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自身や従業員の睡眠管理は生産性向上に直結する

公開日2025/01/22 更新日2025/01/21 ブックマーク数
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自身や従業員の睡眠管理は生産性向上に直結する

▼この記事を書いた人

田中孝之
SBメディアホールディングス株式会社 管理部

プロフィール:
営業から管理部門へ異動し約18年、社内の衛生管理者を務める。ここ数年はITによる健康管理などに注視し、様々なアプリを試している。

国内の睡眠事情

<日本国内の労働者の睡眠時間について。国交省、厚労省の睡眠への注目度が上がっている>

日本は、1970年代の高度成長期から2000年頃まで、海外から「働きすぎ」と見られる一方で、多くの日本人は「海外の人々は休暇が多くて羨ましい」と感じていたように思います。観光で海外を訪れると、休日に閉店しているお店や、シエスタで一時的に営業を休止する文化がある国も見受けられました。

しかし近年では、コンプライアンスの強化や人口減少による労働力不足、そして業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化などの影響で、日本の労働環境は劇的に変化し、労働時間、特に残業時間が大幅に削減されています。企業間での差は存在するものの、DX化の推進が進んだ結果、労働時間の削減により、家族と過ごす時間が増えたという内閣府の報告もあります。

一方で、睡眠時間に関しては依然として課題があります。厚生労働省の資料によれば、労働時間が減少したにもかかわらず、日本人の平均睡眠時間は世界で最も短い水準にとどまっています。(※1)

世界の平均睡眠時間

グラフ:厚生労働省HP 令和6年度版厚生労働白書から「睡眠時間の国際比較」

筑波大学の武田教授は、睡眠不足が労働パフォーマンスの低下を招くことについて研究を発表しています。(※2)また国土交通省は、2018年に法令等を改正し、運輸・旅客運送分野のうちバス・タクシー・トラック事業について、睡眠不足の乗務員を乗務させてはならないことを明確化し、点呼簿の記録事項として睡眠不足の状況を追加するほか、運転者に対する指導監督内容に睡眠不足が交通事故の原因となることを理解させること等を追加するなど、睡眠不足に起因する事故の防止対策を強化しています。(※3)

睡眠時間は健康と生産性に密接に関連する重要な要素であることを、国や研究機関も示しています。そのため、運輸・旅客運送業界では、事故を未然に防ぐため、運転者である従業員の睡眠時間に注意を払い、どのように管理していくかという課題に取り組んでいます。

睡眠とストレスの労働への影響

<短時間の睡眠は、労働の非効率と労働者のストレスの要因となっており、精神的な影響も大きい>

睡眠と従業員の健康について、長年ソフトバンクをはじめグループ各社の産業医を務め、日頃から現場で従業員と接する機会の多い宮崎医師は次のように話しています。

「睡眠はストレスや緊張により妨げられることがあります。その結果、日中の眠気や倦怠感、意欲や集中力の低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振といった症状が現れ、労働の生産性を損なう原因となります。

さらに、質の悪い睡眠は生活習慣病の罹患リスクを高めるだけでなく、これらの症状を悪化させることも分かっています。そのため、良質な睡眠を確保することは、従業員個人にとっても、会社にとっても極めて重要であると言えます。

良質な睡眠を得るためには、①起床後日光を浴び体内時計を整える②規則正しい生活リズムを心掛ける③適度な運動により肉体的疲労を得る④就寝2~3時間前の入浴⑤可能な範囲で寝具や照明、室温など快適な寝室環境作り等が必要です。」

(SBアットワーク株式会社 ソフトバンク グループ産業医 宮崎寛)

在宅勤務では、ON/OFFの切り替えがうまくできないことや、コロナ禍によるコミュニケーション不足、自宅で一人籠って業務を行う状況が、結果的にストレスを増大させ、睡眠時間を削る原因になっている可能性があります。

短時間の睡眠は生産性の低下だけでなく、うつ病と有意な関連を示すことも調査で明らかになっています。(※4)メディアでも、過剰な労働時間が原因で精神疾患を発症し、休職や離職を余儀なくされた方々の報道が頻繁に取り上げられています。

「働き方改革」が進んでいるとされる一方で、実際の労働環境は、メディアが報じるほど改善されていないのが現状です。支払われる賃金と生活費の経済バランスや深刻な人手不足の影響もあり、多くの日本人が依然として睡眠時間を削って働かなければならない状況に置かれています。この現状は、国内経済の状況からも容易に実感できると言えるでしょう。

従業員の健康状態の把握と指導

<睡眠状況の把握は業務効率と生産性の向上に寄与できる>

労働安全衛生法では、常時雇用している従業員に対して健康診断を受診させる義務が定められています。また、検査項目が充実した人間ドックもあり、これらは主に身体の健康維持や病気の早期発見を目的としています。しかし、睡眠に関しては、医師による問診が行われる場合があるものの、具体的な検査や評価はほとんど行われていないのが現状です。

健康診断や人間ドックが身体の健康を重視している一方で、心のケアや睡眠の重要性は十分に考慮されていません。特に運輸業や製造業の現場では、生産性の低下だけでなく、事故に繋がる危険性も潜んでおり、従業員の心身を守るためには、日常的な睡眠時間の確保が非常に重要です。

しかし、多くの人が睡眠を疎かにしてしまう背景には、「1日24時間の中で最もコントロールしやすい時間が睡眠である」という意識があるのではないでしょうか。必要とされる睡眠時間には個人差がありますが、何かを犠牲にするとしたら、最も手軽に削れるのが睡眠時間と考えられがちです。仕事の期限に追われている時や趣味に没頭している時、多くの人がまず削るのは睡眠時間でしょう。しかし、それが心身を蝕む要因であることは間違いありません。

一方で、効率よく物事を進めるためには、十分な睡眠が不可欠です。では、皆さんはご自分の睡眠状態をしっかり把握していますか?

睡眠を計測できるアプリの登場

<自身や従業員の睡眠状態を把握することが改善への第1歩>

「自分の睡眠状態を知っていますか?」と問われたら、多くの人が「わからない」と答えるでしょう。睡眠中は意識がないため、自分自身がどのような状態であるかを知ることはできません。例えば、いびきをかいていた、寝返りが多かったなど、自分以外の人から指摘を受けることで初めて気づく程度です。

睡眠状態が極端に悪い場合は医師に相談したり受診したりすることも考えられますが、多くの場合、自分の睡眠がどのような状態であるかを知る術はなく、問題があるかどうかに気づかないまま過ごしている人も少なくありません。睡眠時の状況は、近親者や周囲からの指摘がなければ把握することが難しく、その結果、睡眠の質や状態をまったく理解できていないのが現状です。

運輸・旅客運送や製造業の一部の企業では、血圧計やパルスオキシメーターを用いた測定、就業前のセルフチェックなど、従業員の健康を確認する取り組みを行っています。しかし、社内でできることには限界があり、特に睡眠に関する詳細な状態までは把握しきれません。

ですが、最近では病院での受診や検査を正式に受ける前に、自身や従業員の睡眠状態を簡単に把握できる便利なスマートフォンアプリが登場しています。これらは医療機器ではないため診断目的には使用できませんが、身体に何かを装着したり、高額な費用をかけたりする必要がなく、スマートフォン1台で睡眠状態を数値で確認することが可能です。この手軽さは、自身の睡眠改善への意識を高めたり、医師への相談や受診を検討する第一歩となり得ます。

さらに、企業側もこれらのアプリを活用することで、従業員にストレスを与えることなく、同意のもとで睡眠状態を把握し、必要に応じて改善を促すことが可能です。これにより、従業員が安心して業務を遂行できる環境づくりに寄与することが期待されています。

睡眠状態を簡単に把握できる便利なスマートフォンアプリイメージ

偉業を成し遂げた大リーガー・大谷翔平選手は、メディアのインタビューで「できるだけ十分な睡眠時間を確保することでパフォーマンスを向上させている」と語っています。さらに、国内の睡眠に関連する商品の市場も年々拡大しており(※5)、睡眠への意識が少しずつ高まっていることがうかがえます。

十分な睡眠を確保し、脳を休ませてリセットすることは、心身の調子を整えるうえで非常に重要です。睡眠の質を改善する取り組みが、個人や企業の健康維持とパフォーマンス向上に繋がることを期待したいものです。

出典・参考資料
※1 厚生労働省|「睡眠時間の国際比較」令和6年版厚生労働白書
※2 国立大学法人筑波大学|企業従業員の労働パフォーマンス低下には睡眠による休息の不足が強く関係する
※3 国土交通省|睡眠不足に起因する事故の防止対策を強化します!!
国土交通省|バス、タクシー、トラック運転者教育を充実
※4 厚生労働省|「一般成人における睡眠時間の不足とうつ病の関連について」厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)分担研究報告書
※5 株式会社矢野経済研究所|スリープテック市場に関する調査を実施(2023年)

記事提供元
リアライズ・イノベーションズ株式会社(https://realize-innovations.jp/
xR/モビリティ/センシング/ヘルスケア等に関する各種システムおよびソリューションの企画、設計、開発、運用先端技術を活用した事業開発に関するコンサルティング、ビジネスに関する各種アウトソーシングを事業としています。


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