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コーポレート人材に求められるのは、「打席に立つ準備」 【CFOインタビュー 株式会社デジタリフト 管理Division 執行役員 石塚 久路氏】

公開日2024/03/06 更新日2024/03/05


株式会社 デジタリフトは、「カスタマーの意思決定を円滑に」という企業理念を掲げる、デジタル領域に精通したマーケティングカンパニーです。
今回は、管理Divisionで執行役員を務める石塚 久路氏に、IPOのご経験や現職を選んだ理由、今バックオフィス人材に求められていることについて伺いました。

【プロフィール】

石塚 久路
株式会社 デジタリフト 管理Division 執行役員

青山学院大学経営学部卒業。フリークアウト・ホールディングスでIPOを経験し、上場後は、経理中心とした管理部門全般に携わりIRやM&Aのロジ回りに携わる。2019年より現在の株式会社 デジタリフトに参画し、管理Divisionの責任者としてIPOを達成。

入社3年目で全社プロジェクトに携わるチャンスを得た若手経理時代

――デジタリフトに参画されるまでの経歴をお伺いできますか。学生時代から社会人になるまで、どんな経験をされてきましたか?


大学では経営学部に進みましたが、経営学部は社長や起業家になるための具体的な方法を学ぶ場ではなくて、結局なんとなく大学生活を過ごしてしまっていました。

ただ、就職活動の時に社会に出るからには、いつか新聞に載るくらいの何かを成し遂げる人間になりたいという気持ちはありました。その時に抱いていたイメージが、「経営者」や「起業家」になるというものでした。

1社目に就職したのは物流業界で、経理部に配属され、事業を回すというより数字を見ていく立場になりました。面接の際、経営学部で簿記もやっていたことを伝えていたんですね。
当時の副社長は若手に理解のある方で、「まずは経理から会社の経営を見てみなさい」ということで経理に配属になったんです。

その後、入社3年目で会計システムを全面刷新するプロジェクトのリーダーとして打席に立つ機会をもらえて。まだ会社の全体像もよく理解できていないままでしたが、体力勝負でがむしゃらに働いて、何があっても「何とかやり切る」という経験ができました。


――1社目でとても大きな実りがあったんですね。


若手を成長させる方針で、打席を回してくれる会社でしたね。
そのプロジェクトが一段落したあとは、開示や監査対応などをやらせてもらいました。この経験で、経営者が求める情報や数字というものの理解度をものすごく高めることができました。

今思うと、他の企業ではありえないぐらいのスピードで成長できる機会をいただいて、めちゃくちゃ良い経験をさせてもらえました。必要な知識や経験を身につけるための筋肉が早い段階で鍛えられて、ビジネスパーソンとしての基礎体力がついたと思います。

結果的に1社目に8年間在籍して充実した時間を過ごせていたのですが、振り返るとまだまだ「何者でもない自分」がいて、このままではダメだと感じてしまいました。変わるには社会に新しい価値を創っていこうとするスタートアップに身を置いて、自ら会社の中心で事業やサービスの成長に関わる必要があると思いました。

「自分が何者かになる」よりも、「経営者を漢にする」

――それで、スタートアップであるイーガーディアンへ入社されたのですね。


そうなんです。上場の鐘がなる直前の時期に、経理のマネージャーとして入らせてもらいました。税務や開示、新しい子会社の取得や連結といったところまで、いい経験をさせてもらえました。

特に当時のCFOには非常にお世話になったのですが、一方でどうがんばっても埋められない経営全般の知識の差を痛感させられました。また、上場すると管理部門はどうしても縦に割ってしまうことがあり、おのずと僕も経理中心のキャリアになっていくことが求められました。そうなってくると「何者かになる」というゴールにたどりつけないと思い、2014年に卒業させてもらいました。


――その次はフリークアウトへ入社されていますね。


スタートアップでも、これからIPOを目指すようなアーリーステージにある企業に行きたいと思ったんですね。先進的なビジョンを掲げていて、ここで働けたら楽しいだろうなというワクワク感があって。


――フリークアウトは2014年に上場していますよね。


入社したのはIPOのN期で、東証の審査が始まったばかりの時期でした。業務フローや規程の整備、株主周りのことから、販売システムの導入まで色々と準備が追いついていない状態でした。上場目前のため様々な課題を乗り切らないといけませんでした。上場してしばらくすると上司が辞めることになりました。会社としては問題発生ですが、僕は「おお、良い打席が回ってくる!」とポジティブに捉えていました。

結果的にフリークアウトでは経理中心とした管理部門全般に携わりIRやM&Aのロジ回りに携わることができました。

当時は資金を海外や投資に回していたために連結作業は膨大で、2〜3年は目まぐるしい日々を過ごしました。その後、管理体制を整える目的で現在のCFOがやってきまして、僕はどちらかというとガバナンスのほうを任されることになりました。


――携わる業務内容がだいぶ変わったのではないですか?


そうですね。ガバナンスは攻める側というよりも守る側ですので、それはそれで楽しい部分ではあるけれども、会社の企業価値を上げるなら、やっぱりもう一回上場作業に携わりたいなぁと思ったりしていましたね。

そんな折に、2016年に現職のデジタリフトがフリークアウトの連結子会社となり、フリークアウト側のカウンターパートを僕が務めていました。その後、代表の百本さんから「IPOを目指すので力を貸してくれ」と頼まれまして。それでお世話になっていた百本さんを「漢にしないと!」と入社を決意しました。


――それでデジタリフトへ行かれたんですね。


お話したように「社会の何者かになる」みたいなことをずっと思い描いてきたんですけど、百本さんにお誘いいただいた時に、「経営者を漢にする」のも良いなと、それも遣り甲斐があるなと価値観が変わってきたところがあったんです。

僕は百本さんを本当に素敵な経営者だと思っているので、もっと社会に出ていただき、もっと大きな舞台で活躍していただきたいなと。


――「新聞に載るような人物になる」ところからキャリアの目標が変わってきたのは、どうしてだと思われますか?


新聞に載ったかどうかは別として、フリークアウト時代にある程度の「何者か」になれたんじゃないかと自覚できたからかもしれません。自分自身を突き詰めていったときに、経営者や起業家の肩書を得たいというより、彼らが昂らせる熱いパッションを味わいたいのだとも実感したんですね。

デジタル広告の事業責任者支援が強み


――代表の百本さんと少数精鋭の経営陣で会社を前に進めていらっしゃいますが、デジタリフトのこれからの展開を教えてください。


我々の強みは事業戦略からご支援し、デジタルマーケティングの実行まで担えることです。

構造が複雑でも一気にお受けできるよう体制を整えてきています。サービスラインナップやその効果、顧客体験はまだまだ向上できると考えています。また、物流や金融、決済などにも深く携われれば、顧客体験が広がる可能性があります。

2023年よりデジタリフトはグループに移行したので、最終的にはそういう領域も含めてグループインさせ、一気通貫で支援ができるようにしていきたいですね。


――我々も百本さんからご意見をいただく機会がありまして。上場前は、いわゆるデジタル広告のところが強かったですよね。最近はSEOまわりの提案をいただいて、「マーケティング領域で広げてらっしゃるんだな」と感じました。


社内でできることも拡大してきましたが、M&Aを通してでもSEOやクリエイティブといった領域に強い企業とパートナーを組み、サービスの幅も奥行きも広げています。

PMI業務はコミュニケーションスキルが不可欠

――会社はまだ拡大期だとは思うんですけど、デジタリフトの管理部門にはどのような人たちが集まっていて、そこではどのような経験ができる環境ですか?


まだまだ少数精鋭でやってる状態で、我々の動きに素早く対応してくれる人、うまくコミュニケーションをとりながら相手の立場を思い、提案してくれる人が多いです。
たとえば一番難易度が高いところでいうと、「グループ会社で上場基準の経理をやってください」という話。まさにPMI業務の話なのですが、おそらく通常は何からやっていいのかわからないでしょうから、コミュニケーション能力は不可欠なんです。

また、デジタリフトの経理という職について考えてみると、もっと専門性があっていいように考えています。誰でもできる入力作業は情報漏洩策を取った上で外部に出し、ディレクションやグループ会社の人たちに寄り添う時間に当ててほしい。自分たちの生産性を高めるために、いい意味で楽することを考えていけば、結構パフォーマンスは高まると思います。


――子会社に対してのPMI業務は石塚さんだけでなく、他の方にも任せているんですか?


はい。買収後もデジタリフトはフリークアウトに頼ることなく独立経営を貫いていまして、現在の我々がグループ会社に求める経営方針も同様です。パートナーとして歩んだほうがいいというのは、僕がこれまでに培ってきた学びとしてもありまして。

グループ会社での自主独立を尊重し、かつどうやったら独立経営を上場基準で成し遂げられるかを一歩引いたところから支援している感じです。経営者の方々は、自分の会社にも事業にも情熱がすごくありますからね。


――良いところは積極的に活かすべきでしょうし、足りてないところだけ支援していくということですね。それだと御社の経理の方、管理部門の方は、実務をやるというよりコンサルのような動き方ができていらっしゃるような感じですか?


おっしゃる通りですね。税理士でもなく会計士でもない、その間ぐらい。事業会社をよく知っていて、かつ上場基準もわかっているコンサルというイメージです。


――おもしろい経験を積めそうな環境ですね!


めちゃくちゃおもしろいと思いますよ。それに本当に優秀な経営者が多く、そうした方たちと話す機会があるのも魅力です。そういうのって、普通のところの経理だとまずないじゃないですか。だから、すごくいい機会になると思います。


――御社の環境のおもしろさ、楽しみ方を石塚さんが一番よくわかっていて、体現していらっしゃることは、一緒に働く方にとって大きなメリットですね。成長の機会はあっても、実際にそれをどう生かすか?打席にどう立つか?が難しいという方もいるので。


そうなんです。採用面談をするときは、「成長したい」「上場基準を学びたい」といった前向きなマインドを持っている方には、好印象を抱くことが多いです。やはりそうした方だと伸びる傾向があるし、また新たな課題を見つけては成長していけるんです。そして経営目線で話しながら一緒に仕事ができるという、経理としては結構ありがたい場所かなと思ってます。
上場企業でありながら、売上が2倍3倍に拡大していくグループ会社の上場を支援していくなんていうケースもありえますから、そこは我々のバリューとしてこれからも大切にしていきたいと思っています。

上場前・上場後で経理の役割はどう変化するか

――上場前と上場後で、経理としての能力や関わり方に違いはありますか?


上場後のほうが縛られる法令やスケジュールが多いため、どうしてもやることが増えてしまいますね。また上場前は上場が目標として設定されていますけど、上場後は明確なゴールがなく安定的に運用していく感じになりますし、利害関係者が増えるためタッチポイントを構築しようというモチベーションを保たなければいけません。

そこからが大事なフェーズで、「上場しました、終わりです」ではモチベーションはかなりダウンしてしまいます。経理で「IPO職人」みたいな方がいらっしゃいますけど、上場後にモチベーションが維持できないことが多いですよね。
会社とか事業のことを考えると、上場後から勝負が始まりますが、経理のキャリアにとっては、IPO達成でキャリアに一段落ついてしまうところがある。


――チャレンジングなマインドの方が上場準備起業やベンチャーへ行って上場を達成すると、満足できなくなってしまって。キャリア形成の課題だと感じています。


上場することとチャレンジングを一緒だと思うと、その課題は生まれます。上場後には利害関係者が増えますので、例えば、投資家や株主や対応する領域が監査法人の対応やJ-SOXもそう。結構そういう上場後に対応できることが、キャリアにおける価値かなと思っています。上場会社って4000社程度しかなく、個数が少ないんです。なので、そっちの価値を上げたほうがいいんじゃないかなと僕は思っています。


――実際に経験されていらっしゃるからのご発言ですね。今はデジタリフトでやることがたくさんあると思いますけど、どこかで起業したり経営者側にまわったりというのは考えていらっしゃらないんですか?


僕の娘がもうじき中学生になるのですが、趣味程度に3年間事業計画を一緒に作っていて、「高校生になったら会社興そうぜ」と話しています。多分、娘は何をやるかはよくわかってないですけどね(笑)。でも、事業計画で親子の会話ができてもおもしろいかなって。


――それは楽しいですね。


はい。それで家族経営してみたりして。

チャンスが来たときに打席に立つ心構えが大切


――キャリアを振り返ってみて、特に「ここが活きている」という点はありますか?


そうですね。1社目は創業130年くらいの企業だったのですが、当時の同僚たちと「老舗のベンチャー」と呼び合うくらい、若手にどんどん打席を回してくれました。だから僕たちも、打席が回ってきたらちゃんとバットを振れるように準備をしていた。その姿勢があらゆる場面で役に立ったと思います。やらされ仕事でも、自発的に準備をしていくことで得られるものは少なくありません。経理なら、経営層と話ができる機会があると思うので、社長や上長に、自ら積極的に話を聞きにいく姿勢も成長には必要ですね。


――たしかに、何事も心構えひとつで変わってくるものですよね。


本当にそうですね。ただ、1社目のときは、同僚と新橋の居酒屋で愚痴り合うような生産性のないこともしていたのですけどね(笑)。


――経理業務を作業として捉えてしまえばそれまでですけど、経営にとって一番大事な部分ですし、ちゃんと準備や心構えをしておけば大きく成長できるということですよね。


めちゃくちゃ成長できますよ。「お金は大事」「キャッシュがなくなったら黒字でもゲームオーバー」というような1社目の老舗企業で学んだことって、ベンチャー企業にとってもすごく大事だなって思いますね。そうした知識を若いうちから身につけることができれば、キャリアは断然変わってきます。


若手時代にピンチに手を差し伸べてくれる親友を

――読者に向けてコメントをいただきたいのですが、ご自身の経験を踏まえ、20代や30代のうちに「こういう経験をしておくといいよ」といったご助言をいただけますでしょうか。


お伝えしたように、自分の中では上場会社の経理をやったことが大きなプラスになりました。ベンチャーを起業してそのままCFOになるという方もいらっしゃいますけど、上場会社のほうがより高い規律を求められるので、そういったところを肌で感じられたのが大きな経験です。

また20代や30代で意識したのは、誰彼構わず人脈を増やそうとしたことですね。そしてピンチに手を差し出してくれた人こそが、本当の親友。商売っ気から軽い気持ちで接してきて、ピンチのときには何もしてくれない人もいますから。つらいときに助けてくれる人は、40代を過ぎた後に自分にとってとても重要なキーパーソンになります。僕はこれまでたくさんの人に助けられ、ここまでやってくることができましたから。

僕自身、たくさん助けられた分、何かあると助けたくなっちゃうんですけどね(笑)。

いずれにしてもまずは「打席に立つこと」が大事です。そもそも何もしなければ、ピンチな状況に置かれていることすら気づけないので。


――いつでも打席に立てる準備をしておいて、チャンスが来たら躊躇せずに打席に立ち、バットを振りに行くというのが大事なんですね。


はい。あと、40代って会社の組織や文化を作る側にまわる世代で、そうなると打席に立つというより他の選手に打席を回してあげないといけません。打席が空かない限り、次のエコシステムって回りませんから。


――読者の方がCFOの視野・視座・視点に具体的に近づけるように、管理部門の方におすすめの書籍を伺っています。石塚さんが最近読んだものやバイブルとしている書籍をご紹介ください。


僕が新卒で入った会社で経理のときに読んだ『稲盛和夫の実学』はすごく勉強になりました。管理会計よりなのですが、会社経営の目線に立てるので、そこは頭にインプットしておきました。

あとは不況だった当時に読んだ『借金取りの王子』という本が印象に残っています。『君たちに明日はない』の続編で、リストラされる人々の理由をとうとうと描いていて、「僕も肩叩かれないようにしよう」と、自分を奮い立たせるときに読み返しました。


――最後に読者の方々、特に士業・管理部門の方々にメッセージをお願いします。


バックオフィスの部門って、レイヤーを上げていくのはなかなか難しいと思うんです。専門業に特化するか、僕みたいにベンチャー入ってジェネラルにやっていくか、みたいな感じしかないので。

どちらにしろチャレンジしない限り上には絶対行けないし、上に行かない限り自分が理想とする世界を築けないと思うので、ただ一歩前に踏み出していくしかありません。そういうチャレンジを、一緒にできたらなと思っています。

あとは士業の方に向けてですが、我々も成長著しいので、相談に乗ってもらったりピンチに助けてもらったりしてくれる人を一人でも多く求めています。カジュアルにでもいいので、気軽にお話できる機会があったらうれしいですね。本当に。


――貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ マーケティングDivision / 執行役員


2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在はマーケティングDivision長/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。


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