、外に出て様々な話を聞く姿勢を持っていることの大切さを学びました。また、日本のDX化推進における「テックタッチ」の可能性を実感しました。今後はどのような発展をされていくのか、楽しみです。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ マーケティングDivision / 執行役員
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