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【弁護士執筆】2024年プロバイダ責任制限法改正について法務対応時のポイントとは?

公開日2024/07/04 更新日2024/08/21 ブックマーク数
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プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律

プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律案が2024年5月10日に国会で成立し、同月17日に令和6年法律第25号として公布されました。
2024年改正の概要、法務対応時のポイント等について解説を致します。

大澤一雄
大澤法律事務所 弁護士(64期)


2019年~2021年まで、総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第二課(現:利用環境課)に在籍し、2021年改正プロバイダ責任制限法(情プラ法)の立案等に従事。2022年に現事務所を開業し、インターネット上の法律問題を含む問題に対応している。主な著書に「発信者情報開示命令の実務」(商事法務、2023年)など。

1 2024年プロバイダ責任制限法改正の概要について

(1)プロバイダ責任制限法改正の背景

誹謗中傷をはじめとするインターネット上の違法・有害情報は社会問題となっており、近年では、プロバイダ責任制限法改正による開示請求に係る裁判手続の迅速化、刑法改正による辱罪の法定刑の引上げなどがなされています。
誹謗中傷等の被害者からはインターネット上の投稿削除を行いたいという要望が多いものの、制度化が進んでおらず、課題が多く存在している状況です。*1
そこで、こうした課題に対応するため、プロバイダ責任制限法について、改正がなされることとなりました。

*1 「プラットフォームサービスに関する研究会 第三次とりまとめ」(総務省:令和6年1月)7頁以下参照


(2)2024年改正による変更点

今回の改正により、プロバイダ責任制限法は、法律の題名が「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」から「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」へと変更され、通称名も「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」となります。
以下では、情プラ法と呼ぶこととします。


情プラ法は、①インターネット上の違法な情報への対策としてプロバイダ等による自主的な対応を促すとともに、②インターネット上での権利侵害情報を発信した者の特定に資する発信者情報(例:氏名・住所・電話番号等)の開示を求めることができる開示請求権及び③これを行使するための裁判手続を定めています。
今回の改正により、これらに加えて、総務大臣が指定する大規模プラットフォーム事業者について、④削除申請への対応の迅速化と⑤運用状況の透明化の具体的措置を求める制度整備がなされました。

2 2024年改正法による影響

今回の改正により設けられた規律は、SNSや匿名掲示板などのサービスを提供しているすべての事業者に及ぶものではなく、そのうち、総務大臣により大規模プラットフォーム事業者として指定された事業者等に及ぶこととなります。
大規模プラットフォーム事業者として指定された場合には、④削除申請への対応の迅速化と⑤運用状況の透明化について、以下の義務を負うこととなります。そのため、事業者側には削除申請に対する対応フローの見直しなどが必要となります。


(1)削除申請への対応の迅速化について

ア 削除申請方法・窓口の公表(22条)*2
削除申請先の窓口の所在がわかりにくいといった課題に対応するために、削除申請の方法及び申請先の窓口を分かりやすく定めて公表することが求められています。


イ 削除申請の受付日時の明示(22条2項3号)
削除申請を受けた場合、受付の通知が申請者に対してなされないと正式に申請が受理されたかどうかが分からないことから、削除申請者に対して受付日時が明らかになるようにすることが求められています。

*2 条文番号は、今回の改正法案における条文番号を採用しています。


ウ 削除申請に対する調査(23条)
削除申請がなされた場合、削除の適否を判断するための調査を遅滞なく行うことが求められています。


エ 削除申請に関するプラットフォーム事業者側の運用体制の整備(24条)
削除申請に対する適切な判断を行うためにも、インターネット上で発生する権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する者の中から侵害情報調査専門員を選任することが求められています。この専門員の数は総務省令で定められた数以上が必要となります。
とくに、インターネット上における不適切な投稿は、海外企業の運営するプラットフォームサービスにおいて問題となることが多いことから。各「プラットフォーム事業者は、自身が提供するサービスの特性を踏まえつつ、我が国の文化・社会的背景に明るい人材を配置すること」が想定されています。


オ 削除申請に対する処理期間の定め及び判断結果等の通知(25条)
削除申請がなされた場合には、原則として、申請を「受けた日から十四日以内の総務省令で定める期間内に」削除を行う/行わないといった判断を行ったうえで、申請者に対して削除を行ったときにはその旨を、削除を行わなかったときにはその旨及びその理由を、通知することが求められています。
このように、原則として、所定の期間内に、プラットフォーム事業者が削除を行う/行わないといった判断を行ったうえで、一定の事項を申請者に通知することが必要となります。


(2)運用状況の透明化について

ア 削除指針について
プラットフォーム事業者は、一般に利用規約やポリシー等の一定の削除指針を制定して削除手続を行っていますが、この削除指針について公表することが求められています。
もっとも、この削除指針についてはどのような内容でもよいというものではなく、情プラ法に定める一定の事項に適合していることが望まれます(26条)。


イ 削除を行った場合における発信者に対する説明(27条)
プラットフォーム事業者が投稿の削除を行う場合には、投稿を削除された発信者に対して、原則として、投稿の削除を行った旨及びその理由等を通知することが求められています。


ウ 運用状況の公表(28条)
プラットフォーム事業者は、削除申請の受付状況等一定の事項について、毎年一回、運用状況の公表を行うことが求められています。


(3)罰則について(35条)

新たに導入された規律については、公法的な側面を有することから、削除指針の公表など一定の事項について総務大臣が報告を求めることができるほか、大規模プラットフォーム事業者が一定の事項に違反していると認めるときには是正措置を勧告し、これに応じないときには命令を行い、さらに、命令に違反したときには罰金等の罰則が設けられています。

3 今回の改正への対応策

(1)今回の規律が及ぶ大規模プラットフォーム事業者であるかの確認

今回の改正により設けられた一定の義務は総務大臣により指定された大規模プラットフォーム事業者に対するものとなります。そのため、まずは自社が大規模プラットフォーム事業者に該当するか否かを確認する必要があります。
大規模プラットフォーム事業者に該当する要件は情プラ法20条に規定されていますが、より詳細な基準は総務省で定めるものとされています。この規定に対応する総務省令が制定されていない現状では、総務省の担当部局に問い合わせを行うことで確認を行うことが考えられます。


(2)大規模プラットフォーム事業者の対応策

大規模プラットフォーム事業者として指定された事業者は、上記2における所定の義務に対応する必要があります。
その概略について、削除申請方法・窓口が分かりやすく公表されているか、削除申請があった場合受付日時が通知されるなどして明示されているか、削除申請について遅滞なく調査を開始しているか、削除申請がなされた場合にその判断を速やかに行うための体制が整えられているか、削除申請に対する判断結果等を申請者通知するフローが手配できているか、削除を行ったときには発信者に対する通知フローが手配できているか、削除指針は十分なものか等、まずは現行の削除フローの見直しをする必要があります。


とくに、削除申請に関する処理期間内の処理が可能であるか、必要な数の侵害情報調査専門員の選任ができているのかなど情プラ法が施行されるまでの期間に行う事項は多いといえます。


さらに、情プラ法施行後の対応とはなりますが、削除申請の受付状況等一定の事項について、毎年一回、運用状況の公表を行うことが求められていることから、こうした統計情報の収集方法についても予め処理方法を決めておく必要があります。
これらの事項は、削除フローの確立や人員の手配等時間がかかるものとなりますので、施行に備えて、今から準備すべき事項となります。


(3)法務が対応時に注意すべき点

大規模プラットフォーム事業者の対応策は以上のとおりですが、情プラ法には総務省令に省令委任されている事項が多々ありますので、総務省令の制定に係る状況を注視しつつ対応整備を行う必要があります。
また、例えば、既に削除指針を制定・公表している事業者もいますが、既存の指針が情プラ法に定める一定の事項に適合しているかどうかについて見直しを行う必要もあります。

4 今後について

今回の改正法の施行時期は、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」(改正法附則第1条)とされているところ、改正法案は5月17日に令和6年法律第25号として公布されています。
そのため、その施行時期に注意しつつ、改正法への対応整備を行う必要があります。
今回の改正により大規模プラットフォーム事業者による運用状況の公表が義務となりました。
この公表結果によっては新たな規律を設ける立法事実となり、立法が行われていく可能性のあるのではないかと考えています。

以上

筆者のご案内
大澤法律事務所_公式サイト
執筆者:大澤法律事務所 弁護士 大澤 一雄様

#プロバイダ責任制限法 #改正


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