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東京証券取引所は、プライム市場上場企業の決算情報および適時開示情報の日英同時開示義務化を発表しました。日英同時開示義務化の実施時期は、現在のところ2025年4月をめどに検討しているとのことです。開示の制度見直し実施の狙いや背景、それにともなうメリットや注意点などについて解説していきます。
今回、決算情報および適時開示情報の日英同時開示義務化の対象となるのは、プライム市場上場企業です。プライム市場は、2022年4月に東証の再編によって運用が開始されたばかりで、これまでの東証一部に該当する市場です。
プライム市場上場企業の決算情報等の日英同時開示という制度見直しにより、企業価値向上の促進に加え、これまで情報開示のタイミングが異なっていたことにともなう投資機会の制約の改善にもつながります。また、現在よりも多くの海外投資家を呼び込むことへつなげる狙いもあり、上場維持のために継続した企業努力を促進できる側面も期待できます。
なお、現在のところ開示が義務付けられるのは決算情報と適時開示情報です。有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書、IR 説明会資料、株主総会招集通知など、その他の対象書類の義務付けについては継続検討とされています。
現在プライム市場では、適時開示資料、株主総会招集通知、コーポレート・ガバナンス報告書、決算短信、有価証券報告書、IR 説明会資料などいずれかの資料を英文開示している企業は98%を超えており、英文開示の取り組みとしての進展は比較的評価されています。一方で、東証が行った「英文開示に関する海外投資家アンケート」によると、英文開示の内容については72%の海外投資家が不満を示しているとされています。
とくに、日本語と比較して英文の情報量が少ないことや、日本語開示と英文開示のタイムラグに対する不満、さらには中小型株についてはそもそも英文開示の不足が以前から指摘されていました。海外へ目を向けると、台湾など非英語圏における英文開示の義務化も拡大傾向にあることを踏まえ、日本でも日英同時開示の義務化が検討されるに至りました。
では、決算情報、適時開示情報を日英同時開示することにより、どのような変化が起こると予想されるでしょうか。
日英同時開示によって、企業としては市場のグローバル化が期待できるほか、上述のように海外投資家としても投資機会が増加するメリットが期待できます。また英文化については日本語による開示内容の一部や概要でも可能で、あくまでも英文は日本語開示の参考訳程度との認識が示されています。そのため、英文化する負担やコストも想定以上に軽く済む可能性がある点も、利点の1つとして挙げられるでしょう。
日英同時開示の義務化により、文書作成にこれまで以上の労力がかかることを留意しておきましょう。 また、海外投資家が興味を見出せなければ、英語文書作成分の労力のに見合った効果を得られない可能性も考えられます。
さらに、現時点で義務付けられるのは決算情報と適時開示情報のみですが、今後はその他の書類についても日英同時開示が義務付けられることも予想されます。労力やコスト面といった各種負担もその分だけ増加してしまう懸念も生じます。
英語文書作成による効果が得られるとは限らないとなると、そこにかける労力は極力小さくしたいと考えるでしょう。
東証では英文開示のポータルサイト「JPX EnglishDisclosure GATE」の開設をはじめ、翻訳支援サポートなど充実度の高いサービスを展開しています。
それらのサービスを上手に利用することにより、英語文書作成に費やす労力を極力抑えてコンテンツの作成も可能となります。
日英同時開示義務化は、海外投資家の生の声や海外の実績などを踏まえ、市場のグローバル化が必要との判断から行われるものです。 しかしプライム市場に限った場合であっても、日英同時開示のための体制づくりに時間がかかってしまうことも想定されます。その対応として、条件を満たした上場企業には1年間の猶予期間が設けられ、ポータルサイトの開設、さらには英文開示セミナーの開催なども検討されています。
現段階ではプライム市場のみの制度見直しですが、これによって今後どのような影響が起きるのか、またいずれはスタンダードやグロースまで含めた全上場企業が対象となることもあり得るのか、動向に注目していきたいところです。
参考
英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果
英文開示 | 日本取引所グループ
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