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組織サーベイが機能しない本当の理由とは?成功のカギは人事担当者の「問いを立てる力」

公開日2025/02/28 更新日2025/02/28 ブックマーク数
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組織サーベイが機能しない本当の理由とは?

次世代リーダー育成をコーチングで支援する、35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)CEOの桜庭です。

企業の成長を阻む要因の一つに、「組織の課題が見えないこと」があります。組織サーベイは、その課題を可視化する組織の健康診断のようなものですが、適切な問診や結果の解析ができなければ、真の課題を見つけることはできません。

本記事では、組織の健康を見極める専門家としての長年の経験から、サーベイ結果を無駄にしないために、人事担当者が注意すべき落とし穴と持つべき視点について解説します。

桜庭 理奈様

▼この記事を書いた人

桜庭 理奈

35 CoCreation合同会社
代表
一般社団法人日本オントロジカル・コーチング協会 代表理事
株式会社メドレー 社外取締役

外資系金融企業での営業・企画推進を経て、人事へキャリアチェンジ。複数の外資系企業において、多国籍な職場環境で戦略的な人事を担当。
2017 年より外資系医療機器メーカーであるGEヘルスケア・ジャパン株式会社の人事本部長、2019年から同社執行役員を務め、JALをはじめ、さまざまな企業と合同で人材フレームワーク創出のパイオニアとして活躍。2020年に35 CoCreation合同会社を創業し、オランダやフランスなどの国際色なコーチ陣と共に、10名規模〜数万人規模の企業まで、経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。2023年米国の人気書籍「あなたが知らない言葉のチカラ 望む人生の手に入れ方」の日本語訳・監修を勤める。国際コーチング連盟認定PCC 認定コーチなど複数資格を所持。

「直訳」が招く組織サーベイの落とし穴

組織サーベイの回答は、回答者の解釈に大きく左右されます。特に、言葉の解釈による誤解はよく起こる問題です。
なかでも、海外のサーベイを日本語に直訳した場合、本来の意図と異なる意味で回答者が受け取ってしまうことが少なくありません。

近年、国内にもHRテック企業が増え、日本向けのサービスも充実してきましたが、グローバルスタンダードを重視する企業では、依然として海外製のサーベイが利用されています。こうした海外製のサーベイを利用する際には、文化的な背景や解釈の違いからくる問題に、特に注意を払う必要があります。

例えば、よく目にするサーベイの質問に「Above and Beyond」という項目があります。「Above and Beyond」は本来、自分の役割を超えて積極的に行動しようとする気持ちを表します。しかし、この言葉を直訳すると「職務権限を超えて、より大きなことに挑戦すること」と訳されることがあります。このような解釈のずれが生じると、実際には「Above and Beyond」の気持ちを持っていたとしても、実際の行動や結果を求められているように感じて、本来の質問の意図とは異なるプレッシャーを感じてしまうことがあります。特に、日本人の場合は謙虚な姿勢が裏目に出て、スコアを低くつける傾向があるのです。

こうした場合に、サーベイ結果の表面的な解釈だけが先行してしまうと、「日本人は挑戦意欲が低い」という誤った結論が導き出され、グローバル本社から的外れな改善指示が飛んでくるという事態に繋がることがあります。

実際、そのような状況に困った企業から、「この項目を改善するには一体どうすればよいのか?」という相談が私の元に寄せられることがよくあります。そこで、社員の方々と丁寧に個別対話をしていくと、多くの場合、質問の意図そのものを大きく誤解していることが分かります。「課長なのに部長の仕事までやるということですよね?」といった的外れな解釈をしているケースがよくあるのです。

そのような誤解に対して、「例えば、隣の席の同僚が困っていたら声をかけるといった、日常的なちょっとした行動のことですよ」と具体的な例を挙げて質問の意図を丁寧に説明すると、「それなら日常的にやっています」という答えが返ってくることがほとんどです。

設問のウラにある文化的背景のギャップにご注意

このように、海外で開発されたサーベイをそのまま日本に導入して使用する場合、言葉のニュアンスの違いから、日本人が質問の意図を正しく理解できず、結果として適切な回答が得られないケースが多々あります。

同様に、設問の背後にある文化的な背景の違いから、回答に困ってしまうというケースも少なくありません。特に、職場における人間関係や幸福感に関する質問は、文化圏によって解釈や価値観が大きく異なるため、回答が大きく分かれる傾向があります。

例えば、「職場に友人がいるか」という質問は、多くの日本人を戸惑わせる可能性があります。なぜなら、職場における友人関係の定義は曖昧であり、そもそも職場に友人を作るべきなのかという価値観も人によって大きく異なるからです。

上司との距離感については、国や文化によって適切とされている距離感は異なります。例えば、タイには、上司への敬意を示すために一定の距離を置く文化があります。日本においては、プライベートでも親しく付き合うような関係を職場の上司と築くべきかどうか、意見が分かれるところでしょう。

本来、この質問は、職場での心理的安全性や人間関係の質を測るために設定されているものです。しかし、「友人」という言葉の解釈が人によって異なるため、設問側が意図した回答結果が得られないことが少なくありません。

同様に、「働きがい」や「働きやすさ」といった概念も、文化によって捉え方が異なります。日本の社会では、自己犠牲を美徳とする国民性があり、職場で幸福感を追求することに抵抗感を覚える人も一定数存在します。

サーベイの結果は、一般的に数値が高い方が良いとされています。しかし、文化的な背景や置かれている状況によって、質問項目の優先順位は大きく異なります。したがって、数値を解釈する際は、文化的背景を考慮した慎重な分析が不可欠です。

真意を見抜く「問いを立てる力」の重要性

組織サーベイを実施する際、結果を最大限に活かすためには、回答の表面的な意味だけでなく、文化的な背景やニュアンスを理解することが重要です。よくある落とし穴は、まさにこの点にあります。質問の意図と回答者の解釈にズレが生じ、正確な実態を把握できないケースは少なくありません。
これを避けるためには、サーベイ実施前から「先回り」して対策を講じることが有効です。

例えば、質問項目に具体的な事例や文化に合わせた例を添えることで、回答者は質問の意図を理解しやすくなります。「職場に友人がいるか」という質問であれば、「仕事で困った時に相談できる人はいますか?」のように言い換えることで、より具体的なイメージを共有できるわけです。また、社員向けにサーベイの意味や解釈について周知することも大切です。サーベイの目的や各質問項目の意図を事前に理解してもらうことで、より正確な回答が期待できます。

このように、サーベイを成功させるためには、設問の本質的な意味を理解して、相手に適切に伝えることが必要ですが、そのために大切なのが「問いを立てる力」です。「この質問の意図は何か」「回答者はどのように解釈するだろうか」「文化的な背景はどのように影響するだろうか」といった問いを立てながら深く考えることで、複雑な問題の本質を見抜くことができます。

ただ一方で、問いを立て、頭の中で考えているだけでは、現場の課題は解決しないでしょう。次回の記事では、サーベイ結果から課題にアプローチするために必要なポイントを解説します。


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