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この記事の筆者
松田 康隆
ロジットパートナーズ法律会計事務所 代表
弁護士、公認会計士、税理士
大手監査法人、外資系コンサルファーム、外資系金融機関での豊富な業務経験を経て、2023年にロジットパートナーズ法律会計事務所を設立 法律、会計、税務、ITの専門知識に加え、コンサルファームで培った分析力と課題解決力を活用し、最先端のデジタル技術も駆使したアプローチでクライアントの課題解決に貢献している
近年、AI技術の進化は目覚ましく、ビジネスの現場に大きな影響を与えています。「どの仕事がAIに奪われるか」についての議論が盛んに行われており、会計士もその候補として挙げられることが多い職業の一つと言えるでしょう。オックスフォード大学の研究者であるオズボーン氏が2013年に発表した論文では、会計士が20年以内にコンピュータに置き換えられる可能性を94%と算定しており、業界に衝撃を与えました。
こういった議論の根底には、「AIは定量データの処理や分析において人間を凌駕する能力を持っており、会計士のコアスキルであるデータ処理・突合・分析技術を完全に代替してしまう」という発想があると思われます。機械学習やディープラーニングといった計算アルゴリズムの発達やCPU・GPUの高速化・廉価化により、AIは膨大なデータを短時間で処理することが可能となり、もはや人間である公認会計士の出番はない、というイメージです。しかし、このイメージは実態に即したものなのでしょうか。
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実際には会計士の業務内容は多岐にわたっており、AIによる代替に向いている業務もあれば、そうでない業務もあります。AIによる代替に向いている業務には大きく3つの類型が考えられます。
1つ目は、事前に定義されたルールに基づく定型的な作業であり、仕訳データの集計や突合などがこれにあたります。これらの業務はその性質上、ITシステムによる処理が適していますが、近年の高度なAIの登場以前も会計システムやExcelマクロで対応されていた業務です。
2つ目は、パターン認識に基づく異常検知業務です。膨大なデータから不正会計の端緒を検出する作業は人力では限界がありますが、AIは計算資源さえ確保すれば膨大なデータを即時に集計し、最先端の異常検知アルゴリズムによって誤謬の可能性の高い仕訳や勘定科目を抽出します。虚偽表示の発見という会計監査の目的に最も直接的に関わる施策として、多くの監査ファームが研究を進めている領域です。
3つ目は、データのデジタル化、すなわちデジタル処理できるデータを増やす作業です。画像データのOCR処理や物体検出、音声データの文字起こしなどがこれにあたります。紙の証憑を人力でテキストに起こすのとOCR処理をかけるのでは、処理速度やコストが圧倒的に異なることは容易にイメージできるでしょう。
以上のような業務はAI技術との親和性が高く、今後急速にAIの活用が普及すると考えられます。しかし一方で、AIによる代替が難しい業務も多く存在します。
最も典型的な例は、会計基準や財務諸表に関する判断が求められる業務でしょう。会計基準は明確に言語化された企業会計の基準ですが、あらゆるケースを想定して判断のアルゴリズムが定義されているわけではなく、最終的には制度趣旨や財務諸表の利用者への影響を勘案してその妥当性が判断されるものです。現状の技術では、このようなプロフェッショナルとしての推論を行うレベルのAIは実現されていません。
また、会計監査における指導的機能の発揮の場面を含め、コンサルティングの側面を持つ業務についてもAIによる代替は困難です。個別の情報リサーチや文章ドラフトにAIが活用可能な場面は多くありますが、クライアントの状況やニーズの適切な理解に基づく実効的なコンサルティング機能の発揮をAIに期待するのは、現時点の技術水準では時期尚早です。
筆者は会計士の傍らITコンサルティング業を行っており、ChatGPTやClaudeといった生成AIモデルの新しいバージョンがリリースされる度にコンサルティング業務への活用を模索してきましたが、リサーチやプログラミングの技術向上には驚かされる一方、コンサルティングという観点ではむしろ人間のプロフェッショナルの優秀さを痛感します。
AI技術は確実に発展を続けていますが、それにより会計士が不要になることはありません。むしろ、会計士とAIが協働し補完し合うことで、より高度なサービス提供につなげることができます。AIがデータ処理や分析を効率化する一方で、会計士はその結果をどのように解釈し、実際の経営戦略や財務計画に反映させるかという重要な役割を担うというアプローチです。
例えば、前述したとおり、AI技術の発達に伴い、画像データのOCR処理や音声データの文字起こし処理により人間が利用可能なデータの種類・量は格段に増加しましたが、どのように業務プロセスやITシステムを構築して必要なデータを収集するか、そしてそれをどのように会計監査やコンサルティングに活用するかは、会計士の人間としての創造性やプロフェッショナルとしての資質が問われるところです。AIは膨大なデータからトレンドやパターンを見つけ出すことが得意ですが、そのデータが示す意味を理解し、それをどのようにビジネスの意思決定に結びつけるかは人間の仕事です。
筆者は公認会計士に加え弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士といった士業資格を有し業務を行っていますが、士業業務がAIに駆逐されるといった言説はナンセンスなものに思えます。国家資格の士業が職能団体への強制加入を求められ、継続研修制度や倫理規定、そして懲戒制度による制約を受けながら日々業務を行っていることを考えれば、士業が単に知識量やパターン認識の精度・速度によって付加価値を提供している職業ではないことは明らかです。
これからはAIが会計士の仕事を奪う時代ではなく、AIを活用できない会計士が淘汰される時代になると考えられます。それでは、どのような会計士がAI時代においても生き残り、高い付加価値を発揮できるのでしょうか。
まずはテクノロジーに対する理解と適応力が必要です。AIやデータ分析ツールを効果的に利用し、それらを業務に組み込むスキルは、今後の会計士にとって必須の能力となります。
一方で、もともと会計士の得意分野でもありますが、客観的・批判的な判断能力も重要です。AIは過去のパターンを学習してアウトプットするアルゴリズムに過ぎず、その精度は決して完璧ではありません。2023年に、米国の弁護士が裁判においてChatGPTで生成した実際には存在しない判例を引用してしまった事件が話題になりましたが、会計士にとっても他人事ではないでしょう。AIによる分析結果や生成物を鵜呑みにするのではなく、それらの情報を精査し、最終的には自らの頭で考えて適切な判断を下す能力が求められます。
ここではより具体的に、AI時代に会計士が持つべきスキルとその獲得方法を検討します。
まず、AIスキルの前提として、データやデータベースの取扱いに習熟することが重要と考えています。筆者の場合、IPAのデータベーススペシャリストや統計検定1級などのデータ関連資格を取得しています。ビッグデータがどのように構築されているか、複数のデータベースはどのように関連付けられているか、データをどのように統計処理すればその特徴を短時間で理解できるかなど、データに関する知見を高めることは、定量分析の専門家たる会計士にとって必須のスキルといえるでしょう。
そのうえで、AIに関する最新の動向や技術についても理解しておく必要があります。JDLA(日本ディープラーニング協会)G検定・E資格などの資格試験やUdemyなどのMOOCといったツールを活用すれば、最先端のAI技術の概要と限界を効率的に学習することができます。また、実際にツールを触ってAIの達成水準を確かめ、自身の業務に活用できるかを積極的に検討するべきです。もちろん、理念と宣伝だけが先行して実務では使い物にならないレベルのAIサービスも多数存在しますが、「当たり」を見つけた際の業務へのインパクトは絶大です。
最後に、AI時代を前提としたコミュニケーションスキルも重要です。会計士もクライアントもAIを活用する時代においては、AIが出力する情報をクライアントに分かりやすく伝えるとともに、その精度、限界、リスクについて自らの言葉で説明し、クライアントをサポートする姿勢と能力が、会計士の付加価値を高めるでしょう。
AIと会計士の専門知識が融合することで、新たなビジネスチャンスが生まれます。筆者は会計士だけでなくITコンサルタント、AIエンジニア、弁護士など様々な業種を経験してきましたが、定量データに対する批判的検討能力という点では会計士は抜きん出た力を有していると確信しています。ビッグデータに対してまずAIが網羅的・帰納的な分析を実施し、その結果を会計士が取捨選択し、シャープな結果のみをクライアントにわかりやすく提供するといったアプローチは極めて有効と考えられます。
その点でAIと会計士の技術は補完性が高いと考えられます。そして、足元ではほぼ全ての企業がAIのビジネス活用を模索している最中にあり、様々な業務へのAI活用支援や開発支援、AIガバナンス構築といったサービスへのニーズは極めて強い状況です。うまくかみ合えば、会計士系のコンサルの付加価値が劇的に向上する可能性があります。
AIの進化に伴い、会計士の役割も大きく変化していくことが予想されます。しかし、AIがすべての業務を取って代わるわけではなく、むしろAIとの協働により、会計士はより高度で戦略的な役割を果たすことが求められるでしょう。AIに奪われる業務と奪われない業務をしっかりと見極め、必要なスキルを身につけることで、会計士としての付加価値を高めていくことが期待されます。
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執筆者:ロジットパートナーズ法律会計事務所 代表 松田 康隆様
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