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▼この記事を書いた人
寺山 晋太郎
社会保険労務士
社会保険労務士法人 宮嶋社会保険労務士事務所
福島県出身。一橋大学社会学部卒業。大手鉄道会社にて現業や本社勤務など様々な業務を経験。2014年第一子誕生を機に育休を取得。その後現職に転じ、働きながら社労士資格を取得。社労士業の傍ら、3児の父親としても奮闘中。
まずは「休日」という概念をはっきりさせておきましょう。法令上明確に定義されているわけではないのですが、一般的には「労働契約上あらかじめ労働義務がないとされている日」のことを指します。
この休日の日数については、労基法第35条1項で「少なくとも1週間に1回」与えなければならない、とされておりますので、毎週必ず1回は休日があることになります。この労基法上必ず与えなければならないとされている休日のことを「法定休日」と呼びます。
ただ「週休二日制」という言葉があるように、休日が毎週2日あることも珍しくありません。この場合、法定休日ではない方の休日は「会社が任意に与えている」ものとなり、「法定外休日」もしくは「所定休日」などと呼称します。
労基法上は週1回で良いのに、なぜわざわざ週2回の休日を与える必要があるのかという点については、週の法定労働時間が40時間とされていることに関係します(労基法第32条1項)。つまり、所定労働時間が1日8時間であれば、5日間で週40時間となってしまうためそれ以上労働することができず、残り2日間は休日にしなければ法令違反となってしまうからです。
そのため、例えば月曜~金曜まで1日7時間労働なのであれば、土曜日に5時間働いてもらい、休日は日曜日のみにするという運用も法令上問題ありません。
「法定休日」と「法定外休日」を峻別する意味は、給与計算時の割増率に関係します。というのも、法定休日に労働させた場合は3割5分以上の割増率で計算しなければならないからです。これが法定外休日での労働であれば2割5分以上の割増率で良いので、法定休日の方が、割増率が高いことになります。
休日に労働してもらった場合、代わりに別の日を休日とするという取扱いは特段珍しいものではないかと思いますし、その名称も会社によって「振替休日」「代休」など様々かと存じます。しかしながら、労基法の解釈において「代休」と「休日の振替」は明確に区別されており、どちらに該当するかは企業内での名称ではなく、実態としてどのような運用がなされているのかで判断されます。
また、どちらに該当するかによって給与計算方法にも違いが生じるため、両者の違いをしっかりと把握しておくことが重要になります。
まず「休日の振替」ですが、これは就業規則等の根拠に基づいて「あらかじめ」振り替える日を特定して休日を他の労働日と入れ替えることです。これがなされると、従来の休日が労働日に、振り替えられた労働日が休日となりますので、特定の条件(5で詳述します)を満たす限り、割増賃金は発生しません。
これに対し「代休」は、まず休日に労働させたという事実が先にあって、事後に代わりの休日を与えることです。この場合、休日に労働させたという事実を動かすことはできなくなり、結果として割増賃金の支払が必要となります。
「休日の振替」については、労働者との労働契約で定めた休日を他の日に変更することになるため、就業規則や労働協約などにその根拠を定めていることが必要になります。
具体的には
・就業規則等に、休日を振替えることができる旨の記載があること
・振替にあたっては、あらかじめ事前に、振替の対象となる休日と振替によって新たに休みになる日(振替休日)を指定すること
以上2点が必要となります。
2の「「代休」と「休日の振替」の違いとは」の部分でも少し述べましたが、この「休日の振替」が適切になされれば、もともと休日であった日に労働させても休日労働にはなりません。すなわち、割増賃金の支払は原則として不要となります。また、労基法により休日労働を禁止されている者(18歳未満の年少者、請求のあった妊産婦など)についても、「休日の振替」をすれば、休日(であった日)に労働してもらうことができます。
これに対し、事前に振替という手続きをせずに、休日労働を行わせた後にその代償として休日を与えたとしても、すでに休日労働を行ったという事実は消えませんので、その場合には休日労働分の割増賃金の支払が必要になります。なお休日労働が禁止されている者に対し代休を与えるというのは、そもそも休日労働できないわけですから法律上不可能となります。
他の注意点としては、「休日の振替」は労基法35条の範囲内で行う必要があります。1でも少し触れましたが、同条では休日を「週1日または4週につき4日」与えるように定められておりますので、例えば振替を行った結果、4週中に3日間しか休日がなくなってしまうと労基法違反となります。
これまでご説明してきたように「代休」と「休日の振替」は法令上まったく異なるものであり、その取扱いは明確に区別する必要があります。どちらに該当するのかという区別も、企業内での名称ではなく、あくまで実態としての運用によって判断されますので、例えば企業内で「振替休日」として運用していたものが、実は法令上の「代休」であった、ということが起こる可能性は十分に考えられます。
こうなった際に一番の問題となるのが「残業代の未払い」です。企業側が、本来は「代休」であるものを「休日の振替」であると認識しているのですから、当然ながら残業代は支払われていないでしょう。こうなると本来支払われるべき賃金額(残業代含む)が一部支払われていないということになりますので、労基法24条において定められている「賃金全額払いの原則」に違反してしまいます。未払い賃金の請求権については2020年労基法改正により消滅時効が3年となっており、仮にこのような運用が過去にわたってなされていた場合、最大3年間の未払い残業代を請求されてしまう可能性があります。
このような事態を避けるためにも、まずは自社において運用されている「労働日と休日の入れ替え」が、「代休」と「休日の振替」のどちらに該当するのかを確認しましょう。繰り返しとなりますが、どちらに該当するのかは実態によって判断されますから、たとえ「振替休日」のような名称でも、実態は事前に振り替えられることなく事後的に代わりの休日を付与していたに過ぎなかったなどの場合は要注意です。その上で、もしも運用と実態に齟齬があった場合は、早急に修正することが重要です。
具体的なケースを想定してご説明します。前提として、1日の所定労働時間は8時間、1週間の開始は日曜日からで、土曜日が法定外休日、日曜が法定休日であるとします。また、割増率も法定通り(時間外労働に対しては25%、法定休日労働に対しては35%)とします。「代休」や「休日の振替」の割増賃金の計算は、いくつかのパターンに分けて考える必要があります。
まず、2週目の日曜日に出勤し、同じ週の水曜日を予め振替休日とした場合(図1)を考えます。この場合は予め休日を振替えており、また2週目の総労働時間も40時間以内に収まっているため、割増賃金は発生しません。このように「休日の振替」は、振替休日が休日出勤した日と同一週内に取得されていれば、割増賃金の支払は不要となります。
図 1
では図2の場合はどうでしょうか。同じく振替休日としていますが、1週目土曜日(法定外休日)の振替休日が2週目の水曜日となっており、属する週が異なっています。この場合、土曜日は法定外休日であり、1週目の週労働時間の合計が48時間となっているため、1週目終了時点では土曜日の出勤に対して125%の割増賃金が必要となります。しかしながら2週目水曜日に振替休日を取得しており、労働日数がマイナス1日となるので、この分が相殺される結果、1週目土曜日分の割増賃金は125%-100%=25%の支払いで良いことになります。このように「休日の振替」を行った場合であっても、同一週内の振替としなければ割増賃金の支払が発生してしまいますので、注意しましょう。
図 2
次に代休の場合です。図3では2週目の日曜日(法定休日)に出勤し、同じ週の水曜日を代休としています。このケースでは、2週目日曜日の出勤に対しては法定休日労働となりますので、この時点では135%の割増賃金の支払が必要です。ただし、同一週の水曜日に代休を取っているので、労働日がマイナス1となり、結果として135%-100%=35%の割増賃金を支払えば良いことになります。このように代休では、たとえ同一週内に代休を取得した場合であっても、割増賃金の支払は発生してしまうということに注意しましょう。
図 3
注意点をまとめますと、以下の通りとなります。
・「休日の振替」の場合、同一週内に振り替えれば割増賃金の支払は発生しないが、週をまたいだ場合は割増賃金の支払が必要となる
・「代休」の場合は、たとえ週をまたいでいなくとも、割増賃金の支払は必要
なお、代休を取得した場合にその日分(100%分)が相殺される運用については、その旨をあらかじめ就業規則等に明確に記載し、周知を図っておく必要があります。この点を鑑みると、「休日の振替」については就業規則の定めが必要なことは前述したとおりですが、結局のところ代休についても就業規則等に明確に記載しておくべき、ということになるでしょう。
勤怠管理において混乱を招きやすい「代休」と「休日の振替」についてご説明いたしました。普段の運用場面ではあまり気にされるものではないかもしれませんが、本項でご説明した通り、両者の定義や給与計算における処理には明確な違いがあり、誤った取り扱いをしてしまうと、残業代の未払いといったトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。
ご自身の会社で運用されているものについて不明確な点がある場合には、一度しっかりと自社規定等をご確認されることをお勧めいたします。その上で、例えば「休日の振替」にあたる場合には同一週内に振り替えてもらうことを原則とするなど、管理上なるべく手間とならない方法も併せて検討することができれば、より合理的な労務管理が実現できるかと存じます。
本記事が、日々の勤怠管理を行っていくうえで何らかのご参考になれば幸いです。
監修元
社会保険労務士法人 宮嶋社会保険労務士事務所_公式サイト
執筆者:寺山 晋太郎様
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