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大手監査法人EYから「シェアでんき」事業会社のCFOへ 【CFOインタビュー 株式会社シェアリングエネルギー田原 正崇氏】

公開日2023/06/23 更新日2023/11/09 ブックマーク数
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大手監査法人EYから「シェアでんき」事業会社のCFOへ 【CFOインタビュー 株式会社シェアリングエネルギー田原 正崇氏】

「分散電源の創出により、エネルギーシステムを変革する」をミッションに太陽光発電システムの第三者所有サービスを提供する株式会社シェアリングエネルギー(以下、シェアリングエネルギー)は、再生可能エネルギー業界では比較的新しい会社です。

2018年の創業以来、独自性の高いサービスと大型の資金調達、事業提携で注目を集めています。今回は、同社の経営管理業務に加えて資金調達など事業拡大のキーパーソンであるCFOの田原正崇氏にお話を伺いました。

【プロフィール】

田原正崇 株式会社シェアリングエネルギー / 取締役CFO

慶応義塾大学卒業後、EY新日本有限責任監査法人国際部、Ernst&Young LLP NewYork Officeにて計16年間勤務し、日本/米国/IFRSの会計監査、アドバイザリー業務、デューデリジェンス業務等に従事。

その後、キングソフト株式会社にて執行役員CFO、Japan Taxi株式会社にて財務経理部長、Kyoto Robotics株式会社にて執行役CFOとして、経理財務、経営企画、人事、法務総務を統括すると共に、多数の資金調達、M&A案件、上場準備等に従事。

Kyoto Roboticsのバイアウトミッションを終え、2021年4月よりCFOとして株式会社シェアリングエネルギーに参画。


監査法人16年、40歳でキャリアチェンジ

――(清水)シェアリングエネルギーに入社するまでの田原さんのご経歴を教えてください。

大学卒業の年に公認会計士の試験に合格したので、現在のEY新日本有限責任監査法人に就職しました。

配属は国際部で総合商社を中心に16年、監査業務に携わっていました。海外駐在に行くチャンスをもらい、帰国後は同商社の米国基準から国際会計基準(以下、「IFRS」)へのコンバージョンという国際会計基準(以下、「IFRS」)の会計監査を担当することもあり、大型のプロジェクトの統括者も担当させてもらいました。

その後、事業会社でのCFO業務に挑戦するためにキングソフト株式会社に転職しました。当時、40歳と監査法人からの初めての転職にしては年齢が高めだったので、なんとかして遅れを取り戻そうと思い、幅広い業務に携われるベンチャー企業を選びました。最初の頃は事業会社の当たり前が分からないことも多くて、よく創業者に怒られていましたね(笑)。

続いて、JapanTaxi株式会社(現、GO株式会社)に転職して大型資金調達の担当を務めたのち、Kyoto Robotics 株式会社(当時)に転職しました。ここでは最終的に日立へのバイアウトに関する業務に携わりました。そして現在のシェアリングエネルギーに入るという流れです。

――(清水)国際部で総合商社担当の順風満帆な監査法人キャリアと思いますが、元々事業会社のCFOに転職は考えていましたか?

実は公認会計士になったのは、大学時代に将来について漠然とした焦りを感じていて、それを払拭するために資格を取ろうと思ったことがきっかけでした。国際的な事業に携われそうで、商学部だったこともあり、学習内容もマッチしていると思ったので公認会計士の資格取得を目指しました。

そういった経緯なので、監査法人での会計士の仕事に強い拘りはありませんでした。ただ、海外駐在や帰国後のIFRS導入支援などやりがいのあるアサインをいただけたので、結局16年勤務しましたが、最後に携わった案件が一区切りついたところで、遅い年齢ではありますが事業会社のCFOにチャレンジしました。

代表の人柄に惹かれて、シェアリングエネルギーへ

――(清水)監査法人時代を含め様々な企業を見てきていると思いますが、シェアリングエネルギーへの入社の決め手は何ですか?

Kyoto Robotics時代、バイアウトが決まってから次の動きまでに時間があったので、多くの経営者の方に会いに行きました。弊社代表の上村もそのうちの一人です。上村といろんな話をするうちに、彼のシェアでんき事業に対する熱量と人柄に惹かれました。何度かお会いする機会をいただき、会うたびに「もうちょっと話を聞いてみたいな」と思い、最終的に「この人と一緒に働いてみたい」という気持ちが強くなり、入社を決めました。

当時、「太陽光発電」という言葉は頻繁に耳にするようになっていましたし、今後発展していく分野なのだろうな、という見通しはあったので、事業内容も面白そうだなと思いました。

――(清水)創業間もないベンチャーに飛び込まれたわけですが、入社当時のミッションは何でしたか?

現在は、業務委託の方や派遣社員なども含めて約100名程スタッフがおりますが、入社当時はシェアオフィスで従業員も15人ほどのタイミングでした。もちろん管理部門も組織としてはなかったので、そこの立ち上げが最初の仕事でしたね。

そこからスタートしてあっという間に規模が大きくなりましたが、今は大型の資金調達や事業提携など、CFOとして事業をドライブさせるための役割が強くなっています。

急成長の肝は顧客メリットの大きなのサービス

――(清水)会社が成長した今でも大型の資金調達を続けられているとのことですが、その理由も含めてシェアリングエネルギーの事業内容や強みを教えてください。

弊社は、主に戸建ての屋根の上に無料で太陽光パネルを設置して電気代をお得にするサービス「シェアでんき」を日本全国で提供しています。

特長はお客様の負担が少ないことです。太陽光発電設備のイニシャルコストもランニングコストも弊社負担である上に、15年経ったらお客様に太陽光発電システムを無償譲渡しています。お客様は電気を安く使えますし、無償譲渡後は、余った電力を売って売電収入を得ることもできます。

弊社は、お使いになった電力への課金と、使いきらなかった余剰電力の売電収入で収益を得ているというビジネスモデルです。損保大手4社と動産総合保険に関する共同保険契約も締結しているので、お客様の負担や不安はかなり少ないのではないでしょうか。

また弊社は「シェアでんき」事業に特化していますので、同業他社のような企業間のしがらみや制約がありません。どの会社とも協力できるので、お客様にとって一番良い提案ができるのも大きな強みです。実際に高い満足度をいただいていまして、2023年4月現在では解約が1件もありません。

一方で、戸建てという小規模な設備に対して、設備投資にかかる費用はどうしても大きくなります。そこを賄うために資金調達をずっと続けているという状況ですね。

事業拡大における次のキーポイントは採用!積極的に人材募集中

――(清水)会社としては現在の事業を大きくしていくのが目標でしょうか?

そうですね。今は戸建てを中心にやっていますが、営業所やコンビニなどtoBへの展開も開始しています。また同モデルを、アジアを中心とした海外にも進出させられればと考えています。

もちろん電力事業の情勢は日々変化していきますので、VPPと呼ばれる仮想発電所などの取り組みにも参入するつもりです。将来的には上場も目指しています。

――(清水)そのために今、重要な点は何ですか?

今はどうしても各自がさまざまな業務を兼任しておりますので、専任者を増やしていきたいですね。私と関わりが深い役職ですと、経営企画職などを募集しています。なかなか教育をする時間がないので、経験者中心の採用になってしまうのですが、資金調達経験や折衝経験などをお持ちの方はすぐに活躍できる環境なのではないでしょうか。

弊社はここ最近で一気にスタッフが増えたこともあって、新しい人でも非常に馴染みやすい、フラットな風土だと思いますよ。

雰囲気の良さについては正社員以外の方からも評価をいただいておりまして、実際に個人業務委託の方から「シェアリングエネルギーさんのオフィスに行くのは楽しい。温かく迎え入れてくれるので仕事がやりやすい」という声を頂戴しています。

まだまだ成長過程の企業ですので、会社や事業をつくりあげていきたいという方には非常にマッチする会社なのではないでしょうか。

――(清水)会社に続いて、今度は田原さんご自身の今後の目標などを教えてください。

私としてもシェアリングエネルギーの目標と大きな差はなく、会社のスケールが一番の目標です。

加えて、これまでの経歴を還元できる取り組みにも挑戦できればいいですね。たとえばエネルギー系のベンチャー企業への投資など、どんどん新しい技術が出てくると思うので、自社の成長だけでなくファンド的な貢献も視野に入れています。

小さな経験をつなぎ合わせて、CFOとしての大きな武器に


――(清水)これからのCFOに求められることは何だと思いますか?

近年、CFOの業務も多様化してきており、オフェンシブなCFOとかディフェンシブなCFOなどの言い方をされることがありますよね。もちろん個人の向き不向きもありますが、私はどちらにも対応できるようにしておくのが良いのではないかと思っています。そのためにはやはり経験が必要でしょう。何かやりたいと思った時にすぐ行動して自身の糧にできるようなバイタリティーが求められるのかなと思います。

――(清水)最後に、田原さんのように会計士や監査法人からCFOを目指す人へのアドバイスをお願いします。

まず、CFOを目指そうと思ったタイミングで必要な知識を身につけたり、経験を積んだりする方が良いでしょう。IFRS、資金調達、投資など、たとえCFOという職種でなくても挑戦できる業務はたくさんあります。それぞれを少しずつでも良いので経験して、キャリアパーツを集める。それが集まる頃にはかなり力もついてきているはずです。

挑戦に遅すぎる時期はありませんが、それでもCFOを目指すのは、早ければ早いほど良い気がしますね。私はかなり苦労したので(笑)

また、最初にCFOになる際はほとんどがベンチャー企業への転職になると思います。いきなり大手の経営陣に加わることはまず難しいですからね。ベンチャーギャップは必ずあるので「自分は知らないことだらけだから、イチから勉強し直すんだ」という意識も転職当初は大切だと思います。

「大手監査法人出身だから」とか「公認会計士の資格があるから」と謙虚な姿勢を忘れてしまっては絶対にうまくいきません。苦労するのは当然だ、くらいの感覚でいれば、意外となんとかなるのではないでしょうか。

――(清水)ありがとうございました。

まとめ

非常に満足度の高いサービスである「シェアでんき」は、これからますます発展していくことでしょう。今後の展開が楽しみです。
また、公認会計士の資格を持つ田原さんならではの、CFOに対する考え方にもたくさんの気づきがありました。経験を無駄にすることなく、自身の糧にしていく姿勢の重要さを実感しました。



インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ マーケティングDivision / 執行役員


2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在はマーケティングDivision長/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。



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