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先日、人的資本開示の取り組みに関して、「経営層と現場社員との間で認識にギャップがある」との調査結果が発表されました。「人材育成」について、「取り組むことができていない」との回答割合は、経営層は21.8%に対し、現場社員が40.5%で、経営層は実現できていると考えている一方、現場はそうではないと考えているようです。
今回は、人的資本の情報開示について詳しく掘り下げてみます。
人的資本とは、企業が自社の人材を育てるためにかける費用を「投資」とみなす考え方を指します。
従来、人材育成にかけるお金は、企業が負担するコストとみなされていました。この考え方の背景にあるのは、企業で働く従業員は企業にとっては「資源」であり、コストとして消費していくものであるため、いかに効率的に使用できるかが重要という価値観です。
一方、人的資本経営の考え方では、資本である人材を育成することは投資としてとらえます。今では人材育成に注力していることは自社の将来性・成長性を示すアピールポイントであり、投資家に自社の優良性を訴える手段の一つとなっています。
こうした人的資本への取り組みは、各社の企業努力にゆだねられているだけではありません。金融庁は2023年度の有価証券報告書から、人的資本に関する情報開示を義務付けています。
有価証券報告書とは、株式発行をしている上場企業などが自社の概況、事業の内容、財務諸表などを開示する目的で作成される企業情報です。投資家に企業情報を開示し、適切な投資判断ができるようにするのが発行の目的です。
この有価証券書の中に、新たに人的資本の項目が盛り込まれることになりました。具体的には以下の5項目です。
・人材育成の方針
・男女間の賃金格差
・女性管理職比率
・男性の育児休業取得率
・社内環境整備の方針
ダイバーシティの観点で、女性の管理職比率の推移が主要な開示項目とされています。なお、将来的に開示義務項目がさらに変わっていく可能性もあるので、企業側はこの点注視する必要があるでしょう。
人的資本の情報開示が要求されるようになった背景としては、以下の2点が挙げられます。
そもそも有価証券報告書は、投資家が適切な投資判断を行えるようにする目的から開示が義務付けられているものです。投資家が求める企業情報は時代によって変化していくため、記載・開示されるべき内容は、それに合わせて変えていく必要があります。
近年、投資家が投資先を選ぶ上での判断基準として重視する傾向にあるのは、「ESG」です。これは「環境(Environment)」、「社会(Social)」「統治(Governance)」の三つの言葉を合わせた造語で、この3点に注力した事業展開をしている企業は、長期的に成長が望めるとする考え方です。
このうち人的資本の考え方は、社会における価値観の変化に適応した「社会」、企業内の「統治」に関わる項目に該当します。つまり、人的資本に関わる企業情報は、ESG投資を行う投資家が取得したいと考える重要情報となりつつあるわけです。
現在、社会のデジタル化が進む中、注目されているのが人工知能(AI)やロボット技術の進化です。人工知能・ロボットが、これまで人間が担っていた労働を奪ってしまうとの見方もありますが、その一方で、クリエイティブな能力が求められる分野は、人でしか担えないともいわれています。
そうした中、「人」のスキル・能力をさらに伸ばそうとする人的資本・人材育成の考え方に、投資家の関心が集まっています。つまり人的資本にどれだけ注力しているかは、その企業が、AI時代が到来しても成長を続けられるかどうかを示す、一つの指標にもなり得るのです。
冒頭で紹介したアンケート調査の結果では、経営層は人的資本の取り組みがうまくいっていると考えている一方、現場社員はそうではないと感じている「ギャップ」の存在が明らかにされています。
企業が取り組みを推進していくためには、現場の認識を踏まえ、取り組みに巻き込んでいくことが必要だといえるでしょう。
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