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日本では、さまざまな事情で働けなくなった労働者を支えるために、雇用保険制度が整備されています。雇用保険は法律で加入が義務づけられており、対象はあくまでも労働者です。では、役員や取締役の立場にある場合は加入できないのでしょうか。
今回の記事では雇用保険の概要と、加入可能な条件を中心に解説します。
雇用保険制度は、以下の4つの事業から構成されています。
・失業等給付(求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付)
・育児休業給付
・求職者支援事業
・二事業(雇用安定事業、能力開発事業)
雇用保険で労働者に直接関わるのは、失業等給付と育児休業給付でしょう。これらは働けない労働者の生活支援が目的です。一方で、労働者の雇用が困難な企業に対して、雇用保険事業から助成金や給付金が支給されることもあります。
雇用保険への加入は、一人以上の労働者を雇用しているすべての事業者に義務づけられています。労働者は就業形態を問わず、原則として全員が加入しなければなりません。保険料は雇用主と労働者が折半で負担します。
代表的な求職者給付の場合、基本手当は在職時給与の45~80%で、年齢や賃金日額によって給付率が変わります。給付期間は被保険期間によって異なり、90日から最長で330日(障害者等は360日)に決められています。
雇用保険は労働者の支援制度であるため、法人の代表と取締役や個人事業主は加入できません。ほかにも以下に該当する場合は、雇用保険の適用除外となり加入が認められません。
・1週間の所定労働時間が20時間未満
・雇用期間が31日未満
・日雇い労働者
・法人の代表者、取締役、個人事業主の同居親族
・官公庁に雇用されている方の一部
・学生(夜間学校などは除く)
雇用保険の対象が労働者であることから、原則として法人の代表者と取締役や個人事業主は加入できませんが、例外的に「使用人兼務役員」として認められれば、雇用保険に加入できる可能性があります。この場合の条件になるのが、その職務上の労働者性です。
たとえば、ある役員が使用人兼務役員に認められるには、労働者と同等の条件で働きながら、同時に役員としての職務を兼任している必要があります。この条件に法的な規定はありませんが、報酬に関しては従業員として支払われる給与が、役員報酬を上回っている必要があります。
さらに従業員と同様の就業規則に従って、就労時間や勤務状況が管理されているなど、役員よりも従業員の立場で就業していると見なされる場合のみ、使用人兼務役員の規定で雇用保険に加入できます。
ただし代表役員や監査役は、使用人兼務役員として認められません。
使用人兼務役員の雇用保険加入手続きは、ハローワークに申請して承認審査が進められます。申請に必要な書類は「兼務役員雇用実態証明書」のほか、出勤簿、賃金台帳、労働者名簿など、該当する役員の労働者性を証明できる資料です。
それ以外にも定款や登記簿謄本、役員就任時の総会議事録などの提出が求められ、状況によっては決算書や総勘定元帳などが必要になる場合もあります。こうした書類をもとにハローワークが妥当性を判断し、承認されれば雇用保険が適用されます。雇用保険料は給与部分のみを基準に算出されます。
使用人兼務役員としても雇用保険に加入できない役員は、社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)だけが対象になります。その職務上、休職するような状況になっても、労働者と同様の生活支援は受けられないのです。
社会保険・労働保険管理サービスについては以下のサイトをご覧ください。
社会保険・労働保険管理のサービス一覧
雇用保険のサポートを受けられない役員は、公的な小規模企業共済制度の利用や、保険会社が提供する経営者向け保険などで万一の場合に備えられます。民間の保険では、経営者の退職金対策や事業保障対策、事業承継対策などの積立保険を提供しています。
これらの保険では、経営者または役員が働けなくなった場合の生活費、会社を継続するための資金、事業承継に必要になる資金などを準備することが可能です。雇用保険に頼れない役員は、リスクに備えて自衛する必要があるのです。
雇用保険も社会保険制度を支える重要な仕組みですが、残念なことに経営者や役員は、一部の例外を除いて加入できません。特例として加入が認められるのは、労働者としての役割が大きいとみなされる使用人兼務役員の場合です。
該当する可能性がある場合には、手続きの詳細なども含めて、管轄のハローワークに相談することをおすすめします。
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